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◎二年目、九月の章
■乃々子が学校へやってくる
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蘭々はプールにいた。もちろん泳ぐためだが、畏れ多くも久遠に泳ぐのを教えるためでもある。
とは言っても、こちらから伝えることはそんなにないように思える。彼はかなり泳げるようになっていたからだ。
久遠がプールからあがると体操着姿の伊織がすかさずタオルとスポーツ飲料を渡す。
「泳がないの?」と聞いたら、「僕はいいよ」と返事が返ってくる。それでもこうして久遠にはついてくる。
「もう少し泳いでる?」
久遠が蘭々に訊ねてくる。
「はい」
蘭々は頷くとまた泳ぎだす。
あまり体を動かすタイプだと思われないのだが、実際はこうやって体を動かすことが好きだった。
もちろん、講義を受けるのも案外と性に合っていると気がついたのも最近のことだ。
最初、兄に言われて仕方なくという気持ちで東方旅団に入団したが、いまはまったく後悔していなかった。
むしろ充実してるとさえ思う。
五〇メートルを泳いだ時点で蘭々はいったんプールからあがる。
するとプールに女性が一人入ってくるのが目に入る。
「いたいた」
女性は久遠に用があるようで、手を振って呼びかけている。
「乃々子さん、どうしたんですか?」
乃々子という女性に蘭々は見覚えがあった。たしかクイーンナイツという非戦闘系のクランリーダーだったはずだ。
「蘭々ちゃん、どうぞ」
伊織はタオルとスポーツ飲料を同様の仕草で渡してくれる。
「……ありがとうございます」
久遠にだけだと思っていたので、思わず驚いてしまう。
顔を拭きながらも乃々子のほうにチラリと視線を向ける。
友人というのは乃々子の距離の取りかたが馴れ馴れしく感じる。そもそも久遠はいま上半身裸だ。
蘭々でも距離を近くにとるのはさすがに躊躇する。
乃々子のは久遠とか関係なく見慣れているという印象だった。
「どうしたの?」
ボーッとしていたように見えたのだろう。伊織が心配そうに顔を覗きこんでくる。
そういえば非戦闘系のクランとはそもそもどうやって日々の生計を立てているのだろうか。
東方旅団のようにクランイベントに参加せず生計を立てているのにも驚きだが、非戦闘系についてはまったくもっての謎である。
彼らがどういうことをしているのか。蘭々は興味が湧いていた。
「久遠くんに助けてほしいの」
乃々子が久遠の手をギュッと握る。男なら喜ぶシーンかもしれないが、久遠のほうは顔を少し引きつらせ気味だ。
「……用件によるでいいですか」
「もちろんよ。お店の場所を変えたいの。いい物件を知らない?」
そう聞かれて久遠はただ目をまばたきさせるだけであった。
とは言っても、こちらから伝えることはそんなにないように思える。彼はかなり泳げるようになっていたからだ。
久遠がプールからあがると体操着姿の伊織がすかさずタオルとスポーツ飲料を渡す。
「泳がないの?」と聞いたら、「僕はいいよ」と返事が返ってくる。それでもこうして久遠にはついてくる。
「もう少し泳いでる?」
久遠が蘭々に訊ねてくる。
「はい」
蘭々は頷くとまた泳ぎだす。
あまり体を動かすタイプだと思われないのだが、実際はこうやって体を動かすことが好きだった。
もちろん、講義を受けるのも案外と性に合っていると気がついたのも最近のことだ。
最初、兄に言われて仕方なくという気持ちで東方旅団に入団したが、いまはまったく後悔していなかった。
むしろ充実してるとさえ思う。
五〇メートルを泳いだ時点で蘭々はいったんプールからあがる。
するとプールに女性が一人入ってくるのが目に入る。
「いたいた」
女性は久遠に用があるようで、手を振って呼びかけている。
「乃々子さん、どうしたんですか?」
乃々子という女性に蘭々は見覚えがあった。たしかクイーンナイツという非戦闘系のクランリーダーだったはずだ。
「蘭々ちゃん、どうぞ」
伊織はタオルとスポーツ飲料を同様の仕草で渡してくれる。
「……ありがとうございます」
久遠にだけだと思っていたので、思わず驚いてしまう。
顔を拭きながらも乃々子のほうにチラリと視線を向ける。
友人というのは乃々子の距離の取りかたが馴れ馴れしく感じる。そもそも久遠はいま上半身裸だ。
蘭々でも距離を近くにとるのはさすがに躊躇する。
乃々子のは久遠とか関係なく見慣れているという印象だった。
「どうしたの?」
ボーッとしていたように見えたのだろう。伊織が心配そうに顔を覗きこんでくる。
そういえば非戦闘系のクランとはそもそもどうやって日々の生計を立てているのだろうか。
東方旅団のようにクランイベントに参加せず生計を立てているのにも驚きだが、非戦闘系についてはまったくもっての謎である。
彼らがどういうことをしているのか。蘭々は興味が湧いていた。
「久遠くんに助けてほしいの」
乃々子が久遠の手をギュッと握る。男なら喜ぶシーンかもしれないが、久遠のほうは顔を少し引きつらせ気味だ。
「……用件によるでいいですか」
「もちろんよ。お店の場所を変えたいの。いい物件を知らない?」
そう聞かれて久遠はただ目をまばたきさせるだけであった。
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