幸せの形

夜瑠

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きっと悪い冗談でしょう?そう信じて彼の目を見るけれどその瞳が嘘を言っているようには見えなかった。

どうして……?

「りっくん…結婚しよ……?それで3人で暮らそ?」

「………………」

「なんで何も言ってくれないの…?ねぇ…」

「………………」

「……ねぇったら!!」

「俺は!!」

今まで1度も聞いたことない彼の怒声に驚く。喧嘩をしてもいつも冷静な彼が声を荒らげることはなかった。


「俺は、結婚願望がゼロだ。というより生涯独身でいたいんだ。だからその子を産むなら結婚するだろう?俺には無理だ。」

「……え、?じゃあ…今まで1度も……私との結婚考えたこと無かったの……?」

「……舞だけじゃない。俺は誰とも結婚しない」



それは酷い裏切りの言葉のように思えた。この子を堕ろしたところで、私はずっと彼と結婚することは出来ないのだ。子供が出来ても結婚を拒絶する彼のことだ。この先私が社会人になって生活が安定しても結婚は出来ないのだろう。


私がどれだけ結婚を願っても、叶うことは無い。

「は、はは」

こんな盛大なすれ違いがあったなんて。



「……申し訳ないとは思ってる。でも…」

「そう思うなら結婚して一緒にこの子を育ててよ!!なんでそんな簡単に…堕ろすなんて…!!」

「簡単に言ってる訳じゃない!…けど、結婚は出来ない。なら堕ろすしかないだろ、舞もまだ大学生なんだから。」



なんて、なんて残酷なの?

こんなに好きで愛してるのに。彼とこの先付き合っていく自信が無い。



その選択が脳裏を過ぎる。


子供を堕ろして彼とこのまま付き合う?

無理だと思った。私はまだちゃんと形も取れていない我が子をもう愛してしまった。

我が子を忘れて彼と今までのように笑って仲良くは過ごせない。

けれどその4文字をずっと口に出せなかった。


彼との口論は朝方まで続いた。

口論と言っても最初だけで後半はお互いの意見のすり合わせ何か妥協出来るところがないかを探した。

けれど2人とも口にしないだけでそれが無理なことは分かっていた。

私は結婚して産みたい。

彼は結婚したくない。

結婚しないまま私が子供を産んで、彼と育てるのはそれこそ結婚生活と何が違うのか分からないし、彼も無理だと言った。

平行線の話し合いは彼の口から終わりを告げられた。


「……舞…本当にごめんね……別れようか…」

「……いやだ…いやだよぅ……」

「……舞……」

みっともなく泣く私を彼もまた涙を浮かべて抱きしめてくれた。

そうして私と彼はその日、1年7ヶ月のお付き合いに幕を下ろした。雪の降る寒い日だった。   


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