ツいてるなんて聞いてない!

水無月

文字の大きさ
7 / 13

7「もっと強くして、平気?」

しおりを挟む
 あいかわらず眠いままだけど、俺はなんとか意識を保ちながら、悠斗くんの声に耳を傾けた。
 目を伏せてしまいそうになる中、近づいてきた悠斗くんの手が、俺の胸元をそっと撫でる。
「あ……」
 シャツの上からだけど、たしかに手の感触がして、ぼんやりしていた意識が少し覚醒した。
 てっきり、口頭で教えてくれるもんだと思ってたんだけど。
「すごい、まとわりついてるよ。胸とか、お腹とか、このあたりにも……ね」
 悠斗くんの手が、ゆっくり足のつけ根の方へと移動していく。
「ん……待って……」
「んー……? 興奮してきた?」
 ああ、悠斗くんの言う通りだ。
 これはまずい。
「やっぱり、玲矢は霊を感じてるんだと思うな」
「なんで……」
「自覚がないだけで、気持ちよくなっちゃってるから」
 気持ちいいんじゃない。
 心地いいだけだ。
 でも……いまはなんだか物足りない。
 いつもなら軋むベッドの音でいろいろ想像しながら、自分で慰めるんだけど。
 ……もしかして、俺がいつも興奮しちゃってるのも、音だけが原因じゃない……のか?
 霊がなにか……。
「悠斗く……」
「足りないよね? 俺が手伝ってあげる。さすがに生身の人間の方が、玲矢も気持ちいいだろうし……ね?」
 そう言ったかと思うと、悠斗くんは布越しに、俺の股間のモノをきゅっと掴んだ。
「んぅん!」
「うん……硬くなってる」
 嘘。
 なんで……?
 パジャマにしていたジャージのズボンを下着ごと悠斗くんにずらされる。
「俺っ……」
 大きくなっていたモノが、外気に……悠斗くんの前に晒されて、こんな状態になってしまっていたことに、いまさら自覚した。
いつの間に、こうなっちゃってたんだろう。
「いいよ。いいから……」
 なにがいいのかわからない。
 でも、まるで言い聞かせられているみたいに、いいのかもしれないなんて思えてくる。
「本当にいい体だね」
 いい体だなんて言われたのは、はじめてだ。
 恥ずかしい。
 恥ずかしいけど、やっぱり頭はぼんやりしたままだし、眠いし、気持ちいい。
 悠斗くんは、左手でズボンと下着を押さえたまま、右手で俺のモノを擦り上げていく。
「んんぅ……ん、ん……悠斗くん……俺……んっ……んぅっ……」
「気持ちいい?」
 いままで味わったことのない感覚だった。
 もちろん、自分でしたことはあるけれど、人にされるのははじめてだし、自分のそれとは全然違う。
「はぁっ……ん、気持ちい……ん……んっ!」
 なんで俺、会って間もない相手にこんなことされてるんだろう。
 されているというより、してもらっているって言った方が正しいのかもしれない。
 こんなこと、悠斗くんにさせちゃうなんて。
 申し訳ない気もしたけど、それよりいまは快感に身を委ねてしまいたい。
