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◎二年目、七月の章
■寮で明里と乃々子はエンカウントする
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寮の談話室に当たり前のようにいる明里。週に二回は必ず見る光景である。
それと久遠が連れてきた乃々子という女性。この二人は同郷の出身でいわゆる幼なじみであった。
二人は顔を合わせると最初は少し険悪なムードを出していたが、いまではと言うと――。
「ののちゃん、元気そうじゃん!」
「あっきーも大手クランリーダーでしょ、出世したねぇ」
なぜか二人の出会いに祝杯をあげていた。自分に用があったのではないのかと里奈はため息をつく。
連れてきた久遠はというと自分は連れてきただけだからとばかりにこの状況を静観している。
「せっかくだしクラン同士で交流会やる?」
「お、いいわね。オフの娘に声かけてみるわ」
当然、会場はここになるだろう。決めたあとにこちらに了解を求めてくるのもいつものことだ。
そうなると交流会のメンバーには必然的に里奈がリーダーをしているクラン――東方旅団も組みこまれる。
今回にかぎっては明里と乃々子がこういうノリで話を進めていくのだから始末に負えない。
ガックリと里奈は肩を落とすしかなかった。で、これは当然夕方どころか夜通し続くわけだ。
「これ、どういうことかな?」
夕方になっても騒ぎ放題の談話室を見て、由芽に里奈はとっちめられる。
笑顔だが、目が笑っていない。そんな由芽が里奈は怖かった。
由芽は学校から帰ってきたばかりだ。由芽は里奈以上にこのバカ騒ぎのノリが苦手だった。
「えっとね……」
反面、里奈はこのノリに適応しつつあった。何よりクラン同士の交流で色んな話も聞かせてもらえると損よりメリットを感じることが増えたせいかもしれない。
いろいろ説得を試みるが、どの言葉も由芽には響かない。
「わかったよ。私、しばらく寮を出ることにする」
「ちょっと。もうすぐ夜よ」
危ないではないかと引き止めようとするも由芽はこう言い放つ。
「それが何か?」
寮をそう言って出て行く由芽を里奈は引き止めるだけの言葉を持ち合わせていなかった。
ならばと里奈は久遠へ視線を送る。
指示は由芽を追いかけろ、である。
それに対して、大丈夫か? と視線で訊ねてくる。
晴もいるし大丈夫だろうと里奈は首を縦に振る。
内心、久遠がクイーン・ナイツの女性に囲まれているのも気に食わなかったので、これで引き剥がすことに成功したと内心してやったりである。
「頼んだわよ」
里奈は久遠とすれ違いざまに声をかけると、圭都も一緒について行こうとする。
「あんたはどこ行くの?」
圭都は不思議そうな視線を里奈に向けてくる。わかっているでしょということなのだろう。
それはそうであるが、里奈は飲みこめきれないのだ。
「二人きりにしていいんなら残るけど?」
これで里奈の選択肢は奪われた。
「わかったわよ……」
里奈は苦虫をかみつぶしたような感覚を覚えながら圭都を送りだす。
二人を見送ったあと里奈はとぼとぼした足取りで明里と乃々子がいるところへ向かう。
「飲むか?」
「飲んじゃいなよ」
この二人はシラフのはずだが、なぜか雰囲気は居酒屋のそれだった。
「飲みます」
乃々子は明里との間に席を空けて、二人の間に座るよう促される。
いいだろう。こっちもたっぷり愚痴を聞いてもらうことにしよう。
宴は朝まで続く。
ついでに久遠を月に数回、クイーン・ナイツに派遣するという話もいつの間にか決まっていた。
以降、里奈はどんな雰囲気であっても自分は呑まれまいと固く誓うのであった。
それと久遠が連れてきた乃々子という女性。この二人は同郷の出身でいわゆる幼なじみであった。
二人は顔を合わせると最初は少し険悪なムードを出していたが、いまではと言うと――。
「ののちゃん、元気そうじゃん!」
「あっきーも大手クランリーダーでしょ、出世したねぇ」
なぜか二人の出会いに祝杯をあげていた。自分に用があったのではないのかと里奈はため息をつく。
連れてきた久遠はというと自分は連れてきただけだからとばかりにこの状況を静観している。
「せっかくだしクラン同士で交流会やる?」
「お、いいわね。オフの娘に声かけてみるわ」
当然、会場はここになるだろう。決めたあとにこちらに了解を求めてくるのもいつものことだ。
そうなると交流会のメンバーには必然的に里奈がリーダーをしているクラン――東方旅団も組みこまれる。
今回にかぎっては明里と乃々子がこういうノリで話を進めていくのだから始末に負えない。
ガックリと里奈は肩を落とすしかなかった。で、これは当然夕方どころか夜通し続くわけだ。
「これ、どういうことかな?」
夕方になっても騒ぎ放題の談話室を見て、由芽に里奈はとっちめられる。
笑顔だが、目が笑っていない。そんな由芽が里奈は怖かった。
由芽は学校から帰ってきたばかりだ。由芽は里奈以上にこのバカ騒ぎのノリが苦手だった。
「えっとね……」
反面、里奈はこのノリに適応しつつあった。何よりクラン同士の交流で色んな話も聞かせてもらえると損よりメリットを感じることが増えたせいかもしれない。
いろいろ説得を試みるが、どの言葉も由芽には響かない。
「わかったよ。私、しばらく寮を出ることにする」
「ちょっと。もうすぐ夜よ」
危ないではないかと引き止めようとするも由芽はこう言い放つ。
「それが何か?」
寮をそう言って出て行く由芽を里奈は引き止めるだけの言葉を持ち合わせていなかった。
ならばと里奈は久遠へ視線を送る。
指示は由芽を追いかけろ、である。
それに対して、大丈夫か? と視線で訊ねてくる。
晴もいるし大丈夫だろうと里奈は首を縦に振る。
内心、久遠がクイーン・ナイツの女性に囲まれているのも気に食わなかったので、これで引き剥がすことに成功したと内心してやったりである。
「頼んだわよ」
里奈は久遠とすれ違いざまに声をかけると、圭都も一緒について行こうとする。
「あんたはどこ行くの?」
圭都は不思議そうな視線を里奈に向けてくる。わかっているでしょということなのだろう。
それはそうであるが、里奈は飲みこめきれないのだ。
「二人きりにしていいんなら残るけど?」
これで里奈の選択肢は奪われた。
「わかったわよ……」
里奈は苦虫をかみつぶしたような感覚を覚えながら圭都を送りだす。
二人を見送ったあと里奈はとぼとぼした足取りで明里と乃々子がいるところへ向かう。
「飲むか?」
「飲んじゃいなよ」
この二人はシラフのはずだが、なぜか雰囲気は居酒屋のそれだった。
「飲みます」
乃々子は明里との間に席を空けて、二人の間に座るよう促される。
いいだろう。こっちもたっぷり愚痴を聞いてもらうことにしよう。
宴は朝まで続く。
ついでに久遠を月に数回、クイーン・ナイツに派遣するという話もいつの間にか決まっていた。
以降、里奈はどんな雰囲気であっても自分は呑まれまいと固く誓うのであった。
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