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悠暉と祖父母と冬休み 千春視点
しおりを挟む一度、休憩をはさむため、陸に戻って来た。そこで出される悠暉の手料理に舌鼓をうつ。
「「うまい」」
千秋とそう口にしていた。
「そうだろう、そうだろう。ハルアキの料理はどれもうまいんじゃ。この煮つけも唐揚げも最高じゃ」
そう、リン爺が嬉しそうに笑っていた。
大量に釣れていた魚やイカを自分たちが今から食べたい分と、持って帰る分を取ると海に逃がして、持って帰る分は自分たちで下処理をする。釣りも魚を捌くことも初めての経験だった。
初めてと言えば、祖父母と何かをするのも、そうだ。
悠暉に釣ったイカを渡し、リクエストをしてできた料理を頬張っているリン爺とみっちゃんを見る。
いつも感じている威厳が無くなり柔らかな表情をしている祖父、祖母、というか此処にいる方々、こういった時間がこの人たちにとって癒しの時間になっているのだろう。少年、少女のように笑い、皆、楽しんそうだ。
「「ハルアキ」」
俺達以外と楽しそうに話している悠暉を呼ぶ。爺さん、婆さん方々とは言え悠暉を取られるのは癪に障る。
心が狭いことは自分でもよく分かっているつもりだ。
おやおやとニヤつく爺さんたち、あらあらとニマつく婆さんたちに、ほんの少しイラっとした。
ハルアキ、悠暉のそのあだ名は気に入っている。悠暉が俺達のものみたいに思えるからだ。悠暉は此処にいる全員のリクエストに全て応え、手際よく完成させて、渡していく。どれもこれもが旨そうで、みんなで囲んでそれらを分かちあう。お酒を持って来ている人も多く、悠暉に熱燗にして貰っていた。
本当、悠暉は人を喜ばせる天才だ。俺達に呼ばれた悠暉はお盆にイチゴタルトとコーヒーが入っている紙カップを乗せてこちらにやってきた。そのタルトは悠暉が生地作り、手作りのクリームを凍らせ持って来ており、合流した際に、爺友の夫人、りっちゃんから、頂いたイチゴを先程、了承得て洗い、生地の上に飾りつけをしたものだ。
そのりっちゃんが、前回、会った時に、久しぶりにハルアキ君が作ったタルトが食べたいと言っていたのを悠暉は覚えていて用意していたらしい。
りっちゃんは、毎回おいしそうな新鮮な果物を持って来ては、美味しかったのよ。ハルアキ君にもお裾分けと言って、渡してくれるそうで、だから、悠暉は生地とクリームだけを用意して持って来ていたというわけだ。
朝からずっと、キッチンで作業していたのは、夜食のおにぎりやタルト生地を作る為だったのか。おにぎりの中の具材は、バリエーションが多く、何が当たるのか皆それぞれ楽しみに手に取り、頬張っていた。どれも、美味しく、先ほど、出来上がった魚のみそ汁にも、煮つけにも唐揚げにもすべてに合っていた。
「そう、ハルアキ君が作ってくれるこの生地に合うと思っていたのよ、この果物。うれしいわ」
そう言って、三つあるタルトのホールの内、一つの半分を嬉しそうに、りっちゃんは食べている。残りはみんなにいきわたるように悠暉が切り分けて配っていた。
そこら中から賞賛の声が上がる。
「うまい、うますぎる」
そんな声が聞こえるたび、綻ぶ口元を意識して引き締める。
【ハルアキの料理はどれも美味いんじゃ】そう言っていたリン爺、俺達の父方の祖父を思い出す。知っているよ。
俺達はいつも悠暉の料理を食べている。そう心内で零し、千秋と共に笑い合う。
「シユウ君、シュン君、お待たせ。はい、イチゴタルトとカフェオレだよ」
そう言って、ごく自然と俺達の間に座る悠暉に、リン爺とみっちゃんは目を見開いて驚いていた。
それはそうだろう。俺達の間に誰かが入り込むことを許したことはなかったから、両親でさえも。悠暉は特別。俺達のだ。
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