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第24話ランガの森ダンジョン編⑤

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(距離を取ったらダメだ。私の間合いで勝負しないと!)

 マリアがすかさず間合いを詰める。
「はぁぁぁぁ!」
 自身の身長と同じ長さの大剣を、すさまじい速さで振り下ろす。ベネディクタがレイピアで攻撃を受け流して回避する。マリアは相手に反撃の隙を与えず、連続で大剣を振り続ける。ベネディクタが踊るような華麗な身のこなしで、すべての斬撃を受け流していく。
 マリアの大剣とベネディクタのレイピアが接触するたびに火花が飛び散る。

(あの大きな胸で、なんでこんなに速く動けるの? しかも攻撃速度が異様に速い。攻撃を防ぐので精一杯だわ)

 ベネディクタは苦戦を強いられていた。大剣を使うマリアの方がリーチで優っている。ベネディクタが反撃するためにはもう一歩踏み込まなければならないが、マリアの斬撃を防ぐことに集中して身動きが取れずにいた。

(この人、すごい! 私の斬撃を細身の剣一本ですべていなしてる。まともに受けたら剣が折れちゃうから、柔軟に受け流してるんだ)

 マリアは驚いていた。これまで稽古や試合で剣を交えた相手と全く違うタイプの剣士である。柔軟でしなやか体捌き、相手の力とぶつからずに軌道を逸らす剣捌きは初めて見るものだった。自分と正反対の剣技を使うベネディクタに、あこがれや尊敬の念さえ生まれていた。

(使うつもりは無かったけど、仕方ないわね)

 マリアの激しい攻撃を防ぎながら、ベネディクタが呼吸を整える。

「風よ、我が剣に力を! ブラストソォォォド!」
 ベネディクタが詠唱すると、彼女のレイピアが薄緑の光に包まれた。
 大剣がレイピアに接触した瞬間、風が巻き起こる。態勢を崩したマリアに向かって、ベネディクタが一歩前へ踏み込んだ。
「ブラストストライクッ!」
 風をまとったレイピアの鋭い突きがマリアを襲う。
 レイピアの切っ先がマリアの胸元に迫った途端、魔法陣が出現した。風の魔法剣とマリアの魔法陣が衝突し、その反動でベネディクタの体が吹き飛ばされた。ベネディクタがしなやかに着地を決める。

「ミラー大隊長、彼女の実力は十分証明できました。これ以上続行すると、お互い命にかかわります。試合を終了してよろしいですか?」
 レイピアを鞘に納めながらベネディクタが尋ねる。
「んぬぅぅぅ……クソッ。私は野営地に戻るぞ」
「了解しました。私はランガの森の件をもう少し調査してから戻ります」
「勝手にせい!」
 ミラーは不機嫌をあらわにし、たるんだお腹を揺らしながら去っていった。
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