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第33話ランガの森ダンジョン編 ⑭

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 ハルトの防具店は、廃業した宿屋を買い取り改装したものである。かつて田舎町ロームの近くには鉄鉱石が採掘できる鉱山があり、労働者たちでにぎわっていた。鉱山が20年前に閉山したため過疎化が進み、町は一気に衰退していった。ロームにはギルド協会支部も設置されていないため、冒険者が立ち寄ることも少ない。鉱山近辺には下級モンスターが出没するため、ソロの駆け出し冒険者が経験値稼ぎに出向くこともあるが、ロームを拠点にしたり滞在する者は一人もいない。

 防具店2階の一室に全員が集まり、ベネディクタに注目する。
「改めてみんなにお願いしたいことがあるの。ランガの森に出現したダンジョンについてよ」
「あ、それ知ってる。ルドルフでもすごい噂になってるもの」
 マリアの言葉にベックが頷く。
「この間のゴブリン殲滅クエストで、主要3ギルドが壊滅状態だからそれどこじゃないんだよな。ギルド再建が最優先だってギルマスが嘆いてたよ」
 ベックが苦笑いする。
「そのダンジョンなんだけれど、王国騎士団が調査することになったの」
「マジっすか? 他の町のギルドが探索に来なかったのはそういう理由だったのか」
「先遣隊として第4連隊所属のミラー大隊が派遣されてきたというわけよ」
「調査に来たのはネームドの件だけじゃなかったのね」
 マリアが腕を組んで頷く。
「騎士団は地理にも疎いし、冒険者と違ってダンジョンでの探索にも慣れていない。そこで、現地の冒険者にガイドとして同行してもらうことになったの。この件は中隊長である私に一任されてるわ」
「まさかベネディ、私たちに一緒に来てほしいなんて言わないわよね?」
 マリアが愛想笑いを浮かべながら尋ねる。
「お願いできないかしら? マリアとベック、そしてハルトも一緒に」
 ベネディクタが真剣な表情で頭を下げた。
「ちょ、ちょっとやめてよベネディ。頭を上げて」
「おい、女騎士。私をのけ者にするとはどういう了見だ!」
 ノ―ムが話に割って入る。
「この子をメンバーに入れなくて大正解ね。食べてばかりの役立たずなんだから」
「なんだと! そういうお前も誘われてないだろっ」
「やめろよ、2人とも」
 ケンカを始める精霊2人をハルトが仲裁する。
「もちろんノ―ムとシルフにも来てもらいたいわ。2人はハルトの大事な仲間でしょ」
 ベネディクタの言葉にノ―ムがガッツポーズを見せた。
「俺はお断りする」
「ちょっと、ハルト」
 端的に断言するハルトをマリアが困った顔で見つめる。
「俺は職人で防具屋の店主だ。冒険者の真似事はできない」
 ハルトの答えにノ―ムからブーイングが起こる。
「一応ダンジョンの近くまで行ってみたけど、前に感じた巨大な魔力は感じられなかったわ。あの仮面の男、メシアみたいなヤバいのはいないんじゃないかしら」
 シルフが飛びながら説明する。
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