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第二章 至分の試練が終わりません
第19話 飛び入りも悪くありません
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「許す、申してみよ」
ライザームの返答に、鹿の獣人は、そのまま数歩進み、クルシアスの前に出る。
「『氷魔将』クルシアスの配下が一人、『大枝角』ダンカンと申します。次の至分の試練を待たず、我が主ハラック閣下の許しを得ぬまま、ライザーム閣下に今この場で、魔将の試練を課していただくことは可能でありましょうや? 願わくは、我等にその栄誉を賜らんと欲します」
鹿獣人の将が片膝を着き、その大角の先端が地に着く程の深さで頭を垂れる。
虎、豹、狼の残る三獣人は、同輩の突然の行動に驚き、固まっている。
「どうした? ダンカンは、今、我等に、と口にしたぞ。後三回も同じやり取りの繰り返しでは、芸がないと言うもの。さぁ、何とする?!」
ライザームは、咎めるようにもからかうようにも聞こえるように言う。
虎の獣人がハッとして、ダンカンの右横に進み出、両膝を着き、両拳をついて、顔だけをライザームに向けて、言上する。
「『剣牙』ロヴ、ダンカンと同じく、ライザーム閣下に魔将の試練を賜るよう乞い願います」
豹の獣人は、ダンカンの左に進み、両膝はついたが上体は倒さず、胸の前で両腕を交差させ、頭だけを垂れる。
「『幻夜爪』グルード、同じく」
最後になった狼の獣人は、先の三人とは横並びにならず、ダンカンの少し後ろで片膝をついた状態で、上体をほぼ水平に倒しながら頭を垂れた。
「『炎食らい』ヒューイ、この若輩にも、同じく試練を賜りますようお願い申し上げます」
四人が取っている姿勢は、各々の部族の戦闘儀礼であり、数段格上の相手、しかも戦闘状態に入る可能性がある相手に、自らの首を差し出し、無礼があればいつ首を落とされてもかまわないという最上級の礼である。
「おぬし等の所存は、相分かった。その言葉に嘘偽りが無ければ、試練に値する申し出か考えよう」
ライザームは、そこで言葉を切った。
「重ねて問うが、只今のダンカンを始めとする卿らの口上に、嘘偽りは一切無いな?」
唯一、顔を上げている虎人ロヴの目が泳ぐ。見回すライザームの視線に、目を合わせられない。
鹿人ダンカンは、ライザームの視線の圧を堪え切れずに身震いし、地面に滴る程の汗をかいている。
豹人グルードは、下げた頭を斜めにして横の二人の様子を伺い、狼人ヒューイは、同様に顔をわずかに上げ、前の三人の様子を伺っている。
ダンカンが、そのふところから、潰れてしまった巻物を出し、右手で前に押しやる。
それを見て、ロヴ、グルード、ヒューイも順に巻物を出す。かろうじて封印は残っているが、いつからふところに入ったままになっていたのか、どれもヨレヨレに近い。
チャロが、四人分の巻物を素早く回収し、ポーシュへ。ポーシュは宛て名を確かめてから、ライザームへ差し出す。
「部下に恵まれたな、クルシアス。だが、上に立つ者への気遣いが過ぎるのも、考えものだ」
ライザームは、目を通した四枚の書状をポーシュに渡し、ポーシュはクルシアスに差し出す。
「ダンカンとロヴには二年前に、グルードとヒューイには一年前に、『四つ星』殿から、魔将の試練を受けるよう指示が出ている」
クルシアスは、書状をあらため、ライザームの言う通りであることを確認した。
クルシアスに追いつくことに遠慮して、魔将の試練を四人が言い出せなかったのではないか、と。
ライザームの返答に、鹿の獣人は、そのまま数歩進み、クルシアスの前に出る。
「『氷魔将』クルシアスの配下が一人、『大枝角』ダンカンと申します。次の至分の試練を待たず、我が主ハラック閣下の許しを得ぬまま、ライザーム閣下に今この場で、魔将の試練を課していただくことは可能でありましょうや? 願わくは、我等にその栄誉を賜らんと欲します」
鹿獣人の将が片膝を着き、その大角の先端が地に着く程の深さで頭を垂れる。
虎、豹、狼の残る三獣人は、同輩の突然の行動に驚き、固まっている。
「どうした? ダンカンは、今、我等に、と口にしたぞ。後三回も同じやり取りの繰り返しでは、芸がないと言うもの。さぁ、何とする?!」
ライザームは、咎めるようにもからかうようにも聞こえるように言う。
虎の獣人がハッとして、ダンカンの右横に進み出、両膝を着き、両拳をついて、顔だけをライザームに向けて、言上する。
「『剣牙』ロヴ、ダンカンと同じく、ライザーム閣下に魔将の試練を賜るよう乞い願います」
豹の獣人は、ダンカンの左に進み、両膝はついたが上体は倒さず、胸の前で両腕を交差させ、頭だけを垂れる。
「『幻夜爪』グルード、同じく」
最後になった狼の獣人は、先の三人とは横並びにならず、ダンカンの少し後ろで片膝をついた状態で、上体をほぼ水平に倒しながら頭を垂れた。
「『炎食らい』ヒューイ、この若輩にも、同じく試練を賜りますようお願い申し上げます」
四人が取っている姿勢は、各々の部族の戦闘儀礼であり、数段格上の相手、しかも戦闘状態に入る可能性がある相手に、自らの首を差し出し、無礼があればいつ首を落とされてもかまわないという最上級の礼である。
「おぬし等の所存は、相分かった。その言葉に嘘偽りが無ければ、試練に値する申し出か考えよう」
ライザームは、そこで言葉を切った。
「重ねて問うが、只今のダンカンを始めとする卿らの口上に、嘘偽りは一切無いな?」
唯一、顔を上げている虎人ロヴの目が泳ぐ。見回すライザームの視線に、目を合わせられない。
鹿人ダンカンは、ライザームの視線の圧を堪え切れずに身震いし、地面に滴る程の汗をかいている。
豹人グルードは、下げた頭を斜めにして横の二人の様子を伺い、狼人ヒューイは、同様に顔をわずかに上げ、前の三人の様子を伺っている。
ダンカンが、そのふところから、潰れてしまった巻物を出し、右手で前に押しやる。
それを見て、ロヴ、グルード、ヒューイも順に巻物を出す。かろうじて封印は残っているが、いつからふところに入ったままになっていたのか、どれもヨレヨレに近い。
チャロが、四人分の巻物を素早く回収し、ポーシュへ。ポーシュは宛て名を確かめてから、ライザームへ差し出す。
「部下に恵まれたな、クルシアス。だが、上に立つ者への気遣いが過ぎるのも、考えものだ」
ライザームは、目を通した四枚の書状をポーシュに渡し、ポーシュはクルシアスに差し出す。
「ダンカンとロヴには二年前に、グルードとヒューイには一年前に、『四つ星』殿から、魔将の試練を受けるよう指示が出ている」
クルシアスは、書状をあらため、ライザームの言う通りであることを確認した。
クルシアスに追いつくことに遠慮して、魔将の試練を四人が言い出せなかったのではないか、と。
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さきほど感想を送った気もするんですが、承認して公開しないとポイントにならないようです。
頑張ってください。
まだよくわかっていないので、とりあえず『承認』しましたw
カクヨムから参りました。
頑張ってください。
ありがとうございます。ウェブ引用だとうまく行かなかったので、移植開始しました。