魔法学園最弱の俺が英雄に

結城 もみじ

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第十八話 お風呂

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 家の扉を開けると、最初に目に入ったのがミーニァの姿だった。
 何故かテーブルに肘突き立てるようにようにして、祈っていた。
 玄関からでも、祈っている声は届いていて『カケルさんが無事でありますように。カケルさんが無事でありますように……』とまるで何かの呪文を詠唱してるようだった。

 このままだと、何か大事になりそうだから早めに大丈夫と伝えるとするか。
 そう考えた僕は、ミーニァに『ただいま』と言った。
 だが、その声が届いてないのかミーニァは全くこちらを見なかった。

 うわーこれ結構な重傷な気がするんだけど。
 早く呪文詠唱の呪いから解いてあげないと。

 カケルはミーニァの方へ歩みよると、肩を軽くポンポンと叩いた。
 誰かが肩を叩いたのに気が付いたのか『ふぇ?今私は忙しいんです!』と俯(うつむ)いていた顔を上げた。そこに居た人物に驚いたミーニァは驚いて飛び跳ねた。

 「か、カケルさん!?何でここに居るんですか!?」

 「な、なんでって帰ってきたからここに居るんでしょ?」

 ミーニァは自分の頬をつねりだした。

 「こ、これは夢ですか?夢なのですか!?」

 か、可愛らしい仕草をするなぁ~。いや~なんか面白いな。
 こんな事を思ってると、ミーニァの目尻に涙が浮かんだ。

 「ゆ、夢じゃないから泣かないで」

 何とか慰める事に成功すると、ミーニァさんはニコッと笑った。

 「そ、そうですよね。遅くなりましたが、おかえりなさい」

 「うん。ただいま」

 その後は、ミーニァさんがお風呂の準備はもう済ませてると言っていたので、夕食の前にお風呂に入ることにした。
 浴槽を覗くと中には、疲労回復の効果がある花がぷかぷか浮かんでた。
 ミーニァさんなりに考えたことだろう。有り難く入らないと。

 カケルは体全体を浴槽のお湯で流し、頭を洗う用の石鹸を泡立て頭を洗った。頭の石鹸を流すと、次は体を洗った。これも体用の石鹸で泡立て、洗った。
 体に付いてる泡を全部綺麗に洗い流すと、顔に少し生えてるひげを軽く剃った。
 カケルも高校生。髭は生える年頃なのでやっぱり身なりはしっかりしておきたいのだ。

 全ての行程が終わると、待ちに待った花が浮かんでる浴槽だ。
 体が冷えない内に浴槽に入った。
 
 うわーこれは確かに効くなぁ~。
 疲れがお湯に溶けていくみたいだ~。
 あ~あ~ごくらく~ごくらく~。

 カケルは銭湯に入るおっさんみたいな事を言いながら、風呂を楽しんでた。
 だが、その楽しい時間とお別れを告げるように浴槽から上がろうとした時、脱衣所に居る彼女の声によって止められた。

 「カケルさん~気持ちが良いですか?」

 声の正体はミーニァだった。てか家に居るのは僕とミーニァだから当然だよな。
 少し戸惑ったが、『気持ち良いよ』と返事をした。
 すると!ミーニァから驚きの一言がぶっ飛んできた。

 「そうですか~。なら私も失礼しますね」

 「え?えええええええええ!?ちょ、ちょっとミーニァさん!?」

 カケルが注意しようとした時には、脱衣所と風呂場を繋ぐ扉が開かれていた。
 なんも迷い無く入ってくるって、この世界ではよくあることなのかな?
 いやいや。流石にそれは無いでしょ。なに考えてるんだ僕は。

 カケルは考え事をしながら、首をぶんぶんと回した。
 その姿を見て不思議に思ったミーニァはニコニコしながらカケルに近づいていく。

 近づいてくるのに気が付いた時、体が自然とミーニァさんに向けて背を向いていた。
 だって大事な所をタオルで隠してるけど、えっちぃ体で直視出来ないんだもん。しょうがないじゃん。
 胸はメイド服からはそんなに目立たなかったが、脱ぐと巨乳のカテゴリーにはいるぐらい大きかった。
 獣族特有の耳や尻尾もこうして見ればとっても魅力的に見え、綺麗だ。

 ダメだ。ダメだーー。
 十秒が限界だ直視出来る時間。

 「カケルさん。もしかして嫌でしたか?」

 やめてぇぇぇぇぇぇ。
 そんな悲しい顔しないでぇぇぇぇぇ。
 心が痛む。痛むよぉ。

 「い、嫌ではないよ。急に来て驚いただけだよ」

 ミーニァはパァーっと顔を明るくし、嬉しそうだった。

 チラっと様子を見たが、とっても嬉しそうだった。
 感情が表に出る獣耳や尻尾の喜んでいた。
 でも普通に混浴なんてこんなことするのかな?
 僕は疑問を投げかけた。

 「この世界では、混浴は普通なの?」

 ミーニァさんは僕が入ってる浴槽のお湯を浴びると、先ほどまで僕が使っていた石鹸を使い出した。

 「いえ。普通ではありませんよ」

 僕は変わらず背を向けたまま質問した。

 「じゃあなんで僕と入ってるんですか?普通は入らないのに」

 チラッとミーニァさんの方を見た。チラッとだ。
 するとミーニァさんは顔を赤くしてこう答えた。

 「カケルさんだからでしょうか」

 「僕だから?」

 「はい。何かカケルさんと居ると落ち着くんですよ」

 「そ、そうなんですか」

 それからは会話らしいものが無く、ただ水が放つ音しか聞こえなかった。
 ミーニァと少しだけ浴槽に入ったが、カケルはすぐさま脱衣所へ飛びだしてしまった。
 体を雑に拭き、部屋着に着替えた。
 ミーニァが上がってくるのを待ってる間夕食の準備をした。

 食器などを並べていると、ミーニァがお風呂から上がってきた。
 ほのかに漂う花の香りに、少しドキっとするがなんとか落ち着かせた。

 「さあ!夕食の時間にしましょう」

 「そうですね」

 今日は闘技大会があったからなのか、随分気合いの入った料理だった。
 どれも絶品だったので、ペロリと平らげてしまった。
 
 ミーニァも食べ終えると、紅茶を用意してくれた。
 熱々の紅茶を飲みながら、あの時何があったかを話した。
 これは、単純にカケルが話さないといけないと思ったからである。

 話を進めていると、『やっぱりそうなんですか』と聞こえた。
 その訳を聞いてみると、覚醒した時にエリン王女に力のことを説明されたと言った。
 カケルの話を聞いて納得すると、『ちゃんとカケルさんの口から聞けて安心しました』とほっとしていた。

 ミーニァは壁に掛けてある時計を見て、『お話はここまでにして、もう寝ましょうか』と提案してきた。
 確かに話が長かったから既に寝る時刻になっていた。

 「ミーニァさんはここに泊まらないんですか?」

 「今日はあちらで仕事がありますので、また今度で」

 あちらっていうのは王女様の所だ。
 まあ仕事ならしょうがないと思い、カケルはベッドに潜り込んだ。
 そしてミーニァが『お休みなさい』と言うと同時に明かりが消え、家から出ていった。

 疲れが溜まっていたのか、すぐに深い眠りに入った。
 こうして長く感じた一日が幕を閉じたのであった。
 
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