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花言葉
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アパートに着くと、鞄の中に閉まってある合鍵を出し、鍵を開けた。
重い鉄製のドアを開けると、靴を脱ぎ、玄関に揃えてあったスリッパに足を潜らせた。
洗面所で手洗いうがいを済ませた後、リビングへと向かう。
テレビボードに立てられた、40インチの黒い液晶テレビが目立つ。テレビの前にはローテーブルが置かれ、その傍に二人掛けのソファが配置されている。
部屋のもう半分は、カウンターのある、綺麗に手入れされたキッチンがあった。
物があまりない所為もあり、モデルハウスの様な、あまり生活感のない部屋だ。
咲人はテーブルの上に買ってきた向日葵の花束を紙袋ごと置くと、鞄を隣に下ろしながら、ソファに腰掛けた。
スマートフォンをポケットから取り出すと、一件のメールが届いていた。涼眞ではなく、彩花からだった。返信すると長くなりそうであり、涼眞が帰宅するまで暇を持て余している事もあって、電話をする事にした。
数回呼出音が鳴ると、ハスキーな女性の声が「もしもし」と、電話に出た。
「母さん?メールにも書いたけど、今日は先生ん家に泊まるから夕飯いらないよ」
「蓮田先生、まだ帰ってないの?先生も疲れてるだろうから、ゆっくりさせてあげなさいね」
「うん、分かってる」
電話中、彩花は今日あった出来事や、仕事の愚痴を零し、咲人はひたすら相槌を打っていた。
彩花は普段から話す方だが、仕事が終わったら必ずビールか焼酎を飲む。その所為か、電話越しの彼女はいつも以上に饒舌になっていた。
彩花の話に付き合っていると、玄関のドアが開く音がした。
涼眞が帰宅した様だ。気付けば、時刻は18時を過ぎていた。
「母さん、先生帰ってきたから電話切るよ?」
「えー、折角だし、ちょっと蓮田先生に変わってよ」
「先生は疲れてるから、また今度ね」
文句を言う彩花をあしらいながら、半ば強引に電話を切ると、涼眞がリビングのドアを開けた。
「先生、おかえり」
「ただいま。今、彩花さんと電話してたのか?」
「うん。いつも通り酔っ払ってたよ」
「彼女らしいな」
ビジネスバッグをテーブルの脇に置き、ネクタイを緩めながら含み笑いをする。
隣の部屋まで行き、スーツから私服に着替えて出て来ると、咲人も自分の鞄をソファの傍に置くと、代わりに隣に涼眞がリモコンの電源を点けながら座った。テレビでは、夕方のニュースがやっている。
「何か飲むか?」
「ううん。それより、何時頃スーパー行く?」
「そろそろ行くか」
テレビの時計は18時半になろうとしていた。
涼眞はキッチンへ移動し、冷蔵庫から麦茶を出すと、二つのグラスに注いだ後に再びソファの前へ戻ると、テーブルの上にグラスを置いた。同時に、置かれていた紙袋に気付く。
「これは?」
「ああ、それね。先生へのプレゼント」
「プレゼント?」
「そう。出してみて」
彼に言われるがまま紙袋から向日葵の花束を出すと、意外なプレゼントに少し目を見開いた。
シンプルな部屋には似合わない程、鮮やかな黄色だ。それが11本の束になっている。
「嬉しいけど・・・なんで向日葵?」
「花屋さんに立ち寄ったら、店のお姉さんがお勧めしてくれたんだ。花言葉もあるんだよ?」
「どんな花言葉?」
咲人は少し照れ臭そうにすると、その場を立ち上がった。
「11本の束になった向日葵の花言葉はね、最愛、なんだって。本当は99本買いたかったんだけど、そこまでお金持ってなくて・・・」
咲人の答えに、涼眞は何と返答したら良いか言葉を選んだが、素直に「ありがとう」と言った。花束をプレゼントされたのは、初めてだ。
涼眞も気恥しそうに下を向いたが、すぐに咲人の方を向いた。
「じゃあ、食材買いに行くついでに花瓶も買ってこないとな」
その言葉に嬉々とした表情を浮かべると、咲人は涼眞の手を取る。
「早く行こ、先生!」
「そんな焦るなよ」
グラスに注がれた麦茶をゆっくり飲みながら笑うと、涼眞はテレビの電源を落とした。
咲人も、もう一つのグラスを手に取り、一気に飲み干す。あまりに急いでいる様子を涼眞に茶化されたが、二人はリビングから玄関へ向かい靴に履き替えると、部屋の鍵を閉め、外へ出た。
日中に比べ、夕方になると頬を撫でる風が心地良い。
「因みに、99本の向日葵の意味は?」
