きもちいいあな

松田カエン

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王都防衛編

130.1人5分…いや、さん、2分でいい

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 結果的に1人ほど、溺れかけて意識不明の重体に陥った兄弟がいたが、それもエリーアス様の尽力でなんとかなった。ある意味エリーアス様とランド様が原因なので、その辺りは少し複雑ではある。……私が説明遅かったせいかもしれない。
 死にかけた兄弟は恐縮して真っ青になっていたが、エリーアス様は優しく気を使っていた。ランド様の足元で土下座していた兄弟は、身動きを取らずに今も土下座したままである。ランド様の方がその兄弟から離れて、遠巻きに様子を伺っていた。

 緩やかな優しい笑みを浮かべつつもどこか引きつったままのエリーアス様に、完全に引いてるランド様。お2人の立ち位置から少し離れたところに、怪我のなかった兄弟たちがもこもこと密集している。
 ひそひそ話をしながら、抑えきれない好奇心を英雄お2人に向けていた。

 また1人兄弟が増えて合流していく。新しく来た兄弟はエリーアス様とランド様を凝視しながら、兄弟の輪に飛び込んで話を聞いているようだった。
 アッ、よく見たら群青騎士の兄弟もその中にいるではないか。久々に兄弟たちの輪に揉まれたことで、少しリラックスしているようだった。ランド様はその兄弟を気にしているようだが、足を踏み出せばその分だけ距離を空けられるので、手を出しあぐねている気配を感じる。

 私はといえば、そんな兄弟たちの輪とエリーアス様とランド様のちょうど中間のあたりにいた。兄弟たちの輪に近づくと、何故だかばらけて、また違うところでまとまるのだ。おかげで私もリンデンベルガーの騎士だというのに仲間外れを食らっていた。

「……おいっ、おいそこの……間の抜けた顔をしている兄弟っ!」
「顔など、みな似たような物だろうが」

 失礼な呼びかけに視線を落とすと、土下座したままだった兄弟が縋るような眼差しを私に向けていた。実際、瞳には涙がじんわりと浮かんでいる。

「頼むっ!こ、っこしが、抜けた……」
「しょうがないな……」

 どうやら土下座を続けたくて続けていたわけではないらしい。私が手を差し出すと、それを頼りに立ち上がり、よぼよぼ頼りない足取りで他の兄弟たちと合流していた。

「きら、っきらわれた……ドマニリア様に絶対嫌われた……」
「まだわからんぞ」
「そうだ、少し驚いただけかもしれない」
「いやドマニリア様は、強く正しく常識人なのだ。私のような奇行を行う者は嫌いに決まっている」

 土下座していた兄弟が今にも泣き崩れそうになりながら、他の兄弟たちに慰められている。そこにまたもう1人別の兄弟が飛び込んだ。私も混ざろうと近づけば、すすす……と輪が遠ざかり仲間外れにされる。

 なんなのだ。

 ひそひそと会話を続けていた兄弟たちが、終わったのか一斉に私を見た。その視線の強さに面食らう。

「そこの兄弟。ちょっと来い」
「今まで仲間外れにしていたのは誰だ」
「だってお前、群青騎士だろう。他の兄弟たちとは違う」

 次々に頷く兄弟に招かれて、私も輪に入る。もう1人いる群青騎士の兄弟はいいのか。いいのだろうな。改めて視線を向ければ、気が緩んだのか、違う兄弟の肩を借りて寄り掛かりながら、うとうとと半分眠りこけていた。
 口火を切ったのは、一番年長の兄弟だった。

「ツェーザル様に確認した。もう少し兄弟が増えないと任務が始まらないらしい」
「あと10人弱程度といったところらしいが、この空いた時間を有効活用したい」
「お前と違って、私たちからすればお2人は天上人。こんな間近でお会いできることなどほとんどないのだ」
「ゆえに、この僥倖を逃すのは、さすがに惜しい」
「だからな。お前に頼みがある」

 騎士の家系で皆恵まれた体形をしている方だが、それでも私が一番身長が高い。視線を合わせて会話をしようとすれば、必然的に私の方がしゃがむこととなる。次々に兄弟たちに畳みかけられて、いつの間にか私はその場に正座していた。
 何やら歯にものが詰まったようなやんわりとした言い方に、私は首を傾げた。

「つまり?」
「察しが悪い兄弟だな」
「緊張せずにお2人と話せる兄弟は、お前ぐらいしかいないだろう」
 そこにもう1人いるが……別なのだろうな。もう指摘する気すらない。

「だから、お2人と、……その、交流を持てる時間が欲しい」
「一生で一度きりだ。良ければお手を握らせていただきたい」
「少しで目を見てお話をさせてほしい」
「……ふむ?手を握って、少しばかりの会話をしたいと」
「私たちは人数が多いからな。1人5分……いや、さん、2分でいい」
「それを頼んできてくれ」

