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12日目 式の後に授業があるのはおかしい!!

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夕焼けに染まる山中の中舗装された通学路を僕は歩いていた。当然、背中にリュックに両手に旅行カバンと普通のカバンという荷物は変わらず、汗をかきながら朝と同様に歩いている、ただ、一つだけ朝の時と違うところがある。それは一人ではいないことだ。隣には先ほど僕に思いっきり尻餅をつかせた張本人でもあるこの学園の生徒会長であり、これから一年間相部屋として生活を共にするパートナーでもある、八重樫さんが歩いていた。

ちなみに、保健室にいたもう一人の女子学生。僕と同級生に当たる吉良一美と名乗った彼女は、「一美って呼んでね!」と衝撃の相部屋発言があった後に、自己紹介を兼ねてウインクを僕の方に飛ばしたが、その直後に保健室に入ってきた担任の先生に怒られながら連れて行かれた。どうやら式の後の授業を放棄してここに来ていたらしく、事前に八重樫さんに密告されてきていた先生が出るタイミングを見計らっていたのだとか。

連れて行かれる寸前まで、式があった日に授業があるのはおかしいと異議を唱えていた。だが、そのために寮制度を整えているんだと反論されると何も言わずにそのまま潔く連れて行かれていった。僕はこの後授業に参加した方がいいのかと先生陣に尋ねたが、体調のことを考えて今日はゆっくりしろという命令を受け、身支度を整えて保健室を後にした。

そんなことがあって、八重樫さんと二人で寮まで戻ることになったのだが、彼女はこの道をもう歩き慣れていると言わんばかりにスタスタと中々の歩速で進んでいく。僕はそれに遅れないように必死に歩くのだが、なにぶん彼女は全く荷物を持っていないので一人だけ息を荒くしている状況に陥っていた。時折、彼女は周りの風景であったり、この学園で有意義に時間を過ごしていく方法などを教えてくれたが、生憎僕の耳に残ることは無かった。頭にあったのは、いつになったらこのくそ重たい荷物を置くことができるのだろうか、という低レベルな考えのみだ。

 それを表情で察せられたのだろうか。彼女は今まで何の躊躇いもなしに歩いていたところを急に立ち止まる。そして、僕の方をじっと見つめて・・・見つめるだけで何も口にしようとしない。一体何があったのだろうか。もしかして、僕がアホみたいにかきまくっているこの汗の匂いが気になるのだろうか? もしそうなら今すぐ消臭剤を全身に浴びたいところだが、そんなものを今は持ち合わせていない。一人焦る僕だったが、そんなことを気にもしないように彼女はゆっくりと口を開くのであった。
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