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第三章
いつかは醒める夢
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キティが働き始めて、一ヵ月ほどの時が過ぎた。
テッドがよくしてくれているのか、働くのが性に合ってるのか、彼は日に日に活力を取り戻していっているようだった。少し長かった襟足をさっぱりと切ったからか、どことなく顔つきもすっきりしたように思う。
用心棒として雇われているからか、鍛錬も毎日欠かさず行っており、もともと立派だった体はさらに厚みを増し、出会った当初に比べるとずいぶん健康的な見た目になった。
照りつけるような夏の日差しが似合う美丈夫を前に、アザレアの心はいつでも新鮮にときめいた。
ただ、アザレアの心をときめかせたのは、それだけではなかった。
彼は、働き始めてからも毎日アザレアに食事を作り続けたのだ。
昼間は仕事に行っているため、昼食は朝に作り置きをし、帰って来てから夕食を作る。さすがにそれは大変だろう、と遠慮したところ、「いいから」と押し切られてしまった。
以前、「誰かと一緒に住んでいるときくらいは食事を共にしたい」と言ったからか、食事もなるべく一緒に取ろうとしてくれるのだ。仕事終わりに酒場に誘われることもあるだろうと、誘われたらそっちを優先していいと伝えたところ、「酒の席は好きじゃない」と一蹴された。
そのときの表情は苦々しく、遠慮からそう言ったわけではないということはすぐにわかった。きっと、過去に何かがあったのだろう。
追及するようなことでもないため、アザレアもそれ以上は何も言わなかった。
息抜きも必要だとは思うが、無理にさせるものでもない。それに正直、彼が自分と一緒に過ごそうとしてくれるのが嬉しかった。
しかも彼は、働き始めてからというもの、労働組合の仕事が休みの日はアザレアの店や生活周りの雑用も手伝うようになったのだ。
これにはさすがのアザレアも、休日は休むべきだ、と強めに訴えた。けれど彼は聞く耳持たずで、「何をするにも俺の自由だと言ったのはあんただろ」と言われてしまい、それ以上何も言い返すことができなかった。
食事のとき以外は顔を合わせずにいた彼が、何故このような行動を取るようになったのかわからない。
外に働きに出たら彼との仲はより疎遠になると思っていたのに、大誤算だ。
彼と過ごす時間が増えるたび、アザレアの鼓動は甘やかに高鳴っていった。その高鳴りが、魔女の本能からきているのか、アザレア自身の気持ちなのか、最早わからなかった。
むしろ、それについて考えることさえ億劫になってきていた。
(いっそのこと出て行くよう促してみる……? ――無理だ。想像しただけで心臓が痛い……そもそもそんなことを言って彼を傷付けたら――)
「なあ」
後ろからの呼びかけに、アザレアはびくりと背筋を伸ばす。
慌てて後ろを向けば、キティが目を瞬かせていた。
「……邪魔したか?」
「いや、ううん、ただ少し考えごとをしていて……どうかしたのかな」
「店の前の長椅子、少しやすり掛けしたいんだが、あんたの友だちがどいてくれなくて」
「ああ……」
いつも長椅子の上で寝転がっているキャラメル色のうさぎを思い浮かべ、アザレアは、ふ、と目尻を下げた。
「少し待っていて」
先ほどキティが抜いてくれた野草の中ら、うさぎが食べても問題のないものを選んでいく。
(あとハーブもあげようか。彼女はミントが好きだから……うん、この葉を一枚持って行こう)
ミントティーにしようと干していたもののなかから、まだ新鮮なものを選び、選別した野草に加える。
「……それ、全部見分けつくのか?」
「うん。一応ね」
キティはアザレアの手元を覗き込むと、「へぇ」と小さく漏らした。
思いの外近い距離に、心臓がドキリと跳ねる。
肌が触れているわけでもないのに、彼のいる右側が異様に熱く感じた。じわりと体温が上がったのを誤魔化すように、アザレアは素早くキティから距離を取り調剤室を出る。
「わたしの友は気まぐれだから……これでどいてくれたらいいのだけれど」
(心臓に悪い……)
アザレアは手の甲を頬に当てながら、店の出入り口へと向かう。
外は夏らしい快晴で、爽やかな風が頬を撫でた。日差しは強いが風が涼しく、上がった体温を下げてくれるようだ。
なるべくキティのことは意識しないように気を付けながら、アザレアは丸太を半分に切った長椅子の前で膝をつく。
長椅子の上には、キャラメル色のうさぎが四肢を投げ出し横向きに寝ていた。
「やあ、キャロ。起きているかな」
短い耳がぴくりと揺れ、うさぎは体を起こす。鼻をひくひくと揺らすうさぎの前に、アザレアは野草を一枚差し出す。
はぐはぐと草を食べるうさぎの姿を見ていると、気持ちが落ち着ていった。アザレアは、ほっと息を吐き出しながら、小首を傾げる。
「キャロ。彼がきみにどいてほしいそうなのだけれど、お願いできるかな」
