うちの居候は最強戦艦!

morikawa

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第2章

2-4

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 ゲーセン近くのハンバーガー屋に入ると、結構人が居た。まあ、そうだよな。休みの日だもんな。

 休日のせいか、家族連れが多い。まあ、人様のご家庭にとやかく言うのもなんだけど、それってどうよ、あまり小さい子供にハンバーガー食わせるのって。こころとセラスを見習って、ちゃんとしたメシを作れよ、若いお母さん諸君。

 混んでる現状に愚痴っていても仕方がないので俺達も列に並ぼうとしたが、人が多いので背の低いセラスには回りが良く見えないようだ。人の波にもまれてモタモタしているので、俺がセラスの手を引いて、ようやく列に並べた。

 やれやれと思いながら、何気なく前方の店員さんを見ると、かなりの美人さんだ。おお、ラッキー! 黒く艶やかな長髪を小さいブルーのリボンで纏め、白い肌に、気が強そうだけど端正で綺麗な顔。俺好みのお姉さんキャラだ! しかも笑顔がちょっとぎこちない感じが可愛い! あれ、でもあの顔どこかで見たような気がするな?

 そんな俺の様子を見たこころが、なぜかむすっとした顔になって、俺の脇腹にパンチを入れて来た。しかも連打で! というか止むことなく! 痛てえ、痛いよ?! べ、別に何かするわけじゃないし、美人さんを見て感動するだけでなんで怒るんだ!? おぱぱ触ってしまったことには怒らないくせに?!

 いや、まあ、正直に言えばそうかな~というか、そうだと良いな~的な推測はあるにはあるが……俺にはどうすれば良いのか分からん……一度はっきり聞いてみた方が良いのだろうか? いや、しかし、本当のところ俺はこころのことをどう思っているのか? ……いや、まあ、分かってはいる。はっきりと、いやこっそりと、だが意を決して言えば、気にはなっていた、ずっと。……初めて会った時から。玄関のドアを開けたら偶然会ったその時から。

 だけど、どうすれば良いんだ? 好きです、付き合って下さいって言えば良いのか? ……他の彼女の居る連中は何て言ったんだろう?

 でも、なんだ、今のこの混乱した状況で、そんなこと言って良いのか? 変な化け物は出てくるし、多分、考えないようにはしてたけど、俺達はその渦中に居るような気もするし。それに……ぶっちゃけ、セラスのことも心配・・・というか気になるし……

 俺が長々と考えにふける間も攻撃は止まなかったので、助けを求めてセラスの方に体を移動させて逃げるが、セラスは俺が見た綺麗なお姉さん、こころが攻撃している原因が見えないらしく、こころの連続パンチを少しきょとんとした顔で眺めているだけだ。結局、こころの攻撃は俺達の番が来るまで続いた……

「いらっしゃいませ。ご、ご注文はお決まりでしょうか?」

 カウンターで迎えてくれた黒髪の店員さんが俺達に例のぎこちない笑顔で挨拶してくれた。う~ん、やっぱり良いな~美人さんだな~しかも声も可愛いし、たまらん! だが、注意しなくては。この感動を表に出すとまた攻撃を受ける……

「そ、それじゃあ、俺はビックのセットをアイスウーロンで……こころと……セラスはどうする?」

 まあ、どうせ食わないのだろうが、一応セラスにも聞こうとセラスに顔を向けると、あの無表情なセラスさんが目を丸く見開いて、口を軽く開けて、目の前を凝視しておられる。

 な、なんだ、と思ってその視線の先を見ると、店員のお姉さんも笑顔を引き攣らせたまま、凍りついたようにぴくりとも動かずにセラスを見ている。

「どうしたの? セラスちゃん?」

 こころが二人の様子を見て尋ねたその時、お姉さんがぴくりと動いた。そして開いた両手でバンと強くカウンターを叩く。すると、ちょうど手の落ちる先にあったプラスチックのトレーが粉々に割れて周囲へ飛び散る。

「うわっ?」

 俺はつい声を上げてしまった。なんちゅー力だ! 良く見るとカウンターもべこっと凹んでるぞ!?

「今までどこに居た。何故緊急通信を出さない。何故こちらの通信を無視した」

 プルプルと怒りに震えながら、手はカウンターの上の置いたままで、お姉さんは呟くように、吐き出すように言う。な、なんだ? 知り合いか?

「……通信は何度か出しました。ここ一週間は行っていませんでしたが・・・」

 セラスはお姉さんから目をそらすように俯きながら、言い訳するように小声で言った。

「返事をしなかったのはなぜだ」

「……もう戦うのは嫌です! 私は別の存在意義を見つけたいんです!」

 セラスはめずらしく大きな、感情的な声で答えた。

「ふざけるな!」

 お姉さんはそう叫びながら、またカウンターを叩いた。激しい音を立てて完全にカウンターは割れてしまう! めちゃくちゃな力だな! に、人間なのか?

「何を甘ったれたことを言っている! 我々が何の為に造られたと思っているんだ! さあ、すぐに……むがぁ?!」

 ブチ切れたお姉さんがセラスへ向けて指を突き出したところで、他の店員さん達がお姉さんを取り押さえて口を塞ぎ、無理やり奥へ引きずって行く。お姉さんはじたばた暴れるが、店員さん達は容赦ない。すぐにその姿は見えなくなった。

「申し訳ございません、お客様。お怪我はございませんか?」

 場を取り繕う様に笑顔で別の店員さんが現れ、俺達に謝罪する。

「セラス、今の人は?」

 俺はとりあえず、店員に大丈夫ですとぺこりと頭を下げながらセラスに尋ねた。

「あれは私の姉のサレナ……姉妹艦の第1号艦、ブラックサレナの中枢体サレナです」

「お姉さんなの?」

 こころが驚いたように言う。そういえば交番に行った時に母と姉が居て自分が殺したとか撃沈したとか物騒なこと言ってたな……でも生きてるじゃん。まあ当然と言えば当然なのだが。

 って、今気が付いた。どこかで見たような気がしていたのだが、セラスに似てたんだ、さっきのお姉さん。まあ、姉妹なんだったらこれも当然か。

 店員さんも姉妹と聞いて安心したのか、無料券を何枚かくれて、店の奥に引っ込んだ。俺達はせっかくなのでその券でハンバーガーを注文して、さすがにここで食う気にはならないので持ち帰りにしてもらって、出された紙袋を抱えてそそくさと店を出た。
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