 それだけ言うと、さっさと行けとばかりにまた輪が離れていってしまった。どうしたものかと悩みつつ振り返れば、エリーアス様がほかの兄弟たちを気にしながら小走りで近づいてくる。

「とっても視線を感じるんだけど、何か僕たちにあるの?」
「それがだな……」

 立ち上がった私はエリーアス様と共にランド様の元へ向かい、兄弟たちから出ている要望を口にした。

「はぁ?握手して話したい?なんでだ」
 難色を示したのはランド様の方だった。なぜと言われたらごもっともな話だ。戦場で出会ったら、いちいち手を握り合って挨拶などしない。

「私の兄弟たちは、皆1人はどなたかの英雄に憧れているが、その方だけではなく、国のために命を賭していらっしゃる英雄の方々全員が好きなのです。だからお一人ずつお話がしたいと」
「時間もあるし、僕はいいけど」
「俺そういうのパス。柄じゃねえんだよ」

 あっさりと快諾してくれたエリーアス様に対し、ランド様は取り付く島もなかった。
 ちらりと横目に兄弟たちの集合体の様子を伺えば、皆が期待を込めた眼差しをしている。また1人思いつめたような顔で見守っている者もいた。さっきの土下座をしていた兄弟だ。周囲に励まされているが、落ち着きがない。……ランド様が一番の推しだったのだろうな。

「ご迷惑でなければお願いしたい。貴方に憧れている者もいるのです」
「つったってよお、別に群青騎士団のプロパガンダでもねえのに、なんで俺が」
「どぁに」

 ぶつぶつと呟いて眉間に皺を寄せたランド様が動きを止めた。その舌ったらずな呼びかけは私の斜め後ろから発せられていて、軽く振り返れば足を引きずりながら群青騎士の兄弟が近づいてきていた。

「おねがい?」
「うっ」
「ランド様、胸が痛むのか?大丈夫だろうか」

 下から見上げられて、ランド様が鎧の上から胸元を抑えた。何かの発作だろうか。心配する私をよそに、エリーアス様が肩を震わせて笑っている。ふっと目元を緩めると、私はエリーアス様に抱き込まれるように顔を寄せられた。背後で野太い悲鳴が上がる。

「クンツ、黙ってみてるといい。面白いものが見れる」
「え?」

 さらりと頬にエリーアス様の金髪が触れて、思わず赤面してしまった。エリーアス様は楽しそうに2人を眺めている。

「どぁに……だめ?」
「待てよ、俺だぞ?エリーならともかく、俺と手ぇ握って会話してえってやつなんか「わたしは、したいぞ?」」

 なかなかに押しの強い兄弟である。社交的なエリーアス様とは趣が違うランド様を落としにかかっている。
 エリーアス様が軽く笑いながら私に寄りかかってくる。やはりエリーアス様は良い匂いがする……。わけもなく鼓動が速くなるのを自覚した。おいちょっと、外野うるさいぞ。

「あのあたり、ほんとクンツと血が繋がってる感じするよね」
「……エッ?私あそこまで図々しくあざといことしていないぞ」
「……無自覚って怖いね」
「してな……してないぞエリーアス様!」

 何やら憐憫を催すような眼差しを向けられて、私は思わず肩を掴んで揺さぶった。また野太い悲鳴が上がるが、揺さぶられているエリーアス様は楽しそうだった。

「仕方ねえな。おらさっさとやるぞ」

 5分弱で陥落したランド様が興味なさそうにこちらに向き直る。ので。エリーアス様にも少し間を開けて並んでもらった。

「いいか。今回はお2人のご厚意でこの場を設けていただいたのだ。くれぐれも粗相のないこと「御託はいいから早くしろ」「時間がないのだぞ」」
 兄弟たちのヤジに私は肩を竦めた。むすっとしていると、年長の兄弟がぱんっと手を叩く。

「みな名鑑を読むときのように一列に並べ。はみ出したり抜かしたりするなよ。群青騎士の兄弟の言う通り、これはご厚意だ。名を汚すような恥ずべき行為は慎むように」
 ……似たようなことを言っているのにも関わらず、何故こちらはヤジが飛ばないのだ。納得がいかないぞ。

 首をひねっている間に、兄弟たちがそれぞれエリーアス様とランド様の前に並ぶ。我先に一番先に並ぶ者、他の兄弟の様子を見て並ぶ者。それぞれうっすらとだが個性が出る。

「ではエリーアス様、ランド様、お願いします」

 改めて頭を下げた年長者の兄弟は、迷いながらエリーアスの列の一番後ろに並んだ。
 複数人の兄弟たちから期待を込められた眼差しを向けられて、エリーアス様の笑みがやはり若干引くつく。ランド様は嫌そうに顔をしかめてらっしゃったが、隣にいた群青騎士の兄弟に促されて、手を差し出した。その手をぎゅうっと握る。

