【完結】不幸のタネ

よすい

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変化

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 堂島ミサキさんとは、その後も結構頻繁に連絡を取り合った。最初は酔った勢いで高校生と連絡先を交換してしまったとミサキさんは謝ってきたが、だから連絡を取り合うのをやめようと言われなくてホッとした。せっかくお互いにいい話し相手が出来たのに、すぐやめてしまうのは嫌だったからだ。

 学校のこと、会社のこと、人間関係の悩み。おうよそ年の離れた異性同士がしないような、気安くホッとするような関係。年下だから年上だからという遠慮も無かった。

 ある日の朝の事だ。俺が家から出て学校に行こうとしていると、隣の家の前でミサキが待ち構えていた。一体何をしているのか、彼氏でも待っているのかと、目の前を素通りしようとすると、なんと呼び止められた。話を聞いたところ、どうやら俺を待っていたらしい。今更なんの話があるのかと思ったが、不思議とそれ以上の感情は湧かなかった。

「それで、なんの話だ?」
「うん…」

 ミサキは少し俯き加減になって、何か悩んでいるようだった。そのまま待っていてもよかったが、時間もないので歩きながら聞くことにしようと提案して、二人並んで歩き出した。

「一緒に登校するの、久しぶりだね」
「ん? ああ、そうだな何ヶ月ぶりかだな」
「あの、あの時は本当にごめん」

 あの時、と言うのがいつの事なのかはすぐに分かった。だけど、なぜ謝ってくるのかが理解できない。彼氏が出来た、だから他の男と一緒にいるのは良くないって言うのは、むしろいい考えかただとすら思っているからだ。

「別に気にしなくていいよ」
「でも、ミオちゃんから聞いたよ。あの後のタクミのこと」
「ああ、あの時のことか。確かにあの時はキツかったけど、でもあの時のおかげで前に進めた。だから俺はむしろ感謝してるぐらいだよ」
「でもタクミを傷つけたのは本当だから、ごめんなさい」

 今更謝ってきて何なんだとはちょっと思った。だけど、謝って区切りを付けたいって気持ちも分かるし、あの時のことに対する怒りとか悲しみは、もうどこか遠くにあって、別にそれでスッキリするならいいかと言う考えになっていた。

「いいよもう」

 それからは無言の時間が続いた。俺は別に話すことはないし、他に何か話がないんだったら、別れて学校に向かうものだと考えていた。ミサキには中島が居るのだから、今の状況を見られたくないはずだと思ったからだ。それなのに何故かミサキはずっと俺の隣から離れようとしなかった。

「なあ、申し訳ない気持ちとかさ。色々もう分かったし、ここら辺で別れた方が良くないか? こんなとこ中島に見られたくないだろ?」
「それは…」

 それだけ言って、何故かミサキは黙ってしまった。中島と喧嘩でもしたのだろうか。兎に角、ミサキの方から動く気がないなら、自分から離れようと少し早歩きで歩き出す。するとおかしな事に、ミサキが小走りで付いてきて、俺の服の袖を掴んだ。

「なんだ? まだ何か話があるのか?」
「うん…私ね、私、中島君と別れようと思う」
「ふーん」

 だから何だと言う話だ。それは俺には全く関係のない事だし、相談とかそんなのでも無いただの決意表明みたいなものだろう? だから返せる言葉なんてほとんどない。

「えっ」

 ミサキはそんな俺の返しに、何故か驚いたような顔をした。

「何を驚いてるんだよ。そう言うのは当人たちの問題なんだから、俺が何か言えるはずないだろ」
「そっか、そうだよね」
「話がそれだけなら、いい加減分かれて学校行こう。別れる別れないは知らないけど、今はまだ別れてないなら、変に見られたくない」
「…わかった。ごめんね」
「いいよ別に」

 俺はミサキを置いて早足で歩いて行く。そうして歩きながらさっきのことを考えた。ミサキは俺に何と言って欲しかったのだろうかと。

 それにしても、俺は俺自身の変化に驚いた。前までの俺ならさっきの話で何かしら感じることがあったと思う。けど今は特に何も思わなかったからだ。

 人は変わる。それは環境のせいもあるし、毎日同じように生きているつもりでも少しは変わっていく。つい数ヶ月前までもの凄い速さで動いてると思っていた世界も、今こうして見ればちゃんと色もあるし穏やかだ。

 俺も変われたと言うことなんだろう。どんな事があって、何のおかげでとかじゃなくて。そこに大小はあっても色々なことが積み重なった結果だ。

 こうして自分の変化を自覚したこの日から、俺の日常はまた変化して行く。それはきっと良い方向への変化だと信じたい。そう、思った。

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