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第6章
6-3
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俺達はその後、カルティの部屋で、皆で朝飯を頂いた。
だがセラスはこころを避け、こころもしゅんとしているので、とても空気が悪かった。サレナも珍しくおろおろしてたし・・・
カルティだけはニタ~っと微笑んでこの上なく嬉しそうだったが。
四人で登校したが、結局空気はそのまんまで、俺達は誰も口を開かなかった。
ひさしぶりにセラスが来たことで教室は沸いたが、肝心のセラスがしょぼんというかおどおどしてたので盛り上がりに欠けた。
授業も夏休み前なせいで消化試合みたいなもので、ただ淡々と時間が過ぎて行く。休み時間も昼飯の時も、俺達は一緒に居たけど誰も口を聞かないまま。
明日で終業式だと言うのに・・・休みの間どうしよう・・・いや、俺が何とかしなくちゃいけないのは分かってるんだが、どうしたら良いのかさっぱり分からない。
こころに返事をしなくてはならないのだろうが伸び伸びになって機会を逸してしまっているし、それに付き合おうって言われたわけではないし。こころのこともセラスのことも俺は俺は・・・ど、どう言えばいいんだよ?!
気だるい授業が終わり、俺達は一緒にとぼとぼと帰り道を歩く。誰も口を開かないという状況は変わらず。
だがその時だ。サレナの声が頭の中に響いた。セラス経由で入ってきた通信だ。こころにもそれは入っているらしく、全員でぴたりと足を止める。
『ヴァルミンが大挙して押し寄せて来たぞ! 迎撃の準備をしろ!』
「な? ど、どういうことだよ?」
俺が尋ねると、頭の中に地球へ迫るヴァルミンの情報が次々と入ってくる。数はおよそ二千。月の軌道を超え、どんどんと近付いて来る。予想される目標地点は・・・この街だ!
俺はサレナが言っていた、なぜかヴァルミンはこの街に集まってくるという話を思い出した。
『本来ならこの程度、私だけでなんとかなるのだが・・・今回連中は拡散して行動している。その街を目指しているのは間違いないだろう。多少打ち洩らしが出るだろうから、人目につかない所で砲台を出して迎撃してくれ!』
「わ、分かった。なんとかする」
俺は返事をして、こころを見た。こころは顔を蒼白にして、小さく震えている。
「セラス、ラナ。どこか街を見渡せて人気のない所へ空間の穴を繋げてくれ。迎撃するぞ」
セラスは一瞬びくっと怯えるようなそぶりを見せたが、こくんと頷いた。
「ヘタレ下種の分際で私に命令するな、です!」
ラナはぎろりと俺を睨んだが、震えるこころの手を握ってから、
「・・・と言いたいところですが、お姉ちゃんの為にしょうがなく協力してやる、です」
とのたまった。じゃあ最初から素直に言えよ?! この非常時に・・・
俺達はラナの開いた空間の穴に飛び込む。そこは街が一望できる高台だ。周囲には林があるだけで家も何もない。下の方に閉鎖された工場があるだけだ。よし、ここなら良いだろう。
『数機そっちに行くぞ!』
またサレナの声が頭に響く。俺が空を見上げると、流れ星のように光るものが幾つも見えた。流れ星はゆっくりとこの街へ向けて落下して来ている。
セラスから流れ込む情報で、俺はその流れ星の拡大された映像を認識する。宇宙船のようなものに、小さな衛星や作業アームみたいなものが不規則に融合した変な形をしている。いつか見たヴァルミンも色んな機械がくっついてこんな感じだったな。間違いなさそうだ。
「セラス、ラナ!」
俺が叫ぶと、
「ふんだ、です。言われなくても全部落としてやる、です!」
ラナはそう答え、両手をすっと上へ向けて突き出した。周囲に無数の空間の歪みが生じ、対空機関砲や対空ミサイルの発射口が幾つも顔を出す。
セラスも片手をすっと上げた。だが、こちらには変化が無い。セラスは慌てたような顔をして、何度も動作を繰り返す。だが、結果を同じだ。
「せ、船体にアクセスできません・・・」
泣きそうな顔をして、セラスは俺に言った。ど、どういうことだ? 起きたばっかりだから起動が不安定なのか?
「このバカセラス、です! ヘタレ種馬なんかマスターにするからダメダメが感染ったのだ、です!」
ラナはがおっと吠える。
俺は慌ててヴァルミンを確認した。あれ、あいつら落下軌道を変更して、街じゃなくてこっちへ向かって来てる!? 俺達が迎撃しようとしていることに気付いたのか?
