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千秋視点3
しおりを挟む「「悠暉?」」
あわてているような悠暉の声が微かに聞こえ、リビングの扉を開け電気をつける。
「待って、電気つけちゃだめ」
そう聞こえてきたが、タイミングが同じで付いてしまった。その時、ソファーの後ろに隠れる人影が見えた。千春に目配せし、お互いに頷き、足音立てずにゆっくりと悠暉に近づいて行く。
「悠暉」
そう、扉付近から声を掛けているように聞こえる大きさで千春が悠暉の名を呼ぶ。
「えっと、ちょっと今はまずいと言いまするでしょうか」
動揺しているのか、言葉遣いが可笑しい悠暉。
「悠暉」
今度は俺が同じように声の大きさを調整して声を掛ける。もう悠暉の傍の近くにおり、下を向き、袖で何度も顔をふく悠暉が見えていた。浅く呼吸をしながら、普段通りの声を出そうと必死に取り組ろうとしている。
「今は、合わせるお顔が無いと言いますか、朝までまってくださいましな」
「「駄目だよ。悠暉」」
「え?」
声の近さに驚いたように顔を上げた悠暉。眼も鼻も赤く染まっていた。その瞳から、涙があふれていた。いつから、泣いていた。千春と共に悠暉をソファーの後ろから抱え出し、ソファーに腰掛け、俺の右足と千春の左足の上に乗せる。突然のことにキョトリと瞬きをした悠暉の涙は止まったようだった。
「「どうした、何かあったのか?」」
千春と二人で悠暉の頬を包み涙の痕を拭う。
視線をさまよせ、取り繕うように笑う悠暉をじっと見つめる。何か言おうとして口を開けた悠暉は俺達と視線が合うと、口を閉じ、眉を下げた。
「穴があったら入りたい程の話なんだけどね。
慣れていたはずなんだ。お父さんと二人で住んでいた時はよくあったんだよ。一人で、過ごす事なんて、朝飯前だって言えてしまうほど、余裕になっていたんだ。逆にお父さんがさみしがるほどだったのに、耐性が出来ていたのに。二人が居なくて、さみしくて、本邸の人達が羨ましくて、恨めしくて、土日だよ。二人に甘える気満々だったのに、色々な、のに、のに、が浮かんで涙が出てきて。あんだけ慣れていたはずなのに、二人がいないと、さみしくて駄目だった。高校生なのに恥ずかしいや。こんな義弟でごめんね。帰ってきてくれて嬉しい。ありがとう。おかえりなさい。千秋君、千春君」
恥ずかしそうに照れくさそうにそして嬉しそうにはにかむように笑う悠暉に、腹の底から奥から押し寄せる欲望と愛しさ、強く抱きしめたいと思いに駆られ、動き出した手は
「きゅ、ぐーーーーー―」
と鳴った悠暉の腹の虫にとどまった。
危なかった、湧き上がる感情のまま抱き締め、押し倒してしまう所だった。同じ体制で止まる千春と視線を合わせ苦笑する。
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