 悠斗くんはかっこよくて、優しくて、人気者で……悠斗くんの言葉を信じるなら、霊に憑かれてる俺なんかを受け入れてくれている。
 その上、わざわざこんな気持ちいいことまでしてくれているのを、拒んでしまうのはもったいない。
 こんなラッキーは、二度と起きないだろう。
 もっと……もっと味わいたい。
「んんっ……はぁっ……ん、もっと……」
 こんなこと、言うべきじゃないのに、ついせがむような言葉を口にしてしまう。
「ん……もっと強くして、平気?」
 ぼんやりした頭で頷く。
 悠斗くんは嬉しそうに笑ってくれていた。
 直後、絡みついた悠斗くんの手が、俺のを強く擦りあげる。
「んぅんっ! ん……はぁっ……ああっ!」
 思った以上に激しくて、腰がガクガク震えてしまう。
 少し涙が溢れて、声もうまく殺せない。
「はぁっ……はっ……あっ……んんっ!」
 いまさら、もう少し優しくして欲しいだなんて言いたくなったけど、もうそんな余裕もなかった。
「ああ……悠斗くっ……ううっ、あっ……ん、ああっ、俺……!」
「なに? 教えて?」
 優しい口調とは裏腹に、悠斗くんは力強く俺のを扱いてくる。
「ああっ、いくっ……あっ、ん、んんっ、いくっ!」
「いいよ。かわいいね、玲矢……」
 人前でイッていいはずがない。
 頭の隅でそう過ぎったけれど、それより気持ちよすぎて、イきたい気持ちが勝ってしまう。
「はぁっ……あう、んっ……あっ、あっ!」
「ビクビクしてるね。我慢しないで……イッて?」
 悠斗くんのその言葉が、まるで引き金を引いたみたいに俺から抵抗力を奪った。
「んぅっ、あっ……あっ、んっ、ああっ、んぅんんんっ!」
 大きく体が跳ねると同時に、悠斗くんの手でいかされる。
 脱力している場合じゃないのに、俺の体は、全然、動いてくれなかった。
「……いいよ。そのままで」
 悠斗くんの手には、俺が出してしまったものが乗っかってしまっていた。
 悠斗くんは、なんでもないことのように、それを近くのティッシュで拭う。
「あ……ご、ごめんなさい……」
「ん?」
「こんな……本当に……その……!」
「いいよ。俺からしたことだから。もっとって言ってくれたの、すごくかわいかったな」
「あれは、つい……」
 自分でもなんであんなこと言ってしまったのか、いまとなってはわからない。
「優しくしすぎちゃったね。次はちゃんと最初から強くしようか」
 次って、なんだろう。
 俺は、小さく首を横に振る。
「ダメなの?」
「ダメっていうか……わかんないよ」
「気持ちよくなかった?」
「よかったけど……やっぱり、強かった気もするし……」
 そもそも力加減の問題じゃない。
「じゃあ、ちょうどいいの一緒に探さないとね」
 また、うっとりした表情。
 この表情を向けられると、誘われているような気になってしまう。
 実際、誘われているのかもしれない。
 なぜだか断る気になれなくて、俺はなんとなく頷いた。

「玲矢はある程度、霊と共存できる体質なのかもしれないね」
 いつの間に分析していたのか、悠斗くんがそう教えてくれる。
「みんな気づいてないだけで、共存はしてるんじゃない?」
「そうとも言えるけど、玲矢は触れられても気持ち悪くなったりしないでしょ」
 気持ち悪くはなってないけど、そもそも触られている自覚もないというのが正しい。
「俺……触られてたんだよね? その……悠斗くんがしてくれたこと、霊にもされてたの?」
 恥ずかしいけど、それ以上に気になってしまう。
 悠斗くんは、少し考え込むようなそぶりを見せた後、口を開く。
「まったく同じことはされてないけど、性欲が高まるようなことはしてたかな」
 性欲が高まるようなこと。
 それが一体なんなのか、具体的にどういったことをされていたのか、悠斗くんは教えてくれなかった。
「俺……」
「いいよ。黙っててあげる。霊で感じちゃったこと」
 俺は悠斗くんが言うように、霊で感じたんだろうか。
 いまのは悠斗くんに触られて、感じたんだと思うけど。
「俺なら理解してあげられるから……ね」
 悠斗くんは、俺のなにを理解してくれているんだろう。
 それは、俺がまだわかっていないことなのかもしれない。

「悠斗くんは、どうしてこんなこと俺にしてくれるの? 普通、いくら霊に興味があるからって、ここまでしないよね?」
「普通じゃないからね。俺も玲矢も」
 悠斗くんは、たしかに普通じゃない。
 俺は?
 事故物件に住んでる時点で、普通じゃないってことだろうか。
「霊にモテてる玲矢のこと、すごく気になっちゃった」
「霊に……モテてる?」
「うん」
 あまり嬉しくない状態だけど、なにかついているのだとすれば、それはたぶんモテてるってことなんだろう。
 俺が大学でモテてる悠斗くんのことを、なんとなく知っていたのとか、意識してしまうのと同じなのかもしれない。
 あくまで悠斗くんみたいに見える人じゃないと、俺のこの状況は伝わらないし、なににモテるかは重要だけど。
「あの……絶対、人に言わないでくれる?」
「霊にモテること? それとも、事故物件に住んでて霊相手に感じたり、興奮しちゃったりしてること?」
「ど、どれもだよ。それに興奮したのは……悠斗くんが、触ったからだし……」
「そう?」
「ベッドの音だって、はじめから霊のしわざだってわかってたら、たぶん興奮しなかったよ」
「つまり霊のしわざだってわからないまま、なんとなく興奮しちゃってたってことだよね?」
 ……俺、なにか変なこと言ったかも。
 つまりはそういうことだ。
「もう……いろいろ全部、言わないで」
「うん。玲矢も言わないでくれる?」
「え……なにを?」
 悠斗くんが言われて困ることってなんだろう。
 もちろん第六感があることは、だれにも話すつもりはない。
 俺となにかしたことについても、俺の方が困るだろう。
 わからないでいると――
「霊にやらしいことされてる玲矢を見て、興奮しちゃったこと」
 悠斗くんは、俺の耳元に口を寄せて、囁くように呟いた。
「え……」
 なに暴露してんだ、この人。
「興奮……したの?」
「うん、しちゃった」
 それって、俺に興奮したのか、霊に興奮したのか、どっちなんだろう。
 どっちにしても、普通じゃない。
 もし俺なら……嫌な気はしないけど。
「ありがとう。いいもの見せてくれて」
「いいもの……」
 やっぱり、霊のこと……か。
 悠斗くんは、俺とは違う景色で、俺には見えていないものを見ている。
 否定する気はないけど、それしか見ていないんだとしたら……。
 それはちょっと、寂しい気もした。

 結局、悠斗くんがソファで、俺は床に毛布を敷いて寝ることになった。
 さすがにもうベッドで眠る気にはなれない。
 一人ならまだしも、悠斗くんの前でまた変な気分になっても困る。
 たぶんならないけど、意識しないためにも、今日、ベッドで寝るのはやめておいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―

たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。 以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。 ​「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」 トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。 ​しかし、千秋はまだ知らない。 レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

極度の怖がりな俺、ド派手な先輩とルームシェアが決まる

雪 いつき
BL
幽霊が怖い極度の怖がりな由井 明良(ゆい あきら)は、上京した翌日に、契約した部屋が事故物件だと知る。 隣人である鴫野 聖凪(しぎの せな)からそれを聞き、震えながら途方に暮れていると、聖凪からルームシェアを提案される。 あれよあれよと引っ越しまで進み、始まった新生活。聖凪との暮らしは、予想外に居心地のいいものだった。 《大学3年生×大学1年生》 《見た目ド派手な世話焼きバンドマン攻×怖がりピュアな受》

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

君と僕の関係は罰ゲーム

くすのき
BL
小学生の時、幼馴染の発した自分との関係性を聞いてしまった十都棗(とそなつめ)は、彼に頼らない人間になる事を決意して生きてきた。でも大学生となったら、まさかその幼馴染と再会し、しかもお隣さんになっていた。 彼は僕の事を親友と呼ぶが、僕はそのつもりはなくて……。 陽キャ✕陰キャ

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

「イケメン滅びろ」って呪ったら

竜也りく
BL
うわー……。 廊下の向こうから我が校きってのイケメン佐々木が、女どもを引き連れてこっちに向かって歩いてくるのを発見し、オレは心の中で盛大にため息をついた。大名行列かよ。 「チッ、イケメン滅びろ」 つい口からそんな言葉が転がり出た瞬間。 「うわっ!?」 腕をグイッと後ろに引っ張られたかと思ったら、暗がりに引きずり込まれ、目の前で扉が閉まった。 -------- 腹黒系イケメン攻×ちょっとだけお人好しなフツメン受 ※毎回2000文字程度 ※『小説家になろう』でも掲載しています

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

処理中です...