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過去の思い出が同じ風景とは限らないようです。
思い出されるのは部屋の真ん中に置かれた次男の机と、窓のそばにひっそりと置かれたレグナスの机だ。
父親に言われ、レグナスと一緒に授業を受ける事にしぶしぶ頷いた次男がやった、せめてもの抵抗だった。
レグナスとしては授業中、次男に蹴られる心配がなくてよかったが、次男とレグナスの机を行ったり来たりする教師が大変そうだと感じていた。
分厚いレンズの眼鏡をかけたその教師の事をずっと、レグナスは「先生」と呼んでいた。
次男と先生の自己紹介の後に引っ張って来られたレグナスは、先生の名前を聞きそこない、改めて紹介される事もなかった。
次男のおまけのようなもので、あまり重要視されていなかったのだろう。
結果、次男が先生と呼ぶのをまねるしかなかったが、それで問題なく授業は進んでいったため、レグナスは気にする事はなかった。
レグナスは先生から貴族としての一般常識やマナー、読み書き、魔法と色々な事を教わった。
一個の事が終われば直ぐに次はこれだと、テキストを渡されひたすら解いていったように思う。
出来たかどうかの確認はされたが、特に褒められた記憶はなかった。
けれどレグナスは例え優しくされた事がなくとも、先生の事は好きだった。
貴族と言っても愛人の子であるレグナスには、専用の使用人がつけられたこともなく、家族はレグナスを疎んでおりそばにいる事はない。
貴族の広い屋敷の中で感じずにはいられなかった孤独感。
そんな中で、たとえ事務的ではあっても必ず相手をしてくれる先生の存在が、幼いレグナスにとっては唯一だった。
刷り込みのようなものだったかもしれない。
あの頃のレグナスは、親鳥の後を疑うことなくついていく雛鳥のようだった。
先生がそんなレグナスをどう思っているのかさえ考えず、ただついていけばいいのだとさえ思っていた。
そんな、無条件に後をついていくだけだったレグナスが、先生を親鳥ではないのだと理解したのは教育が始まって三年目の事だ。
ある時、そっと手を伸ばしてレグナスは先生の袖の端を握った。
何故手を伸ばしたのかを、今はもうレグナスはおぼえていない。
遠くに笑いあう家族を見てだったかもしれないし、出された課題が思いがけず早くできた時だったかもしれない。
見上げた先生の表情は眼鏡の所為でよく見えなかったが、口の端が歪んでいるのがレグナスには見えていた。
あっと思った時には腕が振られて、レグナスの手は外されていた。
レグナスを見ながら引かれた腕に感じた、確かな拒絶。
いつも淡々とした態度だった先生が見せた、たった一回のほころびに、幼いレグナスは理解した。
あくまでレグナスは生徒と言うだけで、先生と言う枠以上の事を望んではいけないのだと。
そして思い出した。
レグナスは先生の名前すら知らない事に。
パンっと何かが弾けてレグナスの中から消えていた。
その瞬間、レグナスにとって先生は親鳥ではなくただの先生になっていた。
先生にとっても、レグナスはただの生徒だっただろう。
屋敷を追い出されるまで、それは変わらず続いていたはずである。
だからレグナスは、先生――クロードに、こんなに再会を喜ばれるおぼえはなかった。
何か用があって此処に来たのだろうに、目の前で繰り広げられているオークションに見向きもせず、思い出話に花を咲かせては、クロードは隣に座るレグナスに微笑んでみせた。
淡々と授業をしていた先生と同一人物だとは思えない様子に、やはり別人ではないかと思うが、語られる思い出はクロードが先生である事を物語っていた。
「貴方が大きな箱に入っていた教材を取ろうとして、足がつかなくなった時は、まるで雪に頭を突っ込んだ子狐のようでした」
レグナスにとって全く思い出したくない思い出である。
どんなに頑張っても抜け出せず、近くにいるはずの先生に助けを求めたがしばらく放置されていた。
聞けばあの眼鏡の奥で微笑ましく思っていたようだが、それにしても放置されすぎていたと思う。
