デジタル・リボルト～ディストピアからへの英雄譚～

◎二年目、七月の章

■ビッグサイトには蜘蛛がいっぱい

　由芽たちがログインをするとあたりはクモの魔物だらけであった。

「いままで戦った中だと一番気味が悪い相手だね」

　グレーの体色に毛がわさわさと生えている。要は大きいクモである。

「案外レベルが高いな」

　久遠がつぶやく。クモの魔物のことを言っているのだろう。

　由芽のレベルでも相手するにはギリギリというところだろう。圭都や伊織のレベルなら近づかない方がいい。

「こいつらはHPが減っても行動パターンは変わらない」

　浩和が魔物の情報を久遠に伝える。レベリングするには悪くない相手だと。

「僕の手加減スキルが使用上限を越えるまで頑張ってみましょうか」

　久遠はくるりと棍を一回転させると先陣を切る。そこに他の四人が続く。

　久遠がクモのHPを削り、由芽たちが攻撃されそうになれば浩和が守る。

　HPが一になった魔物は由芽が槍で串刺しにする。

　それを久遠が言ったとおり使用上限がくると休憩に入る。

「どうしても経験値は私の取り分が多くなるね」

　由芽が言う。こればかりはゲームの仕様上仕方のないことと言えた。

　レベルの高いプレイヤーと組むと経験値の取り分がレベルの高いほうへ割合として多く分配される。

　あとトドメを刺したプレイヤーに対してボーナスが入るためだ。

　それでも恩恵が多いのも事実で圭都と伊織のレベルも確実に上がっていた。

「使用上限は回復したかい？」と浩和が久遠に訊ねる。

「いえ、もう少しかかります。多分回復は昼過ぎになると思いますよ」

「そうか」

　昼からはまた暑くなる。施設内であれば空調も効いていて快適にプレイができる。

　ここも空調の加減はそこまで悪くないにも関わらず、人の出入りは少ない。だとすれば、原因はおそらくここにいる魔物のせいか。

「せっかくだ。ボスがいるだろうところまで行ってみないかい？」

　浩和が提案してくる。何となく場所はわかるということだった。

　由芽たちも手持ち無沙汰だったので、その提案に乗ることにする。

　仮に先ほどのパーティーがいたとしても邪魔をしなければ問題はないはずだ。

　強制ログインゾーンがないときとの落差に密かに驚愕しつつ由芽たちはボスのいるところへ向かうのである。