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◎二年目、一〇月の章
■国会議事堂へ
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東京には子供しかいない。よって国会議事堂にも人が集まることはない。
現在はAISIによって自動管理されている。もはや観光名所としての機能しかないのだが、それでも会議場としては十分であった。
「何で使わなくなったんですか?」
里奈は博文に質問する。
「僕らは代議士を立てなくても直接意見を議会で伝えられるほどのネットワークを手に入れたからと言われているね」
そのおかげで政治家の存在はコストでしかなくなった。
「ただし国家元首なんかは相変わらずいるんだよ。そういう存在は必要だったから」
ある時期から人類は行政維持コストを下げようとしてきたという。だからといってここまで機械化してどれほどのコスト削減になったのかはわかりようもないのだが。
「歴史的に価値があるから残したんですかね?」
「歴史を刻むのを忘れたのは人間なのであって、AISIはかつての人類の考えを忠実に守っていると言えるんだよね」
だからこうして遺っているのではないかと博文は言う。
「実際、義務教育で学ぶ教科の中に歴史は存在しているしね」
「聞いていても私に良し悪しはわかりませんね」
里奈は肩をすくめるしかなかった。現在の人類は歴史を語ることさえも恐れているのだという。
それで東方旅団の面々がいま何をしているかと言うと国会議事堂を探索しているところだった。
「衆議院議場を使うでいいんですよね?」
久遠を先頭に向かっているのが建物左手にある衆議院正玄関のほうであった。
「学生身分で申請したら利用料は取らないってすごいわよねぇ」
頼果は感心するやら呆れるやらの混じった口調でつぶやく。
「設備も普通に使っていいって出てるよ」
久遠は空中ディスプレイでマップや注意事項を確認していた。
とりあえず音頭取りは発案した東方旅団がとることになったが、東方旅団を主催にするというわけにもいかず、有貴士団、緑葉士団、暁の団が共同で開催するという話になっていた。
「とりあえず他のクランの人たちが来るまでにログインして中を確認したいですね」
久遠は玄関をくぐると早速ログインして周囲の観察をはじめる。
「魔物はいないようだね。おそらくお社に要石が奉られている状態なんだろうな」
久遠はこのまま探索したいと申し出る。
「それじゃあ博文先輩に胡桃葉先輩と行って。私たちは設備の確認と明里さんたちを出迎える準備をするから」
里奈は久遠の申し入れを受け入れたうえで、他のメンバーにテキパキと指示を出しはじめる。
「それじゃあ僕らも行きましょうか」
こうして一同は二手に分かれるのであった。
現在はAISIによって自動管理されている。もはや観光名所としての機能しかないのだが、それでも会議場としては十分であった。
「何で使わなくなったんですか?」
里奈は博文に質問する。
「僕らは代議士を立てなくても直接意見を議会で伝えられるほどのネットワークを手に入れたからと言われているね」
そのおかげで政治家の存在はコストでしかなくなった。
「ただし国家元首なんかは相変わらずいるんだよ。そういう存在は必要だったから」
ある時期から人類は行政維持コストを下げようとしてきたという。だからといってここまで機械化してどれほどのコスト削減になったのかはわかりようもないのだが。
「歴史的に価値があるから残したんですかね?」
「歴史を刻むのを忘れたのは人間なのであって、AISIはかつての人類の考えを忠実に守っていると言えるんだよね」
だからこうして遺っているのではないかと博文は言う。
「実際、義務教育で学ぶ教科の中に歴史は存在しているしね」
「聞いていても私に良し悪しはわかりませんね」
里奈は肩をすくめるしかなかった。現在の人類は歴史を語ることさえも恐れているのだという。
それで東方旅団の面々がいま何をしているかと言うと国会議事堂を探索しているところだった。
「衆議院議場を使うでいいんですよね?」
久遠を先頭に向かっているのが建物左手にある衆議院正玄関のほうであった。
「学生身分で申請したら利用料は取らないってすごいわよねぇ」
頼果は感心するやら呆れるやらの混じった口調でつぶやく。
「設備も普通に使っていいって出てるよ」
久遠は空中ディスプレイでマップや注意事項を確認していた。
とりあえず音頭取りは発案した東方旅団がとることになったが、東方旅団を主催にするというわけにもいかず、有貴士団、緑葉士団、暁の団が共同で開催するという話になっていた。
「とりあえず他のクランの人たちが来るまでにログインして中を確認したいですね」
久遠は玄関をくぐると早速ログインして周囲の観察をはじめる。
「魔物はいないようだね。おそらくお社に要石が奉られている状態なんだろうな」
久遠はこのまま探索したいと申し出る。
「それじゃあ博文先輩に胡桃葉先輩と行って。私たちは設備の確認と明里さんたちを出迎える準備をするから」
里奈は久遠の申し入れを受け入れたうえで、他のメンバーにテキパキと指示を出しはじめる。
「それじゃあ僕らも行きましょうか」
こうして一同は二手に分かれるのであった。
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