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七夕祭り
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しおりを挟む真剣な顔で金魚に相対する彼を見て、私は人知れずに嬉しくなる。彼は滅多に笑わないけど、ああして勝負事に熱心になっている時が一番楽しんでいるのを私は知っている。
人生ゲーム然り。
マリオカート然り。
金魚すくい然り。
ーー私が勝負事にこだわるのは、彼が楽しむ姿が一番よく見られるのがこの形だからだ。
彼が3匹目をすくう。
去年の記録を上回った。
ふ、と鋭い目つきが柔らかくなる。
きつく結ばれた唇も心なしか緩む。
ーーああ、いつ見ても。
彼が楽しんでる姿は何物にも変えがたい。
「ん、どうした?こっち見て。すくわないのか?」
私の視線に気付いたのか彼が訊いてくる。
「ーーフッフッフッこれも作戦だよ、優希くん。すくうのを見て、より良いすくい方を研究しているんだよ。後の先と言うやつだよ」
私は慌てて誤魔化す。「後の先の意味ちょっと違わないか?」などと、彼がぶつぶつ言う。
彼は普段人の顔を見ない癖に人の視線に敏感だ。
「もうちょっと鈍感だったらもっと見てられるのになぁ……」
聞こえない程度にぼやく。
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもー?」
笑って、しゃがみ直す。
私は何処にポイを入れるかをゆっくりと考え始めた。
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