上 下
137 / 266
◎二年目、七月の章

■暴れ者はどこにでもいる

しおりを挟む
 クイーン・ナイツの拠点となっているホテルは騒然としていた。

 泣き崩れている女の子に怒鳴り散らす男。いずれも受付で起こっている一幕である。

「どういうことだと聞いているんだ!」

 男は長身で体格も大きい。おそらくベテランプレイヤーだろう。表示されているレベルもかなり高い。

 リーダーの乃々子ののこも対応に困っているようで体が固まったように動かない。

 かくいうはるもレベル差を見せつけられて身動きが取れない状態だ。

 しかも男の取り巻きが三人ほどいて威圧感も十分だ。

「あのー、いいですか?」

 そんなのをお構いなしに声をかけるのが古輪久遠ふるわくおんという少年であった。

「何だ、テメー。俺たちが取りこみ中なのが見てわかんねーのか?」

 取り巻きの一人顔をぐいっと久遠へ近づけようとすると、久遠は男の顔を左手で軽々と押しのけていく。

「そんなに顔を近づけなくても聞こえますよ」

 久遠は冷めた口調で言い放つ。

「舐めやがってーっ!」

 男が腕を振りあげようとすると、久遠は足払いして男を転倒させる。

「短絡的な人だ」

 その口調には哀れみさえ感じられる。

「お前、自分が何をやっているのかわかっているのか?」

 リーダー格の男が久遠の胸ぐらを掴もうとするも、久遠はその腕を掴んで払いのける。

 これには男も驚きを隠せない。久遠のどちらかと言えば小柄な体格からは信じられない腕力だったのだろう。

「そちらこそわかってないんじゃないですか?」

 これが決定的になったのは間違いない。

 男たちの目にたぎったものが宿る。

「てめえの名を名乗りな」

 時静かなる闘志をこめて男は久遠に問いかける。

「あなた方に名乗る名なんてありませんよ」

 久遠は相変わらず冷めた口調のままで返す。これには男たちも猛り狂い「表に出ろ」などで、最終的に決闘となってしまったのである。


 
しおりを挟む

処理中です...