「いやあ!」
同じくそれに気付いたのか、こころは悲鳴を上げてしゃがみ込む。セラスは泣きそうな顔をしながら武装を出そうとするが、また結果は同じだ。
「このダメダメ! 粗大ゴミ! 役立たず、です! お前なんか居なくても私一人でやってやる、です!」
ラナはそうセラスを罵ると、さらに大きな空間の歪みを作り、そこから黄色い粒子を勢いよく散布させた。黄色い光、ラナのアンチ・ヴァルミン・ナノマシンは周囲の山々や街、そして空全体を瞬く間に包みこんで行く。
前にセラスもやってたな。今は理由が分かる。ヴァルミンの本体はナノマシン。だから融合した機械を破壊しただけじゃだめなんだ。また再生してしまう。この光は破壊された機械から逃れたヴァルミンを完全に破壊する為のナノマシン。まあ、ウイルスを潰すワクチンみたいなものだ。
「準備完了だ、です! ファイヤー!」
ラナは叫び、機関砲を打ちまくる。そして数十のミサイルも発射。
機関砲から放たれた閃光は迫るヴァルミンを貫き、ミサイルは噴射材で空に弧を描きながら速度を落としたヴァルミンを捉える。太陽が幾つも出来たかのような激しい爆発。そして数秒後、凄まじい爆音が周囲の山々にこだました。
「どんなもんだ、です!」
えっへんと自慢げに胸を張るラナ。まあ、言うだけあって大したもんだよ。一瞬で片が付たもんな。
ってあれ? ヴァルミンのほとんどは爆発で粉々になり、そこから舞い上がったヴァルミン本体の茶色いナノマシンもラナの黄色いナノマシンでかき消されていくが、一つだけ大きな塊が閉鎖された工場の方へ落ちていく・・・
その塊は屋根を突き破って工場の中へと入って行った。
「ちっ、一部逃げた、です」
ラナが呻く。その時、工場の内部からけたたましく機械の駆動音が響き始めた。
「なにっ?」
もう再生しやがったのかよ? 俺がヴァルミンの再生速度に驚いている間に、機械の駆動音はさらに激しくなり、何かが轟音を立てて屋根を突き破った。
もうもうと煙と埃を巻き上げて姿を現したのは、内部に残っていたのだろうリフトやベルトコンベアー、プレス機械を乗っ取った新たなヴァルミン。そいつは金切り声のような機械音を上げながら、ベルトコンベアーをキャタピラのように使い、こちらへ向け崖を駆け上がってくる!
ヴァルミンを間近で見るのはこれで二度目だが、本当にとんでもない化け物だな! 俺は怖く感じた。
ラナが複数の機関砲を乱射する。そいつを何発も食らいながらもヴァルミンは突進を止めない。相手は機械だから殺気みたいのは感じない。だけど無機質なものが、これだけの勢いと迫力で迫ってくる。とてつもない威圧感だ。
俺が心の底からの恐怖を覚えて立ちすくんだその時、ラナの機関砲がヴァルミンのベルトコンベアーを破壊した。ヴァルミンは移動の為の足を失い、金切り声を上げながら崖を転がり落ちていく。
「くたばれ、です! 反物質爆雷投下!」
崖から身を乗り出してヴァルミンの位置を確認したラナが、空間を開いて、ひと抱えもありそうな円錐形の爆弾を降下させる。次の瞬間、激しい光。そして轟々と山々を揺るがしそうな激しい突風が吹き荒れた。
「こんどこそ、どんなもんだ、です!」
ラナがガッツポーズを決める。俺はおそるおそる下の工場を覗き込んだ。そこには小さなクレーターがあるだけで何もなかった。今の攻撃でヴァルミンは工場ごと消滅したらしい。良かった、今度は本当に倒したな。
それにしても・・・ヴァルミンってのはとんでもない化け物だな。あんなのが何千何万と襲ってくるのか・・・本当に大丈夫なのだろうか。俺は不安と恐怖で体が震えた。
セラスとこころは大丈夫だろうか、そう思って後ろを振り向くと、セラスはまだ最初の位置でうなだれていた。こころもしゃがみ込んだままだ。
こころの傍にはラナが行ったので、俺はセラスの方へ行って、頭を撫でてやった。でもセラスはうなだれたまま。ラナがそんなセラスをちらりとセラスを見て、
「本当に存在意義の無い奴だ、です」
と軽く揶揄する。セラスはその言葉を聞いて、その場にへたり込む。
「私は…存在意義が無い・・・」
セラスは小さい声で、呟くように言った。
だがセラスはこころを避け、こころもしゅんとしているので、とても空気が悪かった。サレナも珍しくおろおろしてたし・・・
カルティだけはニタ~っと微笑んでこの上なく嬉しそうだったが。
四人で登校したが、結局空気はそのまんまで、俺達は誰も口を開かなかった。
ひさしぶりにセラスが来たことで教室は沸いたが、肝心のセラスがしょぼんというかおどおどしてたので盛り上がりに欠けた。
授業も夏休み前なせいで消化試合みたいなもので、ただ淡々と時間が過ぎて行く。休み時間も昼飯の時も、俺達は一緒に居たけど誰も口を聞かないまま。
明日で終業式だと言うのに・・・休みの間どうしよう・・・いや、俺が何とかしなくちゃいけないのは分かってるんだが、どうしたら良いのかさっぱり分からない。
こころに返事をしなくてはならないのだろうが伸び伸びになって機会を逸してしまっているし、それに付き合おうって言われたわけではないし。こころのこともセラスのことも俺は俺は・・・ど、どう言えばいいんだよ?!