「試しにと書かせたレポートは秀逸で、置かれた状況によって人が持つ感情が高まったり、隔離された状況で心身に酷い負担を継続的に与えられる事で、負の感情が逆転するなどといった考えは非常に興味深かった。私は君のレポートを実証するために、小人を捕まえ実験しました」
そう言えばいきなり何でもいいからレポートを書いてみろと言われ、吊り橋効果やストックホルム症候群の事を曖昧に書いた覚えが、レグナスにはあった。
何故自分がこんな事を知っているのかと、当時は不思議に思っていたが、きっと前世の記憶があの頃から少しずつ思い出されていたのだろう。
計算も異様に早く、前世でやっていたそろばんが絶対影響していたと、今なら解る。
「まず二匹を一組にして、一組目には何もせず、二組目は水攻めをしました」
どうやら実験の様子を説明しだしたらしいクロードの声を、レグナスは序盤からもう聞きたくない気持ちでいっぱいになったが、クロードは止まらなかった。
「するとどうでしょう。一組目は変化がなかったのですが、二組目には次の日子供ができていました」
小人の繁殖力がネズミを越えていて恐ろしい。
だがそれは生存本能の可能性もあるのではないかと、レグナスは思った。
水攻めは明らかに恋のスパイスを越えた劇薬だ。
レグナスはレポートにそんな過激な事を書いたおぼえはなかった。
「けれど生き物は死を目の前にすると、子孫を残そうとする生存本能が働きます。なので次は君がレポートに書いていた通り、命綱をつけて高い所から落とすという方法を取りました。するとどうでしょう、次の日小人は子供を一気に二匹産んでいたのです。小人は相性がいいと子供が多くつくれると言われていましたが、最初は一匹だったところを見ると相性ではなく、恐怖からの動揺で起こった気持ちの変化が、子作りに関係している可能性が出てきました」
前世のバンジージャンプがまさかここで再現されてしまうなんてと、レグナスは自分が書いたレポートの所為で散々な目に遭っている小人に心の中で謝罪した。
そしてちょっと待てよと、実験の内容を嬉々として語るクロードの声を遮っていた。
「もしかして、誘拐や監禁などで被害者が加害者と長い時間を共にすると、被害者は加害者に好意や信頼を持ってしまう状態になる病気の事を発表したのは先生ですか?」
それはつい最近、ウルスから聞いたものだ。
聞いた時、まんまストックホルム症候群だとレグナスは思ったが、本当にそのままの可能性が出てきていた。
レグナスはあくまで、隔離された空間で心身に酷い負担を継続的に与えられる事で負の感情が逆転する可能性があるとレポートに書いたが、クロードはこれを確かめた可能性がある。
いや、ウルスが話していた限り、実証してしまったのだろう。
どうやったのかは絶対に聞きたくない。
「はい、君のレポートが元ですね。実証して提出はしました。あくまで君の考えに基づいたものなので、この病気をレグナス症候群と登録しようかと思っています。ただこれが広まってしまうと、誘拐婚を誘発する可能性がありまして、世間に広く発表はできない事になりました」
話を遮られた事を気にした様子もなく、逆によく知っていますねとクロードは言いながら、とんでもない事をしようとしていた。
発見者の名前を使うのはよくある事だ。
しかし絶対にやめて欲しい。
まだ病名が登録されていないのなら、名前を考え直して欲しいとレグナスはクロードにお願いした。
誘拐婚と言うパワーワードは無視することにした。
「君が嫌なら仕方がありませんね」
やけにあっさりと引き下がったクロードに、裏があるのではないかと思いつつも、一応の了承をもらえた為に、レグナスはほっと息を吐いた。
そして小人実験の話を再開させないために、少し気になっている事を聞いてみる事にした。
「先生は、今はあの眼鏡をかけていないんですね」
レグナスにとって先生のトレードマークと言っても過言ではなかったぐるぐる眼鏡。
レグナスは一度としてそれを取っている先生の姿を見たことはなかった。
当時はまだBLゲームの事を思い出していなかったとはいえ、素顔を知っていれば先生が攻略対象である事が、思い出した時に分かっただろう。
