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完結編:『ゆうしゃの誓い、まほうつかいの旅立ち -さよならの向こうにあるもの-』
第17話 さよならの向こうにあるもの[1]
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春の朝。カーテンの隙間から、やわらかな陽射しが差し込んでいた。
なつみは目覚ましが鳴る前に目を覚まし、しばらくベッドの中で天井を見上げていた。
今日は卒業式。
胸の奥がそわそわして、眠気もどこかへ消えてしまっていた。
リビングに降りると、母が「今日はきれいに着替えようね」と笑顔で声をかけてくれた。
なつみは、母が用意してくれた紺色のワンピースに白いボレロカーディガン、胸元にコサージュをつける。
白いハイソックスと、靴箱の奥から出してきた新品のローファー。
髪は母に頼んで、やさしくゆるい三つ編みにしてもらった。
小さなピンクのヘアピンは、今は亡きお姉ちゃんの形見である。
胸元の小さな内ポケットには、そらたからもらったペンダントをそっとしまい込む。
その小さな輝きが、お守りのように心を落ち着かせてくれた。
「いってきます」と元気に玄関を出ると、
冷たい空気の中にも春の匂いがふわりと広がっていた。
道の端には、早咲きの桜がほんのりと色づき始めている。
学校の門をくぐると、
友だちやおうちの人たち、先生たちがそれぞれちょっぴり背筋を伸ばしている。
体育館には、カラフルな飾りと「卒業おめでとう」の横断幕がかかり、
みんなの晴れ着姿で会場は明るく華やいでいた。
教室に戻ると、先生が最後のホームルームを始めた。
みんな普段よりおしゃれな私服やワンピース、男の子はジャケットやシャツで着飾っている。
仲良しグループで写真を撮り合い、ランドセルに小さな花束や色紙をしまっている子もいた。
担任の先生が黒板の前で「みんなのこと、絶対に忘れません」と涙ぐむと、教室は一気に涙と笑いに包まれる。
証書が手渡されるたび、誇らしげな顔、寂しげな顔、
誰もが“最後の日”の重みをかみしめていた。
なつみも、先生から証書を手渡されて「よく頑張ったね」と頭をなでられると、
胸がじんわり熱くなった。
席に戻ると、恵美が小声で「なっちゃん、これからも絶対友だちだよ」と手を握ってきた。
「うん、私も」と返したとき、思わず涙がこぼれそうになった。
教室のあちこちから「ありがとう」「さみしい」「また遊ぼうね」の声が聞こえてくる。
アルバムや色紙、写真に落書き、子どもたちのにぎやかな声とすすり泣きが混ざり合う。
やがて、先生が「卒業おめでとう!」と笑顔で締めくくり、教室が大きな拍手で包まれる。
みんなランドセルを最後まで大事そうに背負い、友だちと写真を撮ったり、先生と一緒に手を振ったりしていた。
なつみは人波を抜け、窓際でそらたを探した。
すぐに、クラスの端でひっそりと立っているそらたの後ろ姿を見つける。
そらたも今日はベージュのシャツにネイビーのニットベスト、黒いパンツと新しいスニーカー。
髪は普段よりきちんと整えてあり、胸元には小さな花のバッジがついていた。
「そらた」
そっと呼びかけると、そらたが振り向く。
「なつみ」
言葉に詰まり、ふたりはしばらく見つめ合う。
なつみは少しだけ笑って、
「ありがとう、そらた。いろんなこと、一緒に冒険できて、本当にうれしかった」
そらたは驚いたように目を見開くけれど、すぐに静かにうなずく。
「ぼくも、なつみの勇者でいられてうれしかったよ」
なつみはペンダントにそっと指を添える。
あの小さな輝きが、いまはふたりの思い出と、これからの未来のきずなの象徴に見えた。
教室の窓からは、春の光がやさしくふたりを包み込んでいた。
なつみは目覚ましが鳴る前に目を覚まし、しばらくベッドの中で天井を見上げていた。
今日は卒業式。
胸の奥がそわそわして、眠気もどこかへ消えてしまっていた。
リビングに降りると、母が「今日はきれいに着替えようね」と笑顔で声をかけてくれた。
なつみは、母が用意してくれた紺色のワンピースに白いボレロカーディガン、胸元にコサージュをつける。
白いハイソックスと、靴箱の奥から出してきた新品のローファー。
髪は母に頼んで、やさしくゆるい三つ編みにしてもらった。
小さなピンクのヘアピンは、今は亡きお姉ちゃんの形見である。
胸元の小さな内ポケットには、そらたからもらったペンダントをそっとしまい込む。
その小さな輝きが、お守りのように心を落ち着かせてくれた。
「いってきます」と元気に玄関を出ると、
冷たい空気の中にも春の匂いがふわりと広がっていた。
道の端には、早咲きの桜がほんのりと色づき始めている。
学校の門をくぐると、
友だちやおうちの人たち、先生たちがそれぞれちょっぴり背筋を伸ばしている。
体育館には、カラフルな飾りと「卒業おめでとう」の横断幕がかかり、
みんなの晴れ着姿で会場は明るく華やいでいた。
教室に戻ると、先生が最後のホームルームを始めた。
みんな普段よりおしゃれな私服やワンピース、男の子はジャケットやシャツで着飾っている。
仲良しグループで写真を撮り合い、ランドセルに小さな花束や色紙をしまっている子もいた。
担任の先生が黒板の前で「みんなのこと、絶対に忘れません」と涙ぐむと、教室は一気に涙と笑いに包まれる。
証書が手渡されるたび、誇らしげな顔、寂しげな顔、
誰もが“最後の日”の重みをかみしめていた。
なつみも、先生から証書を手渡されて「よく頑張ったね」と頭をなでられると、
胸がじんわり熱くなった。
席に戻ると、恵美が小声で「なっちゃん、これからも絶対友だちだよ」と手を握ってきた。
「うん、私も」と返したとき、思わず涙がこぼれそうになった。
教室のあちこちから「ありがとう」「さみしい」「また遊ぼうね」の声が聞こえてくる。
アルバムや色紙、写真に落書き、子どもたちのにぎやかな声とすすり泣きが混ざり合う。
やがて、先生が「卒業おめでとう!」と笑顔で締めくくり、教室が大きな拍手で包まれる。
みんなランドセルを最後まで大事そうに背負い、友だちと写真を撮ったり、先生と一緒に手を振ったりしていた。
なつみは人波を抜け、窓際でそらたを探した。
すぐに、クラスの端でひっそりと立っているそらたの後ろ姿を見つける。
そらたも今日はベージュのシャツにネイビーのニットベスト、黒いパンツと新しいスニーカー。
髪は普段よりきちんと整えてあり、胸元には小さな花のバッジがついていた。
「そらた」
そっと呼びかけると、そらたが振り向く。
「なつみ」
言葉に詰まり、ふたりはしばらく見つめ合う。
なつみは少しだけ笑って、
「ありがとう、そらた。いろんなこと、一緒に冒険できて、本当にうれしかった」
そらたは驚いたように目を見開くけれど、すぐに静かにうなずく。
「ぼくも、なつみの勇者でいられてうれしかったよ」
なつみはペンダントにそっと指を添える。
あの小さな輝きが、いまはふたりの思い出と、これからの未来のきずなの象徴に見えた。
教室の窓からは、春の光がやさしくふたりを包み込んでいた。
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