恋蕾

Nmai(エヌマイ)

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向日葵の花束

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終鈴が鳴り、教室内が賑やかになる。
これから部活がある生徒もいれば、帰宅する生徒もいる。
咲人は、丁寧に黒板を消している日直の女子生徒を何となく見ながら、鞄に教科書を詰めていた。
スマートフォンのバイブがスラックスのポケットの中で鳴り、手に取る。

『今日は早めに仕事が終わりました。今から帰るけど、夕飯どうする?』

彩花からのメールだ。
その内容に手慣れた手付きで返信すると、鞄のジッパーを閉めてから左肩に掛け、「また来週ね」と言いながら、教室を後にした。
廊下を抜け、階段を降り、下駄箱で靴を履き替えていると、再びバイブが鳴った。
靴を履き、爪先を軽く地面に叩きながら確認すると、思わず口角が上がる。
涼眞からだ。

『18時頃に家に着くから、先に家入って待ってて』

咲人は、涼眞の部屋の合鍵を持っている為、入ろうと思えばいつでも入れる。しかし、例外を除いては入らない約束をしている。
現在時刻は16時過ぎ。18時までまだ時間はあるが、高鳴る胸を抱きながら、涼眞の住むアパートへ向かう事にした。
此処からアパートまでは、自転車で10分前後で着く。彼の勤務先の高校までも、方向は反対側だが、同じくらいの距離である。
学校前は駅が近い事もあり、人通りが多い。咲人は、涼眞の部屋へ行く前に、駅構内で手土産を買って行く事にした。

自転車を転がしながら、駅前の駐輪場に停めると、何を買おうか考えながら構内をゆっくり歩く。
そこまで大きな駅ではない為、喫茶や飲食、ファッション雑貨店などが数軒並んでいるくらいだが、少し買い物をするくらいには丁度良い。駐輪場の傍には、スーパーもあるが、涼眞の部屋へ泊まる際には、夕飯の材料を買う事も兼ねて、大概一緒に行っている。

咲人は、とある花屋の前で歩みを止めた。向日葵ひまわりの束が、視界に入る。

「向日葵、綺麗ですよね」

店員の若い女性が、笑顔で咲人に話し掛けてきた。

「この時期、一番人気の花なんです。太陽の花、とも言われてるんですよ」
「太陽の、花・・・。確かに、見た目通りかも」

女性店員は、ふふっと小さく笑うと、実際に向日葵の束を咲人に手渡した。

「向日葵の花にも花言葉があって、その本数によっても意味が違うんです。例えば、好きな人にプレゼントするなら、今お兄さんが持ってる本数が、手頃で良いと思いますよ」

咲人は、その花言葉を聞くと、まじまじと手渡された向日葵を見つめる。涼眞にプレゼントしたら、喜んでくれるだろうか。
色々と考えが浮かんだが、そのまま買う事にした。
会計が済むと、おまけに向日葵の種を貰った。

駅を出ると、もう17時近いにも関わらず、相も変わらず蝉が鳴いている。
綺麗にラッピングされた、紙袋に入った向日葵の花束を自転車の籠に入れると、アパートへ走り出した。
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