アザレアの後ろに立ったキティを見上げながら、うさぎはひくひくと鼻を震わせる。アザレアは努めて平静を装いながら、うさぎの好物のミントをキティに差し出した。
「キティもあげてみて」
キティは一瞬観察するようにアザレアを見たものの、すぐに視線を逸らし、隣に屈んだ。受け取ったミントをうさぎの前に差し出しながら、彼は軽く頭を下げる。
「……もっと寝やすくしてやるから、少しどいてくれないか?」
先ほどより高速で鼻をひくつかせたうさぎは、少しして、キティに近付いた。次の瞬間。うさぎは華麗な跳躍を見せ、後ろ足でキティの頬を蹴飛ばした。その反動でキティの手からミントが落ち、うさぎはそれと咥えると店の裏手へと跳んで行く。
「……」
「……」
うさぎが草を踏む軽やかな音を聞きながら、アザレアは隣で固まっているキティを見る。頬を蹴られた顔の傾きそのままに、キティはどこか遠い目をしていた。
その姿が、小動物に翻弄される大型獣のようで、アザレアの顔は自然と綻んだ。
「ふ、ふふ……強烈な一撃だったね」
「……そうだな」
頬を擦りながら深く息を吐き出したキティに、アザレアはくすくすと笑い続ける。
(今の場面、映像に残しておきたかったな)
この世界には“映像”という概念がなく、今までそのようなことを思ったこともないが、今初めて一つ目の前世の文明の利器が羨ましくなった。
(蹴られたキティには申し訳ないけれど……正直とても微笑ましい光景だったね)
一連の流れを思い出すだけで、口元が緩んでしまう。
何度思い返しても新鮮に面白く、ふふ、と笑みを漏らしていたアザレアだったが、ふと、キティが自分を見ていることに気付き、ぴたりと静止する。
彼の力強い若緑色の瞳に射貫かれ、笑いすぎて不快にさせただろうか、と内心ドキドキしていると、キティがわずかに目を細めた。
「あんた、ちゃんと笑えるんだな」
「……え?」
(ちゃんと?)
それはどういう意味だろう、と目を瞬かせたアザレアだったが、誰かが結界を通った感覚が伝わってきて、はっと彼の後ろへと目を向ける。
「……どうした?」
「誰か来たみたい」
(現実に引き戻された気分だ)
立ち上がり、膝の砂を払ったアザレアは、いつも通りの笑みを浮かべると、キティに視線を戻した。
「わたしは中で来客を迎える準備をするね。キティもこまめに休むんだよ」
「……わかった」
視線を逸らし、小さく溜息をついたキティに、アザレアはにこりと笑みを返すと店内に戻る。
(……これは一時の夢だ。いつか醒める夢)
だから決して近付きすぎてはいけないと、もう何度目かわからない警告を己に言い聞かせた。
テッドがよくしてくれているのか、働くのが性に合ってるのか、彼は日に日に活力を取り戻していっているようだった。少し長かった襟足をさっぱりと切ったからか、どことなく顔つきもすっきりしたように思う。
用心棒として雇われているからか、鍛錬も毎日欠かさず行っており、もともと立派だった体はさらに厚みを増し、出会った当初に比べるとずいぶん健康的な見た目になった。
照りつけるような夏の日差しが似合う美丈夫を前に、アザレアの心はいつでも新鮮にときめいた。
ただ、アザレアの心をときめかせたのは、それだけではなかった。
彼は、働き始めてからも毎日アザレアに食事を作り続けたのだ。
昼間は仕事に行っているため、昼食は朝に作り置きをし、帰って来てから夕食を作る。さすがにそれは大変だろう、と遠慮したところ、「いいから」と押し切られてしまった。
以前、「誰かと一緒に住んでいるときくらいは食事を共にしたい」と言ったからか、食事もなるべく一緒に取ろうとしてくれるのだ。仕事終わりに酒場に誘われることもあるだろうと、誘われたらそっちを優先していいと伝えたところ、「酒の席は好きじゃない」と一蹴された。
そのときの表情は苦々しく、遠慮からそう言ったわけではないということはすぐにわかった。きっと、過去に何かがあったのだろう。
追及するようなことでもないため、アザレアもそれ以上は何も言わなかった。
息抜きも必要だとは思うが、無理にさせるものでもない。それに正直、彼が自分と一緒に過ごそうとしてくれるのが嬉しかった。
しかも彼は、働き始めてからというもの、労働組合の仕事が休みの日はアザレアの店や生活周りの雑用も手伝うようになったのだ。
これにはさすがのアザレアも、休日は休むべきだ、と強めに訴えた。けれど彼は聞く耳持たずで、「何をするにも俺の自由だと言ったのはあんただろ」と言われてしまい、それ以上何も言い返すことができなかった。
食事のとき以外は顔を合わせずにいた彼が、何故このような行動を取るようになったのかわからない。
外に働きに出たら彼との仲はより疎遠になると思っていたのに、大誤算だ。
彼と過ごす時間が増えるたび、アザレアの鼓動は甘やかに高鳴っていった。その高鳴りが、魔女の本能からきているのか、アザレア自身の気持ちなのか、最早わからなかった。
