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起床ののち朝食
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しおりを挟む食事中ーーいや、味噌汁を食べ終えてから。
俺は今更、彼女に謝らなければならない旨を思い出し、彼女に何と言い出すべきか悩んでいた。
ヘアピンを川に落としてしまった。
昨日も風呂の中で、何であのとき本を開いてしまったのか、もっと腕を伸ばせなかったのか、栞が飛ばされることを予測できなかったのかーーそういった後悔が次々と湧き起こっていたが、一方で今も、自分が遅くまで探すのを諦めなかったのは、そういった『頑張ったけど見つからなかった』という免罪符が欲しくて、本当はちゃんと探せてなかったのではないかとーーどうしようもないことをぐずぐず、ずぶずぶと泥沼に足を取られるように思い悩んでいる。
こういうことはよくある。
普段は気を付けているのに少し気が緩んでケアレスミス。(本当に注意不足からの失敗だ。)そして後悔しても仕方のないことをぐだぐだと思い悩み、ようやく切り替えた次の瞬間にはまた後悔する。
ここまででワンセット。
そしてここからワンスモア。
幸い、俺も彼女も食べる最中に深く話す人ではない。彼女の視線は食事に向けられていて、俺の態度を不審がっている様子はない。今は味噌汁を神妙な顔をしてすすっている。俺が内心こんなことを考えているとは思っていまい。……何の油を使っているのか訊いていたし、案外自分でも家で作ってみようとレシピを頭の中で再現しているのかもしれない。
と、そんなことを考えている内に。
どう切り出すか考えが纏まらない内に。
合掌。
「「ごちそうさまでした」」
お互い朝食を食べ終えてしまった。
俺は脳死で、取り敢えず話だけでも切り出そうと「あのさ、流奈」と話しかけようとした。しかしそれを言うよりも先に、
「さてと、それじゃあ食器洗いますか!」
彼女は勢いよく立ち上がって食器を全て重ねて部屋を出ようとする。
「家の人、今居ないんだよね?」
首を巡らし訊いてくる。
「あ、ああ」
「じゃあこれ洗っちゃうね。食べさせてもらうだけじゃ悪いし」
ガチャ。
行ってしまった。
こういう時、俺はいつも話しかけるタイミングが悪い。
俺はいっそう自己嫌悪を深めながら、何はともあれ彼女の後を追って階下へと急いだ。
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