210 / 266
◎二年目、一〇月の章
■行商人婆と封印石
しおりを挟む
国会議事堂の中央塔八階にそれは存在していた。
お社はいままで見たこともないほど大きさかもしれない。
お社の中心に鎮座するこれまた巨大な要石。さらに石にはそこら中にお札が貼られている。
「大きいな」
博文が思わずつぶやく。
「寄せつけないというより封印してる印象ですね」
胡桃葉の言うことは何となく理解できた。
要石をよく観察すると石の中心あたりからどす黒いものが鼓動打ってるようにも見えたからだ。
「あまり気味のいいものじゃないですね」
久遠はあまり石に近づこうという素振りを見せない。むしろ恐れているようでさえある。彼は何かを石から感じているようだった。
「その石に触ってはいけないよ」
三人の背後から少しきつい印象を受ける女性の声。
「行商人?」
背後を振り返ると長身でスラリとしたつり目の女性がキセルをくわえて、背負い箱を背負っている。
「アンタのことは息子から聞いている」
「息子?」
久遠は首を傾げた。
「鎧蛇の巣で出会ったろう。あれが息子さ」
博文と胡桃葉はいきさつがわからず目をパチパチさせている。
「ずいぶんお若いようですが」
「年をとったくらいで皺が増えたり、腰が曲がったりするとはかぎんないだろう」
「はあ」と久遠は生返事だ。
「行商人婆とでもお呼び」
それではじめて博文も胡桃葉も気がつく。彼女が実は老婆であることに。
いや、それにしては老婆と呼ぶにはあまりにも若々しくて美しかった。
「その中には怨霊が封じられている。ちょっとやそっとじゃ封印は破れないよう幾重にも重ねてね」
「それほど怨霊は強大ということですか?」
博文が訊ねる。
「強大なのはたしかさ。でも、三色烏が揃ってるなら十分に戦えるはずだよ」
行商人婆は久遠に対して顎をしゃくる。
「とはいえ、厄介なのはたしかさ。まず、どうやって攻撃を当てるのかが問題だからね」
怨霊は攻撃を通さないというのか。博文と胡桃葉は顔を見合わせる。
「封印が解けると同時に死の宣告を使うんだ。解くには二四時間以内に怨霊を倒すこと」
――ただし! と話しはまだ続く。
「怨霊はそれ以外の攻撃を持っていないんだ。実体化していない状態では攻撃が当てられない。つまりはスキル封印ができない」
「倒せないってことですか?」
胡桃葉は博文に聞いてみる。
「それだと攻略不能ってことになるからね。そんなことするかな?」
「まあ、話は最後までお聞きよ。怨霊は金縛りを使うんだ。その時に実体化する。金縛りにした人間の体に触れるためにね」
「……悪趣味ですね」
胡桃葉は顔を引きつらせている。
「しかし、里奈くんが狙われると厄介じゃないかな?」
博文が言いたいのは金縛りに里奈が合うと、実体化していても封印スキルを使うための投擲を使うための予備動作ができないことになる。
それを危惧してのことだろう。
「金縛りを防ぐアイテムがあればいいんですけどね」
久遠が言う。とは言え、そんなに都合のいいものがあるとは思えない。
「大祓人形っていうのがあるよ。買うかい?」
「聞いたことがある。呪いの効果を肩代わりしてくれるアイテムだよ」
博文が解説してくれる。
「まあ、行商人から買えるものはとりあえず買うけどさ」
久遠は行商人婆から大祓人形だけでなく、それ以外の品も買い占める。
「久遠くんは豪快だね……」
これには博文も驚いたようだ。
「バザーに流せば十分元が取れますからね」
行商人はレアキャラ。必然的に取り扱ってる品もレアアイテムになる。なので、行商人に出会ったら借金してでも買い占めろなのである。
「まいどあり。それじゃあ、これはサービスでつけといてやるよ」
久遠のアイテムストレージを開けるとそこには封印石というアイテムがあった。それはいまお社で奉られているものと同じものだった。
「万が一ってやつだね」
行商人婆はニヤリと不敵に微笑む。
そんな風になってほしくはないがと切に博文は願うのであった。
お社はいままで見たこともないほど大きさかもしれない。
お社の中心に鎮座するこれまた巨大な要石。さらに石にはそこら中にお札が貼られている。
「大きいな」
博文が思わずつぶやく。
