野獣公爵の執愛

ゆき真白

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第三章

十四※

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「もっ、やだ……! もうやだぁっ――ぁあっ」
「こんなに濡らして説得力がないな、シーラ」
「んんんっ」

 びくびくと体が跳ね、視界が揺れる。酸欠で頭はぼうっとし、溢れる唾液を飲み込むことすらできない。
 あれからどれほどの時間が経ったのか、何度絶頂を迎えたのか、もうわからない。
 手足が鉛のように重く、身じろぐのすら億劫だが、隘路に収まった指が再び動き始めたのを感じ、シーラはその腕を掴む。

「もうやだ! 挿れて!」
「そんな風に拒絶されるのは心外だな、シーラ。お前が返してるだけなんだが」
「わたしは一回だけだったもん! こんなにたくさんじゃないっ」
「普段、俺が一度イくまでにお前は何度イく? 俺は普段通り、一度イかされた分、お前をたくさん悦くしてるだけだが?」
「だったら挿れてくれればいいじゃんっ」
「それでは不公平だろう。お前は手だけで俺をイかせてくれたんだからな」

 そんなもの詭弁だ、と思うものの、これ以上何を言ったところで無駄そうだ。口では勝てないと悟り、ただ睨み付けていると、ジルヴィウスは掴まれていないほうの手でシーラの腹を撫でた。
 体に散っていた彼の精液はとっくに拭われ、今は噛み跡や鬱血痕ばかりが残されている。
 ジルヴィウスに抱かれない間、すっかり綺麗になったシーラの体は、再び彼の独占欲に満たされていた。
 ジルヴィウスはシーラの胸元に顔を寄せ強く吸い付くと、軽く腹を押し、挿入されたままの指で濡襞を撫でた。

「やあぁあっ」

 たったそれだけのことでシーラの体は強い快感を拾い、呆気なく果てを迎える。
 滲む視界のなか、虚空を見つめ、荒い呼吸を繰り返すシーラの耳元でジルヴィウスが囁く。

「お前の体は素直だぞ、シーラ。うまそうに指を咥えて――ああ、ほら。また中から溢れてきた」

 下のほうからくちゅり、と音が聞こえた瞬間、シーラの中で何かが切れた。
 シーラは固く口を閉じると、ジルヴィウスの胸元を力なく叩く。

「……いい」
「……なに?」
「っもういいって言ったの!」

 眼前で、わあっと声を上げれば、さすがのジルヴィウスも驚いたのか、小さく肩を揺らした。シーラはそんなジルヴィウスを睨み付けながら、もう一度ジルヴィウスの胸板を叩く。

「もういい、わたしが自分で挿れる! ジルは大人しく座ってて!」
「おい――」
「はやくっ!」

 勢い任せにわあわあ騒げば、ジルヴィウスは気圧されたようにその場に腰を下ろした。
 栓をしていた指が抜け、中からとろりと垂れるものがあったが、そんなことは気にしていられない。シーラはのそりと体を起こすと、ジルヴィウスを跨いで膝立ちになった。
 一方の手は彼の肩に、もう一方は陽根を支える。

(……なんか、いつもより大きいような……?)

 久しぶりだからそう錯覚してるのだろうか、と思いつつ、シーラはゆっくりと腰を下ろしていく。

「ぅ、んっ……」

 先端が、つぷりと中に押し入る。あれだけ散々いじられたというのに、隘路は先端を呑み込むだけで精一杯だった。
 彼の強大さを改めて感じ、先ほどまでの威勢はどこへ行ったのか、シーラは弱々しく「ジル」と彼の名を呼ぶ。

「こわい……」

 ぎゅうっと彼の首に抱き着けば、ジルヴィウスは優しく抱き締め返してくれる。宥めるように背中を撫でながら、ジルヴィウスは「大丈夫だ」と囁いた。

「そのままゆっくり腰を下ろせ」
「うん……」

 ジルヴィウスに促されるまま、シーラはゆっくりゆっくり腰を下ろしていく。彼のものが中へと進むごとに、指だけでは開ききれなかった奥が開いていくのを感じる。
 彼の長大なものを呑み込むのは一苦労だが、触れる肌から、彼の鼓動や体温、息遣いが伝わり、心の中には喜びと安らぎが広がっていく。

「は、ん……」
「もう少しだ、シーラ」
「ん、んんっ――ッあ……!」

 彼のものがぐりっと最奥を抉り、鋭い快楽が脳天へと突き抜ける。
 胎の奥がじんじんと痺れ、熟れていくのを感じる。

(だめ……この姿勢……)