「インディ・リンデンベルガーです!お会いできて光栄です!英雄名鑑に乗ってるコラムが大好きで、いつも読んでます!」
「あーどうも……」

 熱烈な告白に面食らいながら、ランド様は気のない返事をしている。ああ、確かにあのコラムはいいものだ。ランド様の毒舌の中に、時折人情味が混じるのが溜まらない。

「あっあの、私はエドゥール・リンデンベルガーと申します。その、こうしてお話しできて、すごく嬉しいですっ」
「僕も嬉しいよ。ありがとうエドゥールくん」
「ぴ」

 エリーアス様の列では、笑顔で同意され、そして名を呼んでくれる嬉しさに1人目から1分と立たずに気絶した者が出た。2人目がエリーアス様のその破壊力に慄いて、すでに腰が引けている。

「えっあっ大丈夫?ちょっとクンツ、この子……!」
「大丈夫だ。大丈夫だから、エリーアス様には次の兄弟の相手をお願いしたい」

 気絶した兄弟を動揺したエリーアス様から受け取り、その辺りに放り投げておく。
 放っておいてもそのうち復活するだろう。我らは頑丈だからな。

「アイン・リンデンベルガーです!エリーアス様の筋トレ、参考にしています!」
「シャオル・リンデンベルガーです。あの、ドマニリア様っ激励を飛ばしていただいてもいいですか?」
「ゼノン・リンデンベルガー。エリーアス様とこうして視線を合わせられるだけで光栄です」
「ジェド・リンデンベルガーといいます。先ほどは足元で大変な無礼を働き申し訳ございませんでしたでも本当にドマニリア様のことをお慕いしていてたまらなくこうしてお会いできたことも夢のようです好きです本当に申し訳ないのですがまた睨んでもらっていいですがなんなら手に爪を立てていただいても嬉しいだけで「おまぇ!じかん!」」

 手を握って息継ぎなしに畳みかけている兄弟に、群青騎士の兄弟から叱責が飛ぶ。のに声が聞こえていないのか、私は慌ててその兄弟に駆け寄って、ランド様から引き剥がす羽目になった。群青騎士の兄弟では剥がせないだろうからな。
 2人と会話を済ませた兄弟たちはまたもこもことまとまって、エリーアス様の匂いがとてもよかった、やら、ランド様の目の下の隈が濃くて素敵だった、などときゃっきゃっしている。私が引き剥がしたジェドと名乗った兄弟などは、もう一生手を洗わないと豪語していた。

「ビクター・リンデンベルガーです。少し前の名鑑に載っていた、ゲーアハルト団長と腕相撲勝負で勝ったって話、本当ですか?」
「ジェフ・リンデンベルガーと申します!あの、『がんばって』って応援してもらえますか?」

 順当に短い会話を交わし、ときに手を握ったまま離れない兄弟を引き剥がし、晴れやかに満足そうな兄弟たちが増えていく後半、うるさかったざわめきが一気に消え去った。

「ツェーザル・リンデンベルガーだ。私とも手を握ってもらえるだろか」

 しわがれた声に、枯れた手足。顔に刻まれた皺の数が、年齢よりさらに年老いてみえる風貌の、私たち兄弟の中で1番の頂点。
 家長であるツェーザル様が、いつのまにか私たち兄弟に混じって並び、エリーアス様に手を差し出していた。

 先ほどまで左右に侍っていた中級貴族たちは少し離れたところで立ってこちらを見ている。その視線に嫌なものを感じた私は、わずかに眉間に皺を寄せた。
 魔肛持ちである群青騎士は、その手の熱の籠った視線には敏感だ。群青騎士の奴隷たちのように性行が任務の者ならいざ知らず、ツェーザル様の従者としてこの場にいるというのに不敬だぞ。おちんぽサイズも小さそうな小物のくせに。

「もちろんです」

 一度表情が固まったエリーアス様だったが、ひと際柔らかい笑みを浮かべてほっそりとした手を握る。するとツェーザル様は、今にも泣き出しそうなどこか年齢にそぐわない幼い表情を浮かべた。
 その表情を目撃できたのは、たまたま私がエリーアス様のそばに居たからだろう。エリーアス様は無言でぎゅっと両手で枯れた手を握り返していた。

「ありがとう」

 その感謝の礼には、万感の思いが篭っているように聞こえた。ゆっくりとツェーザル様が身を引き、エリーアス様の手が解けていく。
 ツェーザル様がそのままくるりと兄弟たちに向き直り、口を開いた。

「『これより任務を開始する』」

 魔力を帯びた言霊に、私は、私たち兄弟の意識は、深く闇の奥へと沈んでいった。


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