ハルカカナタ

立花 律

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学生とは

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高校生とは、義務教育を終え自らの希望にて入学する、学び舎である。

故に、学生の本分は。



「勉強、テスト勉強。もう無理」



机に突っ伏しこぼす言葉も、すでに弱々しい。

俺の馬鹿。文系科目を放っておいたら、テスト目前で頓挫しそうになっている。




「うわ、メガネ。なにしてんの?」



小悪魔の声も、今は聞こえない。





ーーーーー

ーー



すっかり青葉が茂り、温かい陽気が続く。北部高校に入って最初の定期考査が3日後に控える今日。

放課後、国語の担当教員にこれまでやってきた小テストを突きつけられ、教室に戻ってきたところだった。


「で、なーにこのひどい点数」


「うるせー。おれの国語の点数だよ」


「言っとくけど!酷すぎるから!なにこの古文と漢文の読解問題。質問にすら答えられてないからね!」


「うるせー。こちとらなんとかしようとしてんだよ」


「なんとかねぇ。なんとかできてなければ、意味ないねぇ」



小悪魔が嗤う。

早く戻ってこい、篠原。
お前の管轄だろうにこの小悪魔は。




「ここ、レ点で読む順番変わる」


「え」


「だーかーらー、ここ。この部分が後になるから、設問で聞いてるのはここでしょ?」


「ちょ、ちょっと待て。もう一回」


「一回で理解しなよ。それ分かれば、こっちもわかるでしょ」


「えっと、こうだから。こっち?」


「そ。わかった?」



俺の前の、篠原の席に座り頬杖つきながらプリントを指す。
なんだこいつ。勉強できるやつか。



「というか、それ基本だから。できないとか、あり得ないから。定期考査3日前にそこ?お馬鹿すぎ」


「うるせー。そんなことはおれが1番分かってる」


「そのメガネはなに?飾り?」



メガネ=勉強できるはいかがなものか。

それこそイメージの押し付けだろうに。



「あ、春希!いた!」


「げ。図書館から追って来たの彼方」


「図書館に荷物広げて1時間も帰ってこないから。携帯鳴ってたよ。ほら」


「ん。ありがと」


「あれ、鈴木くんと話してるの。仲良いね」


「よ、篠原。お前の担当だろ、こいつ」


「彼方うるさい。仲良くないし。勉強できない可哀想なやつを助けただけ」


「また失礼なこと言って。鈴木くんごめんね」


「いいって、実際助けてもらったしな。あと君付けやめろよ。こっぱずかしい」


「えっと、じゃあ鈴木で」


「メガネで十分。もしくは学級長」


「お前なぁ。ま、なんでもいいけどさ」



佐山の荷物を持った篠原が、とすんと横の机に座る。

高身長の篠原は、手足も長い。
こちらに向けた足が俺の近くまで



「鈴木は、古典やってるの?」


「そうそう。文系科目からっきしできなくてさ。今、佐山に助けてもらってた」


「春希が?助けてくれたんだ。珍しいな」


「………彼方いい度胸じゃん」


「俺は逆に理系科目が出来ないから。春希に助けてもらってたんだ」


「お、それなら俺も助けられるかも」


「本当?春希飽きっぽいから、すぐ居なくなるんだ。今度困ったら聞こうかな」


「おう、聞いて。俺も文系科目聞くわ」



にこっと笑う篠原。

小悪魔とは違う、純粋な笑顔。



がたん、と。

机が揺れる。



「彼方、行くよ」




立ち上がった、佐山。

篠原が机に乗せていた自分のスクールバッグをひっ掴み、歩き出す。
おそらく帰るのだろう。




「ありがとな、佐山」


「ふん。赤点取って、補修でもすれば」


「春希、待って。じゃあね鈴木、がんばって」




がたん、篠原も立ち上がる。

教室の後ろにある扉に向け進む。



佐山はどうやら、もう廊下に出たらしい。




「あ、鈴木。春希はさ、多分仲良くしたいんだと思う」




「だから、覚悟しといてね」




「俺のことも、よろしくね」





佐山が見えなくなった頃、ぼそりと呟かれた言葉。

仲良く、したい?
それは初めて聞いた。


顔を上げればしたり顔の篠原。
こんな顔は初めて見た。



佐山のにたりとした笑顔に、すごく似ていた。












 
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