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しおりを挟む産婦人科で今後の注意点や説明を聞いて家に帰る。少し遅くなってしまったのでもうりっくんは家に着いているかも知れない。
妊娠のこと伝えたらなんて言うかな?
驚く?泣いちゃう?嘘だと思って笑うかな?
私はにやにやしながら家まで急いだ。
玄関にはりっくんの靴が並んでいてやっぱりもう帰ってきてたんだな、と思う。
今年の秋口頃に私たちは完全な同棲を始めた。今までも月に3日ほどしか家には帰らなかったし、特に何かが変わったような気はしないけれど。
「おかえり。どっか行ってたの?」
「ただいま。うん、ちょっとね。」
ふーん、と特に気にした様子もなくテレビに視線を戻すりっくん。私は彼にどうやって伝えようか考える。
別の日にドッキリで伝える?
いやストレートに伝えるか?
うんうんと唸りながら考え込んでると怪訝そうな顔して彼が私の顔を覗き込んできた。
「何?具合悪いの?最近調子悪かったし病院行ってきたら?」
私はもう今言おうと腹を決めた。
「うん、実は今行ってきたんだ病院」
「あ、そうなの?風邪とか?横になりな、食べれそうなら簡単な物作るからさ。」
「ううん、違うの」
「え?どういう……」
不思議そうな顔をするりっくんの瞳を見つめ返す。心臓がバクバクと鳴り響く。
「産婦人科に、行ってきたの。」
「!!それって…」
「うん、私妊娠してたの…」
伝えられた安心感からか涙が込み上げてくる。呆然とした彼は次第に状況を理解したのか慌てた質問してきた。
「え、俺との子ってことだよね?でも俺ゴムつけてたよね?なしでしたことある?」
「私も聞いてきたんだけどね、つけてても妊娠することはあるんだって。ゴムはリスクを避けるだけで完全に防御することは出来ないみたい。」
「そ、か」
呆然と何かを考えているりっくんは次第に何かを覚悟した顔になった。
きっとプロポーズだわ。私結婚するんだわ。幼い頃夢見た順番では無いけれど幸せなんだから関係ない。
嗚呼、なんて幸せなの
「舞。」
「りっくん…」
頬を赤らめて彼をじっと見つめる。
「その子を堕ろしてくれないか。」
「………………え?」
何を言われたのか理解出来なかった。
おろす?なにを?この赤ちゃんを?
どうして。結婚して産めば良いじゃない。確かに苦しい生活になるだろうけどきっと幸せだわ。
「な、んで…え、どういうこと……?」
「舞だってまだ大学生だし育てられないだろ?」
「私大学やめる。それでギリギリまでバイトしてお金貯める。今度海外旅行に行こうって言って貯めてたお金もあるわ。なのに、なんで……」
結婚して産むとしか思ってなかった私には青天の霹靂だった。
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