気だるい授業が終わり、俺達は一緒にとぼとぼと帰り道を歩く。誰も口を開かないという状況は変わらず。
だがその時だ。サレナの声が頭の中に響いた。セラス経由で入ってきた通信だ。こころにもそれは入っているらしく、全員でぴたりと足を止める。
『ヴァルミンが大挙して押し寄せて来たぞ! 迎撃の準備をしろ!』
「な? ど、どういうことだよ?」
俺が尋ねると、頭の中に地球へ迫るヴァルミンの情報が次々と入ってくる。数はおよそ二千。月の軌道を超え、どんどんと近付いて来る。予想される目標地点は・・・この街だ!
俺はサレナが言っていた、なぜかヴァルミンはこの街に集まってくるという話を思い出した。
『本来ならこの程度、私だけでなんとかなるのだが・・・今回連中は拡散して行動している。その街を目指しているのは間違いないだろう。多少打ち洩らしが出るだろうから、人目につかない所で砲台を出して迎撃してくれ!』
「わ、分かった。なんとかする」
俺は返事をして、こころを見た。こころは顔を蒼白にして、小さく震えている。
「セラス、ラナ。どこか街を見渡せて人気のない所へ空間の穴を繋げてくれ。迎撃するぞ」
セラスは一瞬びくっと怯えるようなそぶりを見せたが、こくんと頷いた。
「ヘタレ下種の分際で私に命令するな、です!」
ラナはぎろりと俺を睨んだが、震えるこころの手を握ってから、
「・・・と言いたいところですが、お姉ちゃんの為にしょうがなく協力してやる、です」
とのたまった。じゃあ最初から素直に言えよ?! この非常時に・・・
俺達はラナの開いた空間の穴に飛び込む。そこは街が一望できる高台だ。周囲には林があるだけで家も何もない。下の方に閉鎖された工場があるだけだ。よし、ここなら良いだろう。
『数機そっちに行くぞ!』
またサレナの声が頭に響く。俺が空を見上げると、流れ星のように光るものが幾つも見えた。流れ星はゆっくりとこの街へ向けて落下して来ている。
セラスから流れ込む情報で、俺はその流れ星の拡大された映像を認識する。宇宙船のようなものに、小さな衛星や作業アームみたいなものが不規則に融合した変な形をしている。いつか見たヴァルミンも色んな機械がくっついてこんな感じだったな。間違いなさそうだ。
「セラス、ラナ!」
俺が叫ぶと、
「ふんだ、です。言われなくても全部落としてやる、です!」
ラナはそう答え、両手をすっと上へ向けて突き出した。周囲に無数の空間の歪みが生じ、対空機関砲や対空ミサイルの発射口が幾つも顔を出す。
セラスも片手をすっと上げた。だが、こちらには変化が無い。セラスは慌てたような顔をして、何度も動作を繰り返す。だが、結果を同じだ。
「せ、船体にアクセスできません・・・」
泣きそうな顔をして、セラスは俺に言った。ど、どういうことだ? 起きたばっかりだから起動が不安定なのか?
「このバカセラス、です! ヘタレ種馬なんかマスターにするからダメダメが感染ったのだ、です!」
ラナはがおっと吠える。
俺は慌ててヴァルミンを確認した。あれ、あいつら落下軌道を変更して、街じゃなくてこっちへ向かって来てる!? 俺達が迎撃しようとしていることに気付いたのか?
