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◎二年目、八月の章

■水呉の誤算

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 ――何が起こった?

 まるでわからなかった。気がつけばあの乱入してきた少年に倒されていた。

 しかも石つぶてを喰らった瞬間にパッシブスキルからアクティブスキルまで封印となったのだ。

 だが、いまはそれを憂慮ゆうりょしているときではない。

 目下、両陣営は指揮官を失い混乱のさなかにある。

 その間にあの少年は陣営に切り込むと同時に穴を作っては攻撃を最小限にして、背後にまわって有貴士団のメンバーの一人を蹴飛ばして、暁の団の中に放りこむ。それをやりつつ片や別の陣営に対しても同じことを繰り返していた。

 最初、何をやっているのかと思ってたが、気づいたときにはすでに手遅れだった。

 いま両陣営は碁盤のようにそれぞれが織り交ざった状態になり、各個で連携を取るのが難しい状態になっていた。

 ここから陣形を立て直すには各個の接触が不可欠。しかしそれを実現するには隣りにいる相手陣営が邪魔だった。

 つまり両陣営は潰しあいを余儀なくされる状況にある。

 ――私たちを最初に倒したのはこれが目的か。

 我ながら安い挑発に乗ってしまったと反省する。

 この状況でもっとも利を得るのは第三勢力だろう。

 ――東方旅団か。覚えておかなくてはな。

 外周から少年は相手が別の相手にかまけている者を優先的に各個撃破していっている。

 しかも驚くべきスピードでだ。

 それは頼果ともう一人の投擲武器ばかり使っている少女の援護の賜物なのだろう。

「……克馬、まずあの三人を倒すのが先だ」

「俺に指示するんじゃねぇよ」

「ならば負けるか?」

「冗談抜かせ」

 交渉が成立した瞬間だ。

「では、奥の投擲武器を使う奴から叩くよう指示を送るぞ」

 水呉はクランチャットから音声で指示を送る。

 水呉も状況を把握できるようになって、指示が送れるようなってくる。先んじて倒すべき敵もいまならクリアに見える。

 第二ラウンド突入である。
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