この防具職人の作る下着が凄すぎる!

パイ吉

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第19話ゴブリン襲来編⑬

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「いつまでイチャついてんだコラ! いい加減に離れろ金髪女!」
 耳元で大きな声を出されたマリアが、驚いてハルトから離れる。ハルトの肩の上には、小さな可愛らしい女の子が立っていた。
「ふふふ。ノ―ムったらヤキモチ焼いちゃって。あの子、あなたにハルトを取られちゃうと思って心配なのよ」
「えっ! な、なに?」
 マリアの目の前をもう一人の小さな少女が飛び回る。
「誰がヤキモチだってぇ! おい金髪女。貴重な戦闘用ブラを壊しやがって。自動防御機能を付与した魔石付きなんだぞ! 弁償しろコラァ」
「ご、ごめんなさい……」
 マリアが何度も頭を下げる。
「この戦闘用ブラの代金は受け取ってる。マリアのものなんだから、謝る必要はない。それから2人とも、敵はまだ残ってる。油断するな」
「ハルトこそ気をつけな。ノロマなんだから」
 ノ―ムが悪態をつきながら、ゾイドの巨体を貫く石柱に視線を向けた。鋭い石柱の先端に、仮面で顔を隠した男が立っている。
 風をまとったシルフが一本の矢のごとく、仮面の男に向かって飛んでいく。
「炎よ我に力を。盾となりて我が身を守れ!」
 男が詠唱すると、真っ赤に燃え盛る魔法陣が何枚も重なって出現した。
 シルフが猛スピードで突進し、炎の盾を突き破って進んでいく。
「戻れシルフ!」
 ハルトが叫んだ。

「焼き尽くせ!」
 仮面の男が手をかざすと、魔法陣から大きな炎が放射された。シルフの小さな体が火炎に包まれる。
「ノ―ム、早くシルフを――」
「おい、よく見ろ」
 慌てるハルトの言葉をノ―ムがさえぎった。

 一つの小さな光が、すごい勢いでハルトの元へ飛んでくる。
「ちょっと私の髪、焦げてない? エメラルドグリーンの綺麗な髪が台無しよ!」
「えっと、焦げてないよ。とても綺麗だよ」
 激怒するシルフにマリアが恐る恐る声をかける。
「ほらな。こいつがあの程度の魔法でやられるタマかよ」
 ノ―ムが笑いながらハルトの頬をペチペチ叩いた。
「はぁ……敵の素性も分からないのに一人で突っ込むなよ」
 シルフの元気な姿を見て、ハルトがため息をつく。
「素性が分からないから私が調べて来たんじゃない。ハルトの怖がりは子供のころのまんまね」
 シルフが小さな手でハルトの頭を撫でる。

「ふふふふ。そうか、そういうことか」
 仮面の男が急に笑い出す。
「何が可笑しい? モンスターを従えて、魔王気取りか?」
「権力も富も興味はない。しかし、君は実に興味深いなあ」
「俺はハルト。ロームの町で防具職人をやってる。こっちが名乗ったんだ。アンタも名前くらい言うのが礼儀ってもんだろ?」
 ハルトの言葉に仮面の男が少し考える仕草を見せる。
「私の名は……そうだな、メシアと呼んでくれ。君とは仲良くなれる気がするよ」
「こっちは全然そんな気しないんだが?」
「ふふふふ。ハルト、また会おう。カワイイ精霊たち、ハルトをしっかり守りなさい」
 突如出現した黒い空間の中へメシアが消えていく。
「アイツ逃げやがった! お前に言われなくてもハルトは私らが守るっつうの!」
 ノ―ムが悔しそうな表情で飛び回る。
「逃げたと言うより、見逃してもらったって感じね」
「ああ、そうかもな」
 エメラルドグリーンの髪を気にしながらつぶやくシルフに、ハルトは静かな声で返事した。

「あの仮面が、メシアが黒幕なの?」
 駆け寄って来たマリアが尋ねる。
「今回の件に関しては、アイツの仕業に間違いない。ただ、アイツが黒幕なのか、使われてるのかは分からないよ」
「……許せない。ゴブリンを使って町を襲わせようとしたり、冒険者の命を奪ったり」
 マリアの強く握った両手の拳が震えていた。
 ハルトが彼女の手を取り、優しく拳をほどいて握りしめる。
「マリアと冒険者みんなのおかげで、たくさんの命が救われたんだ。さあ、帰ろう」
「うん」
 ハルトに手を引かれ、マリアはゆっくりと歩き始めた――。
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