「あれは虫よけと言いますか、あの眼鏡をかけていないと、生徒の親に身体の関係を求められる事がありましてね。それが嫌であれをかけていたんです。当時は研究費用の為に、君の他にも臨時の教師をやっていましたから、お金を払えば私が応じると勘違いしている方もいました」
視力が回復したという明るい理由ではなく、意外にも俗っぽい理由でレグナスは驚いたが、攻略対象なだけあって、クロードの見かけはいい。
そんな誘いがあってもおかしくはないと、レグナスは納得した。
ぐるぐる眼鏡は呪われているかと思うほどダサくて、どんなにイケメンでも台無しにしてしまう効果があるのは、前世でも今世でも変わらぬ事実だ。
レグナスは前世でぐるぐる眼鏡を漫画の中でしか見たことがなかったが、そう思った。
すると話題に出したからだろうか、今まさにオークションでそのぐるぐる眼鏡の競りが始まっていた。
あれはまさかとレグナスが指をさせば、クロードは国の研究員として認められた為、教師をする必要がなく不要になったからと言った。
容姿を隠す効果のある眼鏡だと、思いのほか値がつり上がっている。
「教師でなくなっても、先生なら近づいてくる人はいるでしょうに、手放してしまっていいんですか?」
「今の私に無理やり関係を迫る人はいませんし、どれだけ溜まっていても、私は馬鹿の中になんて出したくないので、迫られてもモノが勃ちませんから大丈夫です」
レグナスは今何か凄い事を聞いたような気がして、思わずクロードを見た。
クロードもレグナスを見ていた為に、視線が合ってしまい、外すタイミングを逃しそのまま見つめ合った。
「レグナス、貴方は私が一線引いていた事に気付いていたでしょう」
それは問いではなかった。
ただの確認だと、レグナスは答を返さなかった。
「それが、貴方を生徒としてしか見ていなかったからだとか、疎んでいたからと思っているのなら、それは間違いです。逆なんです。私は貴方を好ましく思い過ぎていたから、一線を引いたのです」
レグナスはいつの間にか、クロードに手を握られていた。
オークションで張り上げられる声が、何処か遠く感じるほどに、クロードの気配が濃くなっているようにレグナスは感じた。
クロードは研究内容の時のような、まくしたてる口調ではなく、ゆっくりとレグナスに語った。
受け持ったどの生徒よりもレグナスは優秀で、そして可愛かった事。
本当はレグナスが13歳の時にはもう、資金の為に教師をやる必要はなかった事。
けれどレグナスを育てたくて続けた事。
ずっと、ずっと、レグナスが成長するのを待っていた事。
「一線は、幼い貴方を壊さない為に、私が自分で引いた戒めのようなものです。私の態度は、子供に優しいものではなかったでしょう。ですがそうまでしないと、私は想いを抑えられそうになかった。不器用な先生で、すみません」
謝られてもそれを許す術が、レグナスにはなかった。
確かに寂しいと思った事もあったし、拒絶を感じて泣きそうにもなった。
でも世の中はそう言うものだと、レグナスは思っていたし納得もしていた。
だからクロードが謝る必要はない。
同時に、クロードの言葉をレグナスが最後まで聞く必要がないと言う事でもある。
黙って聞いていたが、語られたクロードの想いを、レグナスに受け入れることはできないだろう。
レグナスは離れるために腕を引いた。
それはクロードが袖を握る幼いレグナスを振り払った力よりも強い筈なのに、クロードの手は離される事はなかった。
逆にだんだんとクロードの方へ引き寄せられていって、レグナスは手を離さないクロードに苛立った。
クロードはレグナスの腕を振り払ったくせに、自分がレグナスから振り払われる事は許さない。
あの時欲しかったぬくもりと同じものを、今も求めていると思ったら大間違いだ。
レグナスはもう、子供ではないのだから。
「先生、離してください」
レグナスの声は冷たかった。
しかしクロードはそれが嬉しいと言わんばかりに笑った。
「嗚呼…本当に、大きくなった。秀でたところなんか何もない、出来の悪い次男なんかの教師で居続けたのは、君がいたからだ。15歳になったらすぐに攫おうと思っていたのに、糞なあの長男の所為で君はいなくなってしまった。ずっと探していたんです。今日会えたのは運命ですね」