「寄せつけないというより封印してる印象ですね」
胡桃葉の言うことは何となく理解できた。
要石をよく観察すると石の中心あたりからどす黒いものが鼓動打ってるようにも見えたからだ。
「あまり気味のいいものじゃないですね」
久遠はあまり石に近づこうという素振りを見せない。むしろ恐れているようでさえある。彼は何かを石から感じているようだった。
「その石に触ってはいけないよ」
三人の背後から少しきつい印象を受ける女性の声。
「行商人?」
背後を振り返ると長身でスラリとしたつり目の女性がキセルをくわえて、背負い箱を背負っている。
「アンタのことは息子から聞いている」
「息子?」
久遠は首を傾げた。
「鎧蛇の巣で出会ったろう。あれが息子さ」
博文と胡桃葉はいきさつがわからず目をパチパチさせている。
「ずいぶんお若いようですが」
「年をとったくらいで皺が増えたり、腰が曲がったりするとはかぎんないだろう」
「はあ」と久遠は生返事だ。
「行商人婆とでもお呼び」
それではじめて博文も胡桃葉も気がつく。彼女が実は老婆であることに。
いや、それにしては老婆と呼ぶにはあまりにも若々しくて美しかった。
「その中には怨霊が封じられている。ちょっとやそっとじゃ封印は破れないよう幾重にも重ねてね」
「それほど怨霊は強大ということですか?」
博文が訊ねる。
「強大なのはたしかさ。でも、三色烏が揃ってるなら十分に戦えるはずだよ」
行商人婆は久遠に対して顎をしゃくる。
「とはいえ、厄介なのはたしかさ。まず、どうやって攻撃を当てるのかが問題だからね」
怨霊は攻撃を通さないというのか。博文と胡桃葉は顔を見合わせる。
「封印が解けると同時に死の宣告を使うんだ。解くには二四時間以内に怨霊を倒すこと」
――ただし! と話しはまだ続く。
「怨霊はそれ以外の攻撃を持っていないんだ。実体化していない状態では攻撃が当てられない。つまりはスキル封印ができない」
「倒せないってことですか?」
胡桃葉は博文に聞いてみる。
「それだと攻略不能ってことになるからね。そんなことするかな?」
「まあ、話は最後までお聞きよ。怨霊は金縛りを使うんだ。その時に実体化する。金縛りにした人間の体に触れるためにね」
「……悪趣味ですね」
胡桃葉は顔を引きつらせている。
「しかし、里奈くんが狙われると厄介じゃないかな?」
博文が言いたいのは金縛りに里奈が合うと、実体化していても封印スキルを使うための投擲を使うための予備動作ができないことになる。
それを危惧してのことだろう。
「金縛りを防ぐアイテムがあればいいんですけどね」
久遠が言う。とは言え、そんなに都合のいいものがあるとは思えない。
「大祓人形っていうのがあるよ。買うかい?」
「聞いたことがある。呪いの効果を肩代わりしてくれるアイテムだよ」
博文が解説してくれる。
「まあ、行商人から買えるものはとりあえず買うけどさ」
久遠は行商人婆から大祓人形だけでなく、それ以外の品も買い占める。
「久遠くんは豪快だね……」
これには博文も驚いたようだ。
「バザーに流せば十分元が取れますからね」
行商人はレアキャラ。必然的に取り扱ってる品もレアアイテムになる。なので、行商人に出会ったら借金してでも買い占めろなのである。
「まいどあり。それじゃあ、これはサービスでつけといてやるよ」
久遠のアイテムストレージを開けるとそこには封印石というアイテムがあった。それはいまお社で奉られているものと同じものだった。
「万が一ってやつだね」
行商人婆はニヤリと不敵に微笑む。
そんな風になってほしくはないがと切に博文は願うのであった。
0
あなたにおすすめの小説
「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」
(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。
王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。
風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる