無自覚な感情に音を乗せて

水無月

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番外編「焦らしたくなっちゃった」(蒼汰×慧汰)慧汰視点

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 拓斗がいったいどんな配信してるのか、なにを実琴に聞かせたのか。
 気になって、聞き出してみたはいいけど……。
『はぁ……指、入れていい? ゆっくりほぐすから……』
 配信は、俺の想像の斜め上をいくものだった。
 女の子に人気だとは聞いてたし、実琴を意識させるための配信だってことはわかっていたけど、雑談配信か、女が好きそうなセリフを読んでるくらいのものだと思っていた。
 いや、女が好きそうなセリフには違いないんだろうけど。
 配信の中の拓斗いわく、即興BLらしい。
 こんなものをいきなり聞かされた実琴には、少し同情する。

 机に肘をつきながら、PC画面の中、色っぽい表情を浮かべる二次元キャラを眺める。
 どうやらこれの中身が、拓斗らしい。
 実写ではないし、身バレは……おそらくしないだろう。
 ただ、イヤホンから流れる音声は、たしかに拓斗の声だ。
 そもそも普段からエロい声してるのに、こんなやってる最中みたいに息を荒げて、喘がれたらたまったもんじゃない。
「エロすぎんだろ……」
 友達のエロい声を聞いてしまった後ろめたさや恥ずかしさみたいなものは、次第に薄れていった。
 それだけ、拓斗のセリフ読みがうまいのかもしれない。
 セリフというより、息遣い?
 まるで本当にしてるみたい。
 してないよな?
 1人でしてんのか?
 なんだか俺までその気になってくる。
「はぁ……」
 つい、ため息をつく俺の背後から、突然、頭をポンと叩かれた。
「う……!」
「慧汰、なに聞いてんの?」
 蒼汰だ。
 蒼汰しか家にはいないし、蒼汰以外、ありえないんだけど。
 突然すぎて、過剰反応してしまう。
「びっくりした……」
「やらしーもんでも聞いてた?」
 あながち、間違っていない。
 蒼汰は、イスに座る俺の後ろから、覆いかぶさるようにしてPC画面を覗き込む。
 拓斗のキャラは静止画だけど『やばい』とか『ドキドキ』とか、拓斗の声に対するコメントが、すごい速さで流れていた。
 蒼汰が俺の右耳からイヤホンを奪っていく。
「んー……ん? なにこれ……えっろ……」
「うん……拓斗の配信」
「エロすぎでしょ。やってんじゃん」
「いや、やってはいないよ。1人でしゃべってるだけ」
 相手の声はいっさいないし、すべて演技だ。
 とはいえ、いきなりこんな荒い息遣いを聞かされたら、最中の音声だと勘違いしてもおかしくはない。
 俺は一応、最初の挨拶から聞いてたし、そういうんじゃないってわかってるけど。
「拓斗、こんなエロい配信してたんだ……」
「声もだけど……音とか、エロいよな」
 舌が絡みつくような音だったり、肌がぶつかっているような音が妙に生々しい。
「それで? 慧汰……もしかして興奮してる?」
「いや……」
 否定しようと思ったけど、隠したところで、どうせ蒼汰にはバレてしまうだろう。
「ちょっとだけ……」
 素直にそう告げると、蒼汰はそれをたしかめるみたいに、右手でズボンの上から俺のを掴んだ。
「ああ……勃ちかけてる」
「ん……」
 撫でられる。
 そう思ったのに、蒼汰の手はスッと離れてく。
「蒼汰……?」
「なに?」
 なに、じゃなくて。
 勃ちかけてるって、確認したくせに。
 拓斗だけが理由じゃない。
 蒼汰と一緒にエロい音を聞いたせいで、興奮しかけてるのに。
「……しねぇの?」
「したいの?」
「うん……」
 左耳からは、あいかわらず拓斗のエロい息遣いが流れてきて、どんどんその気になってくる。
 蒼汰は、俺の右耳に顔を寄せながら、シャツの中へと手を潜り込ませてきた。
「ん……」
 両方の手が胸のあたりをまさぐったかと思うと、指先で乳首を押さえつけられる。
「はぁ……いいよ、そこは……あんまり感じないし……」
 そう伝えても、蒼汰は俺の言葉を無視をして、押さえつけた乳首を撫でていく。
「ん……」
 右も左も、丁寧にゆっくり撫でられるうちに、硬くなっていくのが自分でもわかった。
 硬くなってしまったものを転がされて、体が痺れるみたいにじんじんしてくる。
「はぁ……ぅ……ん……いいって……」
「いいって?」
「だから……感じ……ぁ…………感じない……から……」
「感じるけど、じれったいだけだろ」
 蒼汰の言う通り、じれったい。
 はやく、下も触ればいいのに。
 たまらずズボンと下着をずらして、自ら性器を取り出す。
 半勃ちだったそれは、もう完全に上を向いていた。
「蒼汰……ここ……」
「しないよ」
「なんで……?」
「なんか、焦らしたくなっちゃった」
 焦らしたいんだろうなとは思ってたけど、それでも、欲しがればしてくれると思ってた。
 いつもなら、してくれるのに。
「……しろよ」
「しない」
「なんで……」
 さっきの繰り返し。
 あいかわらず、蒼汰の指は俺の乳首を転がしたまま。
 もどかしいし、胸ばかり弄られるのは抵抗がある。
 普段、あまり蒼汰に対して恥ずかしいと思うことはないけれど、こればっかりは慣れそうにない。
 蒼汰は俺のシャツを脱がせると、さっきまで転がしていた乳首を、今度は指先できゅっと摘まんだ。
「んんっ!」
「見える? 慧汰の乳首、摘まめるくらい大きくなってる」
「はぁ……ぁ……あ……やだって……ん……そこ……ん……」
「感じる?」
「かんじな……はぁ……ん……ん……んぅんっ!!」
 摘ままれた乳首を、少し引っ張られた瞬間、まるで電流が走ったみたいに体がビクついた。
「あはは……。やだよね……乳首で感じちゃうの、恥ずかしいんでしょ」
 蒼汰がからかうみたいに、耳元で囁く。
「でも、全然隠せてないんだから、認めちゃえばいいのに……」
 やっと右手が胸から離れたかと思うと、蒼汰は、上を向く性器から溢れる先走りの液を、拭い取った。
「んんっ……」
「すごい糸、引いてる……」
 糸を引かせながら拭った液を、右の乳首に塗りつけられる。
「はぁ……あ……なんで……」
「だって慧汰……本当は乳首好きだろ」
 好きじゃない。
 そう思ってたけど、だんだんわからなくなってきた。
 蒼汰が言うように、本当は好きなんだろうか。
 ぬるついた右の乳首は、摘まめなくなってしまったのか、先端をひたすらぬるぬる擦られる。
「ぁ……ん……んん……ん……」
 左は、転がしたり摘まんだり、ひっぱられたり。
「はぁ……もう……いい。ん……んっ……いいから……こっち……」
 拓斗は、入れてるのに。
 拓斗の相手は、入れられてるのに。
 蒼汰は入れてくれないどことか、望むところを触ってもくれない。
「んっ……くぅ……」
 蒼汰を待っていられなくて、たまらず自ら自分のモノを擦りあげていく。
「んんっ……はぁ……はぁ……んっ……」
「ああ、自分で弄っちゃうんだ?」
「ん……ぅ……んっ……はぁ……蒼汰が……しない、から……」
「乳首で感じる慧汰、かわいいからね」
 感じないなんて、言ったところでもう信じてもらえないだろう。
 さっきからずっと、左耳からは行為中みたいなやらしい音がして。
 右耳は、蒼汰の熱っぽい息遣いを聞かされて、体がいつも以上に興奮しているみたいだった。
 乳首をひっぱられながら、ぬるぬる撫でられながら、右耳に舌を這わされた瞬間、体が跳ね上がる。
「ぁあっ……んぅんんっ!!」
 胸はたくさん弄られたけど、自分のモノは、まだ少ししか擦ってないのに、俺は白濁の液を吐き出してしまっていた。
「はぁ……はぁ……あ……」
 蒼汰は俺の左耳からイヤホンを抜き取ると、やっと俺の右手に代わるようにして性器を掴む。
「あっ……あ……」
「待ってたね。待ちきれずにイッちゃったみたいだけど」
 どうせイクまで、触らなかったくせに。
 イッてしまった直後のモノを、蒼汰が優しく擦りあげいていく。
「んんっ……! はぁ……あ……」
「残ってない? 出し切れた?」
 蒼汰の手に促されるようにして、少しだけ残っていた液が、ビュクリと溢れ出てきた。
「んぅん……ぁ……ん……はぁ……はぁ……も、全部……出たぁ……」
「じゃあ、いったん休憩する? 続ける?」
「あっ、ふぁっ……はぁ……あっ……!」
「言ってくれないと、続けちゃうけど」
 俺はなんとか首を横に振って、蒼汰の手を止める。
 せっかく触ってもらったけど、このままイッたばかりのモノを擦られ続けるわけにはいかない。
 蒼汰は俺の耳元で小さく笑いながら、そっと手を放してくれた。
「はぁ……はぁあ……ん……ふぅ……蒼汰、怒ってんの?」
「ん? 怒ってないよ。なにに怒るの?」
「……拓斗の配信で、興奮したから?」
 妬いてるのかって告げるのも、自惚れてるみたいで恥ずかしいけど。
「いいよ。あれは興奮する。そういうので興奮してる慧汰見てたら、いつもとは違う慧汰も見てみたくなっただけ。なに? 俺以外の男で興奮して、後ろめたくなっちゃった?」
 蒼汰は俺の顔を覗き込みながら、ニヤニヤ笑う。
「……おとなしく従って損した」
「従わせたつもりないけど。お詫びに次はちゃんと慧汰がして欲しいこと、してあげるから、ね? なんでも言って」
 結局、ちょっとしか触られてないし。
 なんか消化不良だし。
「言わなくても、しろよ」
 そう告げると、蒼汰は返事の代わりに唇を重ねてくれた。
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