奇しくも、長男が不祥事を起こしたのはレグナスが15歳になったばかりの時だった。
それが無ければクロードはレグナスを攫う気であったらしい。
タイミングが良かったと、レグナスはそう思う事にした。
レグナスがそんな事を思っているなんて、夢にも思っていないだろうクロードは、引き寄せた手首に唇を落とした。
そして次は手の平に、何度も何度もキスをした。
キスをする場所で意味合いが変わる事を、レグナスはクロードから教えられた。
これは社交界に出た時、間違った場所にしない為だった。
レグナスは勿論それをおぼえていたが、知らないふりをする事にした。
こういった時にと教えられた断り方も、あえて使おうとは思わなかった。
「先生、嫌いになっていいですか?」
今のレグナスを育てたのは、間違いなくクロードだろう。
初めはレグナスを煙たがっていたセリアンが、考えをかえる程の出来だった。
それを自慢に思ってくれるなら、こんなに嬉しい事はない。
レグナスはクロードに認められたくて勉強を頑張っていたようなものなのだから。
レポートの事だってそうだ。
曖昧なお題で書けと言われて、何を書いたらいいのか解らない中、無意識に前世の知識まで引っ張り出して必死になって書いたのだ。
他の勉強が確認されるだけだったのとは違い、それには評価がつけられた。
レグナスは自分の事ながら、何て健気な子供だったのかと思う。
相手をしてもらえるのがクロードだけだと分かっていた。
レグナスはただの生徒と先生の関係だと理解して尚、それを失いたくはなかったのだ。
それこそクロードは攫おうと思えば何時だって、レグナスを攫う事が出来ただろう。
おいでと手を差し伸べられただけで、レグナスは喜んでついて行ったに違いない。
だがそんな過去は存在しなかった。
幼いから、想いの捌け口とて壊してしまいそうだからと、道徳にかこつけて一線を引いて、一番縋りたかったあの頃のレグナスを突き放したのはクロードだ。
そのくせ成人したら、それら全て許されると思っているのだから、レグナスは可笑しくてしょうがなかった。
これは不器用とは言わない。
下手糞と言ったほうが正しい。
レグナスがもし、今の確かな言葉を何一つ言わない告白まがいの言葉に頷けば、馬鹿の中には出したくないと明言するクロードは、たちまちレグナスに対する興味を失ってしまうのではないかと思うほどだ。
出来がいいと言いながら、クロードはレグナスを馬鹿にもしているのではないだろうか。
でなければ、クロードはレグナスを本当は好意があったのだと、今更な言葉でなびく様な人間に育てたおぼえがあるのだろう。
あんまりだと、思わず嫌いになってしまいそうで、レグナスは素直にそれを口に出していた。
そしてそれは効果的な言葉だったのだろう。
キスは止まった。
しかしまだ手は離される事はなかった。
「クロード様、手を、離していただけますか?」
レグナスはあえて名前を呼んだ。
一度も名乗られる事がないまま、レグナスはクロードの名前を、ある日ペンに書かれているのを見て知った。
クロード=アーリアスと言うフルネームは、前世の記憶にキャラクター設定があったから知っているだけだ。
きっとクロードは名乗っていない事を自覚していない。
忘れているだけだろう。
だが考えてみてほしい。
もし、クロードがちゃんと名乗り、いくらでもあった授業の時間の中でレグナスの将来を一度でも心配して声をかけて、クロードの所へ行くという選択肢を欠片でも与えていたのなら、町の外へ放逐されたレグナスは、その時クロードを頼ったかもしれないと言う事を。
そしてそれが叶う日なんてなかったと言う事を。
先生から名前に言い直した意味を考えろという、レグナスの真意はきっとクロードには伝わらない。
精々が、今度はレグナスから一線を引かれたと感じるだけだっただろう。
しかしそれで十分だったらしい。
クロードはレグナスの手を離した。
「間に合ったかな?」
「かろうじて」
その言葉のまま、まだレグナスはクロードをかろうじて嫌いになりはしない。
9歳から15歳になってすぐまでの間、レグナスにとってクロードが先生であったことは変わらない事実だ。
前世の記憶と言うイレギュラーなものがなければ、それこそレグナスにはクロードに与えられた知識が持つものの大半である。
知識は役に立つ財産だ。
それを与えてくれたクロードに持つ感謝の心は、下手糞な光源氏計画に感じた不快感よりまだ上回っていた。
「それは良かった、君に嫌われたら死んでしまう」
「大袈裟ですね」
「いや、嘘ではないよ、君にしか勃たないんだ」
「その言葉が、好意を伝える言葉に適していると思っているのなら大間違いです」
「拒絶を伝えるのに、効果は抜群なんだけどね」
「逆にすればいいという物ではありません」
「死を感じて種を残そうとする生存本能に等しい本能で、私は君を求めているのだから、これ以上ないほど的確な言葉だろう」
レグナスは困った。
どうしよう、これはレグナスを馬鹿にしている訳ではなく、クロードにとってこれが本気の愛の告白の可能性が出てきてしまった。
恋愛が下手糞すぎる。
マッドサイエンティストだからと言ってこれはない。
もしかしたら童貞の可能性もあるんじゃないかと、レグナスは思った。
同時にこれをつつけば藪から蛇ではなく、クロードのモノが出てきてしまうかもしれないと下品な事も思ってしまった。
アレギースとの関係で自分も擦れたものだと思いながら、レグナスはクロードの言葉には答えずに視線を逸らした。
逸らした先で、眼鏡が何時の間にか落札されていて、次の品物の競りが始まっていた。
幾らで終わったのかを見逃してしまったと、少しだけ残念に思いながら、レグナスは立ち上がった。
「行ってしまうのかい?」
「まだ用事がありまして」
嘘ではない。
アレギースを捜すためにやってきて、それが果たせなかったのだから、レグナスは次の場所に移動する必要があった。
「ではこれを最後の別れにしない為に、一度抱き締めても?」
レグナスは少し考えた後、座ったままのクロードを自分から抱きしめた。
身長差があるからか、ちょうどよくクロードはレグナスの腕に収まった。
何にせよクロードとの別れは突然で、次男のおまけで――と言うかクロードにとって次男の方が本当はおまけだったようだが、レグナスにも色々な事を教えてくれた事に、何の感謝も伝えられなかった事を、レグナスは少なからず悔やんでいた。
これで少しは伝わればいいと、レグナスはクロードの希望をかなえる事にした。
「会えたことは嬉しかったです」
「私の想いは嬉しくなかったらしい」
「今の先生は知らない人のようです」
「眼鏡は売らないほうが良かったかな?」
「いえ、見た目だけではないので…」
そしてそれ以前の問題もあるのでとは心の中だけにして、クロードの手が背に回りきる前に身体を離し、「では」と言ってレグナスは歩き出した。
振り返る事のない背に、クロードは「また」ともう届かない声をかけた。
「…発信機だったかな?レポートで見て、気まぐれに作ったものだけど、まさかこんなに早く使う機会があるなんて、思っていなかったな…」
レグナスはレポートにどんなことを書いたのかを、全て記憶している訳ではない。
当時、漏れ出る記憶に振り回されながらがむしゃらに書いたせいもあるだろう。
だからその中に位置特定や、離れた場所から音を拾うものなど、レグナスとしては前世の探偵がつかうものとして書いたつもりのものが、ストーカーと言い換えても成り立つようなものであるという事に、考えが及ぶことはない。
レグナスのレポートは色んな危険性を孕んでいる。
そしてそのレポートは何一つ欠けることなく、クロードの宝物として保存されている。
保存されるだけならよかったが、問題はそのレポートを実証も、再現もできてしまう人物の元にそれがあると言う事である。
ウルスに病人扱いされる羽目になったストックホルム症候群の事もそうだが、レグナスは昔の自分のレポートが原因で、クロードから逃れられていない事に、まだ気づいていなかった。
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