デジタル・リボルト~ディストピアからへの英雄譚~

あかつきp dash

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◎二年目、一二月の章

■要はライブがしたいということ

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 ハンバーガーショップ、アパレル、あらゆるものにかつてはブランドがあったそうだ。もうそれは失われて久しい。それはメーカーが持っていた物語をほとんどの人たちが興味を失ったせいである。

 名前に意味がなくなってしまったのだ。いま企業という存在に名前はない。ただ売っているものが陳列されているだけだ。

 久遠が桐香に伝えたのは東方旅団としての意向であった。

「なるほど。一度、こちらのパフォーマンスをあなたたちに見せてほしいと」

「ええ。僕たちもどういうことをするのか知っておきたいので」

「そう頼まれるのであればやぶさかではないわね。受けましょう」

 交渉はこれで終わったようなものと言えるだろう。あとはその他のことになる。

「学園祭の時にやったみたいにステージを準備したりできるの?」

 桐香の質問に久遠は端的に答える。

「できますよ。例えばそれこそ体育館がありましたよね。そこのステージでパフォーマンスは可能だと思います。あとはどれくらいの観客を呼びこめるか……。それによって会場を考えるべきでしょうね」

「認知度はそれなりにあるつもりなんだけどね」

 どれくらいかまでは予想はつかない。だからといって体育館を人で一杯というのも難しいだろう。それが桐香の予想であった。

「その辺は過去に似たようなことをやっていたそうなので調べてみますね」

「助かるわ。あと、大手クランは東方旅団と関係を持つ際に自身のクランメンバーをそちらに入団させると聞いているのだけど、そうなの?」

「たまたまですよ」

 久遠は答える。嘘をついてる風ではない。事務的な答えだった。

「ウチから玲美と――」

 チラリと桐香は悠人に視線を向けた。捨てられそうな子犬のような瞳で見つめてきている。

「それと悠人をそちらに入団させようとおもっているんだけど、大丈夫かしら?」

「入団試験とかはないんですが、ウチのリーダーとの面談は必要になります。申請はしますけど、即答はしかねますね」

「玲美は君の身内でしょ。大丈夫じゃないの?」

「その玲美は朝方ウチのリーダーと喧嘩したばかりです」

 玲美は気まずそうに目を泳がせる。

「まあ、里奈もああいう性格なので反省すべきことは多くあります。情状酌量は十分ありますよ」

「身内の話のはずなのにえらく事務的なのね」

「東方旅団に玲美が入れなくても接触する手段ができたので僕は困りませんよ」

「その言い方だと、身内に入られる方が困るみたいじゃない!」

「そんなことはないよ。玲美が東方旅団に入ってくれたら嬉しいからさ」

 久遠は笑顔でしれっと返す。真意はともかくこう返されては玲美も黙るしかない。それでも本人は不満そうであるが。

「……とりあえず日程から調整しましょうか」

 話題を変える。これが一番懸命であると桐香は悟ったのであった。
 
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