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第一話 運び屋
13.「シズク」
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少女はシズクと名乗った。
先刻の現象を目の当たりにした今、目の前の存在を「少女」と呼んでいいのかは些か疑問であるが。
「ん、ヤマト、どうしました?」
そして何故か俺の名前を知っている。
名乗った覚えなどは勿論ない。
「ハァ…ひとまず何処から来たんだ、お嬢さん?」
「何処…どこかな?シズクは、ずっと眠っていましたので、難しい事はよくわかんないなぁ。あ、そういえば眠り姫って王子様のキスで目を覚ますんです。ろまんちっくだよね!」
会話が成立しない。
もう30分程同じ質問を繰り返しているのだがこの有様だ。
話題が横道に逸れて一周した後、回れ右したかと思えばもう一周し出す。
「ヤマトは、シズクの運命なんです。」
「運命?」
「…ううん、なんでもない。」
「あの…」
恐る恐る、といった様子で口を開いたのはシオンだ。
「さっきの話の続きなんすけど、ほら、ヤマトさんが信じないと思ったって話…」
そうだ。シズクに気を取られて忘れていたが、
俺が意識を失う直前の話を聞いていたのだった。
「えっと、結論から言いますけど、
その…シズクちゃん、でしたっけ。
多分その子が例の荷物の中身なんじゃないかなって。」
シオンの話はこうだ。
俺はフード男の放った鉄杭で例のキャリーケースごと串刺しに。
すると突然ケースが光を放ち、全長2mはありそうな怪物が現れ、フード男を圧倒。
そして例の二人組は退いた。
取り残されて途方に暮れていると、突如怪物の全身に亀裂が入り中から俺とシズクが倒れ込んできた…と。
「シオン…お前、頭でも打ったか?」
「打ってねぇよ!熱もないから!!
無言で体温計を差し出すな!!!
あーもう!だから言いたくなかったんっすよ…」
「いや、冗談だよ。」
「…真顔で冗談言わないでください。」
因みに俺達が眠っている間に事務所の掃除を一人で済ませてしまったらしい。偉いぞシオンくん。
臨時ボーナスくらいは出してやるか。
そしてその掃除中に気づいたらしいが、破損したケースの中身は空になっていたらしい。
消えた荷物の中身、突如として現れた少女。
この2つがイコールで繋がるかは定かでないが、ほぼ確定みたいなものだろう。認めたくはないが。
あの赤いコートの少女は言っていた。
荷物の送り先は、荷物が教えてくれる筈だと。
行き先は愚か、何処から来たのかすら曖昧な目の前の少女を見つめる。
「…」
「ヤマト、そんなに見つめられると…てれちゃう、です。」
シズクは顔を赤らめながら零す。
ぱっと見は普通の少女なんだがなぁ。
ちょっと…いや、だいぶ変わってはいるが…。
今目の前で赤くなっているこの少女が、あのどろどろと同一なのだとは思い難い。
しかし、バッチリこの目で見てしまったので否定しようがないのも事実だ。
「あの…ヤマトさん、この依頼どうします?
