ルシアナのマイペースな結婚生活

ゆき真白

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第二部 - プロローグ

プロローグ

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 瞼の向こう側で何かが瞬いたような気がして、ルシアナはゆっくりと瞼を持ち上げる。

(朝……?)

 ぼやけた視界で窓のほうを見ると、カーテンの隙間から白い光が漏れているのが見えた。
 ルシアナは何度か瞬きを繰り返すと、ゆっくり上体を起こす。かかっていた布団が落ちると何も纏っていない素肌が現れ、ルシアナは小さく体を震わせた。
 暖炉があり、保温魔法がかかっていても、何も着ていないとさすがに冷える。

 辺りを見渡し、床にナイトガウンが落ちているのを見つけると、ルシアナはガウンの袖に腕を通した。ルシアナが着るには大きなそれを緩く身に纏うと、裾を引きずりながら窓に近付く。
 濃紺のカーテンを少し捲れば、大粒の雪が緩やかに降っているのが見えた。
 真っ白な空から降るふわふわの雪は、何度見ても不思議なものに思えた。

(いつもより空が白い……そんなに長く寝ていたのかしら)

 ほぼ毎日雪が降り続いているこの土地では、いまいち時間経過がわかりにくい。こうして外を見ても、今が朝なのか昼なのかわからないことが多かった。

(けれど、そんなに長く寝ていたわけではないと思うのよね。だって……)

 ルシアナはしっかりとカーテンを閉めると、後ろを振り返る。
 先ほどまで自分が寝ていたベッドで健やかに眠っている人物を見て、小さく笑みを漏らす。足音を立てないよう、ゆっくり近付き、ベッドの傍に膝をつく。

(初めてではないかしら? レオンハルト様より早く起きられたのは)

 レオンハルトはいつもルシアナより早く起き、ルシアナが目覚めたときには身支度を終えていることが多かった。それを少し寂しく思っていたので、こうしてレオンハルトの眠る姿を見られたのはとても嬉しい。

(新年早々いいことがあったわ。今年もきっと素敵な一年になるでしょうね)

 ふふふ、と独り笑っていると、レオンハルトの睫毛がかすかに震えた。

「……!」

 起こしてしまったかと両手で口を覆うと、彼の眉間にわずかに皺が寄り、ゆっくりと目が開かれる。

「……ルシアナ?」

 少し怠そうな低く掠れた声に、胸が小さく高鳴る。いつもの甘く優しい声とは違う、少々硬い声。普段聞くことができないその声音に、ときめきを覚えずにはいられない。

「起こしてしまい申し訳ありません」

 こちらに伸びている手に触れ、優しく握り込めば、レオンハルトは眠そうに一度目を閉じる。しかし、すぐにはっと目を開けると、体を起こした。

「すまない。寝過ごしたか?」

 レオンハルトに手を引かれ、引き寄せられるままベッドに上がると、彼に力強く抱き締められる。

「いえ。わたくしも先ほど起きたばかりですわ。時間は……」

 時計を探すように、きょろ、と視線を彷徨わせたルシアナだったが、頭を抑えるように抱き込まれ、視界に彼の胸しか映らない。

(まあ……)

 ルシアナは一瞬迷ったすえ、レオンハルトの胸に顔を擦り付けた。
 空気がかすかに震え、レオンハルトが笑ったのがわかる。彼はルシアナの髪を梳くように頭を撫でると、懐中時計を開いた。

「まだ早い時間だな」

 懐中時計をサイドチェストの上へと戻すと、レオンハルトはルシアナを抱き上げ見上げた。

「おはようルシアナ。新たな年をこうして貴女と迎えられて嬉しい」

 柔らかに微笑むレオンハルトに、ルシアナもにこやかな笑みを向けた。

「おはようございます、レオンハルト様。わたくしも新年の初めにこうしてレオンハルト様と挨拶を交わせたこと、最初にお会いできたのがレオンハルト様であることが、とても嬉しいです」

 優しく彼の頬を撫でれば、レオンハルトも嬉しそうに目尻を下げた。徐々に近付いてくる顔に、ルシアナはそっと瞼を下ろす。

(今年も一年、愛に溢れた素敵な日々を過ごせますように)

 レオンハルトと出会ってからもうすぐ一年。これからの春夏秋冬、そのすべてをレオンハルトと過ごせるのだという期待と喜びに、ルシアナの胸は自然と高鳴った
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