むしろ、それについて考えることさえ億劫になってきていた。
(いっそのこと出て行くよう促してみる……? ――無理だ。想像しただけで心臓が痛い……そもそもそんなことを言って彼を傷付けたら――)
「なあ」
後ろからの呼びかけに、アザレアはびくりと背筋を伸ばす。
慌てて後ろを向けば、キティが目を瞬かせていた。
「……邪魔したか?」
「いや、ううん、ただ少し考えごとをしていて……どうかしたのかな」
「店の前の長椅子、少しやすり掛けしたいんだが、あんたの友だちがどいてくれなくて」
「ああ……」
いつも長椅子の上で寝転がっているキャラメル色のうさぎを思い浮かべ、アザレアは、ふ、と目尻を下げた。
「少し待っていて」
先ほどキティが抜いてくれた野草の中ら、うさぎが食べても問題のないものを選んでいく。
(あとハーブもあげようか。彼女はミントが好きだから……うん、この葉を一枚持って行こう)
ミントティーにしようと干していたもののなかから、まだ新鮮なものを選び、選別した野草に加える。
「……それ、全部見分けつくのか?」
「うん。一応ね」
キティはアザレアの手元を覗き込むと、「へぇ」と小さく漏らした。
思いの外近い距離に、心臓がドキリと跳ねる。
肌が触れているわけでもないのに、彼のいる右側が異様に熱く感じた。じわりと体温が上がったのを誤魔化すように、アザレアは素早くキティから距離を取り調剤室を出る。
「わたしの友は気まぐれだから……これでどいてくれたらいいのだけれど」
(心臓に悪い……)
アザレアは手の甲を頬に当てながら、店の出入り口へと向かう。
外は夏らしい快晴で、爽やかな風が頬を撫でた。日差しは強いが風が涼しく、上がった体温を下げてくれるようだ。
なるべくキティのことは意識しないように気を付けながら、アザレアは丸太を半分に切った長椅子の前で膝をつく。
長椅子の上には、キャラメル色のうさぎが四肢を投げ出し横向きに寝ていた。
「やあ、キャロ。起きているかな」
短い耳がぴくりと揺れ、うさぎは体を起こす。鼻をひくひくと揺らすうさぎの前に、アザレアは野草を一枚差し出す。
はぐはぐと草を食べるうさぎの姿を見ていると、気持ちが落ち着ていった。アザレアは、ほっと息を吐き出しながら、小首を傾げる。
「キャロ。彼がきみにどいてほしいそうなのだけれど、お願いできるかな」
アザレアの後ろに立ったキティを見上げながら、うさぎはひくひくと鼻を震わせる。アザレアは努めて平静を装いながら、うさぎの好物のミントをキティに差し出した。
「キティもあげてみて」
キティは一瞬観察するようにアザレアを見たものの、すぐに視線を逸らし、隣に屈んだ。受け取ったミントをうさぎの前に差し出しながら、彼は軽く頭を下げる。
「……もっと寝やすくしてやるから、少しどいてくれないか?」
先ほどより高速で鼻をひくつかせたうさぎは、少しして、キティに近付いた。次の瞬間。うさぎは華麗な跳躍を見せ、後ろ足でキティの頬を蹴飛ばした。その反動でキティの手からミントが落ち、うさぎはそれと咥えると店の裏手へと跳んで行く。
「……」
「……」
うさぎが草を踏む軽やかな音を聞きながら、アザレアは隣で固まっているキティを見る。頬を蹴られた顔の傾きそのままに、キティはどこか遠い目をしていた。
その姿が、小動物に翻弄される大型獣のようで、アザレアの顔は自然と綻んだ。
「ふ、ふふ……強烈な一撃だったね」
「……そうだな」
頬を擦りながら深く息を吐き出したキティに、アザレアはくすくすと笑い続ける。
(今の場面、映像に残しておきたかったな)
この世界には“映像”という概念がなく、今までそのようなことを思ったこともないが、今初めて一つ目の前世の文明の利器が羨ましくなった。
(蹴られたキティには申し訳ないけれど……正直とても微笑ましい光景だったね)
一連の流れを思い出すだけで、口元が緩んでしまう。
何度思い返しても新鮮に面白く、ふふ、と笑みを漏らしていたアザレアだったが、ふと、キティが自分を見ていることに気付き、ぴたりと静止する。
彼の力強い若緑色の瞳に射貫かれ、笑いすぎて不快にさせただろうか、と内心ドキドキしていると、キティがわずかに目を細めた。
「あんた、ちゃんと笑えるんだな」
「……え?」
(ちゃんと?)
それはどういう意味だろう、と目を瞬かせたアザレアだったが、誰かが結界を通った感覚が伝わってきて、はっと彼の後ろへと目を向ける。
「……どうした?」
「誰か来たみたい」
(現実に引き戻された気分だ)
立ち上がり、膝の砂を払ったアザレアは、いつも通りの笑みを浮かべると、キティに視線を戻した。
「わたしは中で来客を迎える準備をするね。キティもこまめに休むんだよ」
「……わかった」
視線を逸らし、小さく溜息をついたキティに、アザレアはにこりと笑みを返すと店内に戻る。
(……これは一時の夢だ。いつか醒める夢)
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