 少しの刺激が強烈な快感を呼び起こし、このままでも抜け出せないほど恐ろしい官能がやってくると本能が警鐘を鳴らす。
 シーラはなるべく最奥を刺激しないよう、ジルヴィウスの肩に手を置いて、ゆっくり体を離した。

「……ずいぶんと悦さそうだな? シーラ」
「う、ん……ジルと、一つになれて……気持ちよくて、嬉し――っふ、んんっ」

 押さえつけるように腰を掴んだジルヴィウスに最奥を刺激され、思わず甘い吐息が漏れる。

「んぅっ……だ、め、ジル……」
「だめ? 気持ちいいんだろう?」
「き、もち、けどっ……ぁ、わたし、また……っ」
「イけばいいだろ?」

 ジルヴィウスの手が、片方、シーラの胸へと伸びる。膨らみを柔らかく揉んだかと思うと、突然ピンと立った乳嘴をつままれ、びくりと腹が震えた。
 その結果、胎の奥まで刺激され、シーラは自らの震えで勝手に気持ちよくなっていく。

「っあ、じる……ジルっ」
「ああ。そのままイけ、シーラ」
「んんんぅっ――!」

 ぐり、と最奥を擦られると同時に胸の頂をつねられ、シーラは絶頂を迎える。
 奥歯を噛み締め、ふ、ふ、と浅い呼吸を繰り返していると、ジルヴィウスに名前を呼ばれる。ジルヴィウスは胸をいじっていた手をシーラの口元に持ってくると、きつく噛み締めるシーラの口内に親指を捻じ込んだ。

「そんな風に力を入れるな」
「んぅ、ん……」

 シーラは果ての余韻でぼんやりとするなか、ジルヴィウスにされるがまま口を開け、彼の親指に吸い付く。
 よだれがぽたぽた落ちるのも気にせず、シーラはただ静かに自分を見つめるジルヴィウスの双眸を見返す。それは、続きをしてほしい、というおねだりのつもりの行動だったが、彼の瞳は情事の熱とはまた違った何かを宿していて、シーラは思わず目を見開いた。

(どうして……そんな目で……)

 彼の眼差しには、どこか慈愛のようなものが感じられたのだ。
 何故そんな目で自分を見るのだろう、と快楽に溶けた頭の片隅で考えていると、ジルヴィウスは指を引き抜き、涙に濡れたシーラの頬を撫でた。

「……大きくなったな、シーラ」
「え……」

 どこか懐かしむような柔らかな声に、消えかけていた理性が引きずり出される。
 彼の言葉に戸惑っているうちに、唇が重ねられた。軽く吸い付き、くすぐるように舌を舐めるジルヴィウスは、繋がったままシーラを押し倒す。

「っジル、待っ――」
「待たない」
「――っ」

 ギリギリまで引き抜かれた剛直が一気にシーラを貫き、首を絞められたかのように息が詰まる。けれどそれも一瞬で、内壁をごりごりと削られるたびに口からは蕩け切った甘い声が漏れた。
 肉同士がぶつかる打擲音と淫猥な水音が響く室内で、シーラは脳まで痺れさせるような官能の波に呑み込まれる。
 こうなってしまえば、もう気持ちよさと、目の前の人物への愛しさか考えられなくなる。

「ふぅっ……ん、ふっ……! ジルっ、ジル……!」
「シーラ……っ」

 ジルヴィウスは額に汗を浮かべながら、熱い吐息ともにシーラの名を呼ぶ。
 先ほどとはまるで違う、獰猛な捕食者のような眼差しで自分を見据え、激しく腰を打ち付けながらも、触れる手は相変わらず優しい。
 大切にしたい。けれど、ひどく貪りたい。
 そんな彼の想いが伝わってくるようだった。

(好き、ジル……大好き)

 その想いは自然と口をついて出て、シーラはうわ言のように「ジル」と「好き」を繰り返す。

「っは……す、き……す、きぃっ……! ジル……! ぁっ、すきっ……だいすき、ジルっ」
「っ……!」

 ジルヴィウスはシーラの頭を固定するようにうなじに手を回すと、噛みつくように口付けた。
 喘ぎ声と「好き」という言葉の合間に、彼の厚い舌がシーラの口内を舐める。
 シーラの愛を文字通り飲み込むかのように舌を絡めとりながら、彼も合間にシーラの名を呼んだ。
 それは、今の彼が口にできる最大限の愛のようで、シーラの目尻からは生理現象だけではない涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
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