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春
小話 side.某女生徒
しおりを挟む桜の散り始めた頃。
私は、天使をみた。
ーーーーー
ーー
高校生になって、早2週間。
クラスにはそこそこ馴染めた気がする。
というか、現在がんばって馴染もうとしている。
クラスの女子の中で、すでにグループ化は進み、孤立していればそのまま3年間を終えることになるし、ヘタなグループに入ろうものならどうなるか想像したくもない。
そんな息の詰まる。
そんな、高校生活の始まり。
「ねぇ、これ落としたよ」
少しトーンの高い、男の子の声。
トイレからの帰り、廊下を歩いていれば後ろから声がかかり振り返る。
ミルクティー色の、背の低めの男の子。
少しだけ上にある顔を見れば、黒目がちな幼い顔立ちで。
むすりと、不機嫌そうな。
そんな顔。
「さっきから声かけてるのに、聞こえてる?」
「え?」
「だからさ、これ。トイレの前で落としてたよ。ハンカチ」
手にあるのは。
紛れもなく私の、リラックスしたゆるいネコが満遍なく印刷された。オレンジ色のハンカチ。
「あ、ありがとう、ございます」
「はいはい、どうぞ」
ネクタイが青色。
同じ、1年生。
手渡されるというより、押し付けられたハンカチ。
なんだろうこの人。
顔立ちと行動が相まって、ない。
「どうも………」
押し付けつつ通り過ぎていくその人。
ふわりと揺れるミルクティー色の癖っ毛が、窓から入る光を反射する。
あ。
ポケットに、あれが入っていたような。
「あの、これ」
通り過ぎて、3組の教室に入ろうとするその人を呼び止める。
手には白い、飴玉を持って。
「これ、お礼です」
「なにこれ。………ハッカ?」
白い、ハッカの飴玉。
友達にも不評なそれを。私は今、お礼の代わりにしている。
私としては、なかなか嬉しいお礼なのだけれど。
この男の子にはどう映るんだろう。
というか、ハッカ嫌いそうだな。
「き、嫌いならいいので、返し」
「え、やだよ。くれたんでしょ?」
3組の後ろの扉をくぐる。
にこりとも違う、少しだけふっと笑うような顔で。
こちらを、みた。
「ありがと」
なんだ。その顔。
すとん、と落ちた。
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