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◎二年目、一二月の章

■皇会

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 ショッピングモール内に入ると玲美や久遠と同い年くらいの少年が声をかけてる。

「おかえり、古輪さん」

 そう呼ばれて久遠も声をあげそうになるが、よくよく考えると呼ばれたのは玲美の方だった。何ともややこしいことである。

「朝田くん、ただいま」

 朝田という少年は平静を装いながらも玲美の隣を当たり前のように陣取っている久遠が気になる様子だった。

 それはかなり露骨に態度にでていたのだが、知らないのは玲美ばかりである。

「彼は?」

 久遠は玲美に朝田を紹介するよう促す。

「彼は朝田悠人あさだゆうとくん、私の同期なの。入団のときもお世話になってるの」

 久遠が頷くと前に一歩出る。

「僕は古輪久遠、玲美とは双子で僕が一応兄ってなっています。玲美がいつもお世話になっているようで」

「お、おにいさん!? 本日はお日柄もよく!」

「もう、何をいっているの?」

 兄という言葉に過剰反応した悠人に玲美はため息をつく。

「知らぬは本人ばかり、ねぇ」

 桐香がいつまでもやってこないので表へ顔を出す。

「朝田くん、お客人をいつになったら連れてきてくれるつもり?」

 桐香の目は笑っていなかった。少し怒っているようだ。

「すみません」

それに対して少し落ちこんだ様子を悠人は見せる。

「それじゃあ、そこのお店で話をしましょう。人払いはしてあるから私たちだけよ」

「僕もいいんでしょうか?」

「玲美さんの今後もあるから聞いておきたいでしょう? いいなら別にいいけど」

「いえ! 行きます!」

 悠人は前のめりになって主張した。とてもわかりやすい反応だと桐香は思わず笑みを浮かべてしまう。

「それにしても二人は兄妹って言われても、わからないくらいには似てないわねぇ。ひょっとして血が繋がってないとか?」

「だったら双子と主張する意味がありませんよね」

 久遠はムッとした表情になる。似ていないことを指摘されたから怒ったのではなく、身内であるかを疑われて不服意を表したのだ。

「ごめんなさい。でも、君がとても玲美さんを大事にしているのはわかるわ」

 するとなぜか玲美が顔を赤らめて内股になってもじもじはじめる。

「や、やめてください。あくまで私たちは双子ですから」

 そういう反応を見せるから悠人が不安になるのだと桐香は思うのだが、本人はまるで自覚がない様子だ。

「ま、とりあえず中で話しましょうか」

 そう言って案内されたのはハンバーガーショップであった。



 
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