「いやあ!」
同じくそれに気付いたのか、こころは悲鳴を上げてしゃがみ込む。セラスは泣きそうな顔をしながら武装を出そうとするが、また結果は同じだ。
「このダメダメ! 粗大ゴミ! 役立たず、です! お前なんか居なくても私一人でやってやる、です!」
ラナはそうセラスを罵ると、さらに大きな空間の歪みを作り、そこから黄色い粒子を勢いよく散布させた。黄色い光、ラナのアンチ・ヴァルミン・ナノマシンは周囲の山々や街、そして空全体を瞬く間に包みこんで行く。
前にセラスもやってたな。今は理由が分かる。ヴァルミンの本体はナノマシン。だから融合した機械を破壊しただけじゃだめなんだ。また再生してしまう。この光は破壊された機械から逃れたヴァルミンを完全に破壊する為のナノマシン。まあ、ウイルスを潰すワクチンみたいなものだ。
「準備完了だ、です! ファイヤー!」
ラナは叫び、機関砲を打ちまくる。そして数十のミサイルも発射。
機関砲から放たれた閃光は迫るヴァルミンを貫き、ミサイルは噴射材で空に弧を描きながら速度を落としたヴァルミンを捉える。太陽が幾つも出来たかのような激しい爆発。そして数秒後、凄まじい爆音が周囲の山々にこだました。
「どんなもんだ、です!」
えっへんと自慢げに胸を張るラナ。まあ、言うだけあって大したもんだよ。一瞬で片が付たもんな。
ってあれ? ヴァルミンのほとんどは爆発で粉々になり、そこから舞い上がったヴァルミン本体の茶色いナノマシンもラナの黄色いナノマシンでかき消されていくが、一つだけ大きな塊が閉鎖された工場の方へ落ちていく・・・
その塊は屋根を突き破って工場の中へと入って行った。
「ちっ、一部逃げた、です」
ラナが呻く。その時、工場の内部からけたたましく機械の駆動音が響き始めた。
「なにっ?」
もう再生しやがったのかよ? 俺がヴァルミンの再生速度に驚いている間に、機械の駆動音はさらに激しくなり、何かが轟音を立てて屋根を突き破った。
もうもうと煙と埃を巻き上げて姿を現したのは、内部に残っていたのだろうリフトやベルトコンベアー、プレス機械を乗っ取った新たなヴァルミン。そいつは金切り声のような機械音を上げながら、ベルトコンベアーをキャタピラのように使い、こちらへ向け崖を駆け上がってくる!
ヴァルミンを間近で見るのはこれで二度目だが、本当にとんでもない化け物だな! 俺は怖く感じた。
ラナが複数の機関砲を乱射する。そいつを何発も食らいながらもヴァルミンは突進を止めない。相手は機械だから殺気みたいのは感じない。だけど無機質なものが、これだけの勢いと迫力で迫ってくる。とてつもない威圧感だ。
俺が心の底からの恐怖を覚えて立ちすくんだその時、ラナの機関砲がヴァルミンのベルトコンベアーを破壊した。ヴァルミンは移動の為の足を失い、金切り声を上げながら崖を転がり落ちていく。
「くたばれ、です! 反物質爆雷投下!」
崖から身を乗り出してヴァルミンの位置を確認したラナが、空間を開いて、ひと抱えもありそうな円錐形の爆弾を降下させる。次の瞬間、激しい光。そして轟々と山々を揺るがしそうな激しい突風が吹き荒れた。
「こんどこそ、どんなもんだ、です!」
ラナがガッツポーズを決める。俺はおそるおそる下の工場を覗き込んだ。そこには小さなクレーターがあるだけで何もなかった。今の攻撃でヴァルミンは工場ごと消滅したらしい。良かった、今度は本当に倒したな。
それにしても・・・ヴァルミンってのはとんでもない化け物だな。あんなのが何千何万と襲ってくるのか・・・本当に大丈夫なのだろうか。俺は不安と恐怖で体が震えた。
セラスとこころは大丈夫だろうか、そう思って後ろを振り向くと、セラスはまだ最初の位置でうなだれていた。こころもしゃがみ込んだままだ。
こころの傍にはラナが行ったので、俺はセラスの方へ行って、頭を撫でてやった。でもセラスはうなだれたまま。ラナがそんなセラスをちらりとセラスを見て、
「本当に存在意義の無い奴だ、です」
と軽く揶揄する。セラスはその言葉を聞いて、その場にへたり込む。
「私は…存在意義が無い・・・」
セラスは小さい声で、呟くように言った。
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