ケースは駄目になっちゃったっすけど…」
「放り出す気はないぞ。
中身が無事なら、俺は中身だけでも届ける。
現状、届け先のアテがないのが困りものだがな。」
謎の二人組、謎の化け物、消えた荷物の中身、
現れた少女…シズク。
問題は山積み。前途は多難である。
心なしか頭痛が酷くなってきた。
「一先ず本日は配達員兼社長の体調不良により運び屋は休業。シオン、張り紙出しておいてくれ。俺は寝る。」
「あっ、はーい。」
まぁ、慌てても仕方ない。
あのフード男と老紳士の二人組。
彼らなら何か知っているようであったし、シオンの話を聞く限りだと彼らはきっとまたやって来る筈だ。
一つずつ、手掛かりを拾い集めていけばいい。
「今はちょっと、疲れた…」
目前の問題には一旦蓋する。
明日からの自分に全てを託し、俺は再び意識を手放すのであった。
先刻の現象を目の当たりにした今、目の前の存在を「少女」と呼んでいいのかは些か疑問であるが。
「ん、ヤマト、どうしました?」
そして何故か俺の名前を知っている。
名乗った覚えなどは勿論ない。
「ハァ…ひとまず何処から来たんだ、お嬢さん?」
「何処…どこかな?シズクは、ずっと眠っていましたので、難しい事はよくわかんないなぁ。あ、そういえば眠り姫って王子様のキスで目を覚ますんです。ろまんちっくだよね!」
会話が成立しない。
もう30分程同じ質問を繰り返しているのだがこの有様だ。
話題が横道に逸れて一周した後、回れ右したかと思えばもう一周し出す。
「ヤマトは、シズクの運命なんです。」
「運命?」
「…ううん、なんでもない。」
「あの…」
恐る恐る、といった様子で口を開いたのはシオンだ。
「さっきの話の続きなんすけど、ほら、ヤマトさんが信じないと思ったって話…」
そうだ。シズクに気を取られて忘れていたが、
俺が意識を失う直前の話を聞いていたのだった。
「えっと、結論から言いますけど、
その…シズクちゃん、でしたっけ。
多分その子が例の荷物の中身なんじゃないかなって。」
シオンの話はこうだ。
俺はフード男の放った鉄杭で例のキャリーケースごと串刺しに。
すると突然ケースが光を放ち、全長2mはありそうな怪物が現れ、フード男を圧倒。
そして例の二人組は退いた。
取り残されて途方に暮れていると、突如怪物の全身に亀裂が入り中から俺とシズクが倒れ込んできた…と。
「シオン…お前、頭でも打ったか?」
「打ってねぇよ!熱もないから!!
無言で体温計を差し出すな!!!
あーもう!だから言いたくなかったんっすよ…」
「いや、冗談だよ。」
「…真顔で冗談言わないでください。」
因みに俺達が眠っている間に事務所の掃除を一人で済ませてしまったらしい。偉いぞシオンくん。
臨時ボーナスくらいは出してやるか。
そしてその掃除中に気づいたらしいが、破損したケースの中身は空になっていたらしい。
消えた荷物の中身、突如として現れた少女。
この2つがイコールで繋がるかは定かでないが、ほぼ確定みたいなものだろう。認めたくはないが。
あの赤いコートの少女は言っていた。
荷物の送り先は、荷物が教えてくれる筈だと。
行き先は愚か、何処から来たのかすら曖昧な目の前の少女を見つめる。
「…」
「ヤマト、そんなに見つめられると…てれちゃう、です。」
シズクは顔を赤らめながら零す。
ぱっと見は普通の少女なんだがなぁ。
ちょっと…いや、だいぶ変わってはいるが…。
今目の前で赤くなっているこの少女が、あのどろどろと同一なのだとは思い難い。
しかし、バッチリこの目で見てしまったので否定しようがないのも事実だ。
「あの…ヤマトさん、この依頼どうします?
ケースは駄目になっちゃったっすけど…」
「放り出す気はないぞ。
中身が無事なら、俺は中身だけでも届ける。
現状、届け先のアテがないのが困りものだがな。」
謎の二人組、謎の化け物、消えた荷物の中身、
現れた少女…シズク。
問題は山積み。前途は多難である。
心なしか頭痛が酷くなってきた。
「一先ず本日は配達員兼社長の体調不良により運び屋は休業。シオン、張り紙出しておいてくれ。俺は寝る。」
「あっ、はーい。」
まぁ、慌てても仕方ない。
あのフード男と老紳士の二人組。
彼らなら何か知っているようであったし、シオンの話を聞く限りだと彼らはきっとまたやって来る筈だ。
一つずつ、手掛かりを拾い集めていけばいい。
「今はちょっと、疲れた…」
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