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13日目 思ったよりも普通?

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「もう着くから」

 それだけ!? 思わず心の中で盛大にツッコミを入れてしまったが、彼女は何も気にせずスタスタと再び歩き出した。呆気に取られしばしその場で停止していた僕だったが、置いていかれそうになっている今の状況に背中を押されて再び足を進めた。

時間にして5分ほど歩いただろうか。いや、彼女の隣で歩けるという一種の興奮剤があったことから時間の流れを誤認しているのかもしれない。現実だと、10分ほど倍の時間を歩いたかもしれない。急に開けた土地に出たと思うと、そこには——普通の寮が3棟建てられていた。

「え? 思ったより普通だ」

 この学園に入る学生もお金持ちばかり。加えて、山の土地をいくつも所有する学園側。そこに建てられている生徒が過ごす建物はどのような豪華絢爛なのかと胸を躍らせていたのだが、そこにあるのは至ってシンプルなよく街中で見かけるような形式の建物が並べられており、意図せず口から言葉が漏れる。

「普通って、当たり前じゃないの。一体、この寮に何を期待していたのやら」

 冷たく彼女にあしらわれると、そのまま2号棟と書かれた看板が携われた建物に彼女と共に中に入っていく。中の模様もシンプルとしか言えなかった。まぁ、寮の扉が自動扉だったので普通ではないのかもしれないが。入るとすぐに迎えてくれる大きなロビー。真ん中には誰か著名な人が作成したのだろうか、半身の彫刻が飾られている。そのまままっすぐ進むと自動販売機コーナーが隅にあり、上へとつながる階段とエレベーターが用意されていた。生徒が実際に暮らす部屋がるのはどうやら2階以降にあるようだった。

「軽くこの寮について説明しないとね」

 僕が辺りを物珍しそうにキョロキョロしていると彼女がその行動に気づいたのだろう。説明を買ってでてくれた。
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