「秘密!」
橙と紺色がグラデーションになった空の下、手を繋ぐ二人の影が並んだ。
重い鉄製のドアを開けると、靴を脱ぎ、玄関に揃えてあったスリッパに足を潜らせた。
洗面所で手洗いうがいを済ませた後、リビングへと向かう。
テレビボードに立てられた、40インチの黒い液晶テレビが目立つ。テレビの前にはローテーブルが置かれ、その傍に二人掛けのソファが配置されている。
部屋のもう半分は、カウンターのある、綺麗に手入れされたキッチンがあった。
物があまりない所為もあり、モデルハウスの様な、あまり生活感のない部屋だ。
咲人はテーブルの上に買ってきた向日葵の花束を紙袋ごと置くと、鞄を隣に下ろしながら、ソファに腰掛けた。
スマートフォンをポケットから取り出すと、一件のメールが届いていた。涼眞ではなく、彩花からだった。返信すると長くなりそうであり、涼眞が帰宅するまで暇を持て余している事もあって、電話をする事にした。
数回呼出音が鳴ると、ハスキーな女性の声が「もしもし」と、電話に出た。
「母さん?メールにも書いたけど、今日は先生ん家に泊まるから夕飯いらないよ」
「蓮田先生、まだ帰ってないの?先生も疲れてるだろうから、ゆっくりさせてあげなさいね」
「うん、分かってる」
電話中、彩花は今日あった出来事や、仕事の愚痴を零し、咲人はひたすら相槌を打っていた。
彩花は普段から話す方だが、仕事が終わったら必ずビールか焼酎を飲む。その所為か、電話越しの彼女はいつも以上に饒舌になっていた。
彩花の話に付き合っていると、玄関のドアが開く音がした。
涼眞が帰宅した様だ。気付けば、時刻は18時を過ぎていた。
「母さん、先生帰ってきたから電話切るよ?」
「えー、折角だし、ちょっと蓮田先生に変わってよ」
「先生は疲れてるから、また今度ね」
文句を言う彩花をあしらいながら、半ば強引に電話を切ると、涼眞がリビングのドアを開けた。
「先生、おかえり」
「ただいま。今、彩花さんと電話してたのか?」
「うん。いつも通り酔っ払ってたよ」
「彼女らしいな」
ビジネスバッグをテーブルの脇に置き、ネクタイを緩めながら含み笑いをする。
隣の部屋まで行き、スーツから私服に着替えて出て来ると、咲人も自分の鞄をソファの傍に置くと、代わりに隣に涼眞がリモコンの電源を点けながら座った。テレビでは、夕方のニュースがやっている。
「何か飲むか?」
「ううん。それより、何時頃スーパー行く?」
「そろそろ行くか」
テレビの時計は18時半になろうとしていた。
涼眞はキッチンへ移動し、冷蔵庫から麦茶を出すと、二つのグラスに注いだ後に再びソファの前へ戻ると、テーブルの上にグラスを置いた。同時に、置かれていた紙袋に気付く。
「これは?」
「ああ、それね。先生へのプレゼント」
「プレゼント?」
「そう。出してみて」
彼に言われるがまま紙袋から向日葵の花束を出すと、意外なプレゼントに少し目を見開いた。
シンプルな部屋には似合わない程、鮮やかな黄色だ。それが11本の束になっている。
「嬉しいけど・・・なんで向日葵?」
「花屋さんに立ち寄ったら、店のお姉さんがお勧めしてくれたんだ。花言葉もあるんだよ?」
「どんな花言葉?」
咲人は少し照れ臭そうにすると、その場を立ち上がった。
「11本の束になった向日葵の花言葉はね、最愛、なんだって。本当は99本買いたかったんだけど、そこまでお金持ってなくて・・・」
咲人の答えに、涼眞は何と返答したら良いか言葉を選んだが、素直に「ありがとう」と言った。花束をプレゼントされたのは、初めてだ。
涼眞も気恥しそうに下を向いたが、すぐに咲人の方を向いた。
「じゃあ、食材買いに行くついでに花瓶も買ってこないとな」
その言葉に嬉々とした表情を浮かべると、咲人は涼眞の手を取る。
「早く行こ、先生!」
「そんな焦るなよ」
グラスに注がれた麦茶をゆっくり飲みながら笑うと、涼眞はテレビの電源を落とした。
咲人も、もう一つのグラスを手に取り、一気に飲み干す。あまりに急いでいる様子を涼眞に茶化されたが、二人はリビングから玄関へ向かい靴に履き替えると、部屋の鍵を閉め、外へ出た。
日中に比べ、夕方になると頬を撫でる風が心地良い。
「因みに、99本の向日葵の意味は?」
「秘密!」
橙と紺色がグラデーションになった空の下、手を繋ぐ二人の影が並んだ。
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