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第5章
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カーテンの隙間から差し込む朝日で、俺はなんとなく目を覚ました。
俺は布団から体を起こして、横を見る。だけど、セラスは居ない。
少し離れた場所にあるもう一つの布団にはこころが寝ている。ここはアパートの、こころの部屋だ。俺の部屋は2階からラナにぶち抜かれちまったので、俺はこころの部屋に転がり込んでいる。
俺はこころの顔を見た。ぐっすりと眠っている。ホントに可愛いよな。こんな娘とキスまでしちまったんだよな、マジで。
そんな女子と二人っきりで狭い部屋に居る。普段だったらたまらんだろう。もっと先のことをしたいと思うだろう。でも、俺も、多分こころも、そんな気にはなれなかった。
セラスが居ないから。本当に胸にぽっかりと穴が開いたみたいだ。おまけに原因は俺だ。思い当たるフシがあり過ぎる。こころもセラスも可愛いななんてどっち付かずでふらふらして、セラスを傷付けてしまったからだ。罪悪感が胸を押さえつけ、ちくちくと針で刺されてるみたいだ。
俺は壁のカレンダーを見た。細々と学校行事等の予定が書いてある。マメだな、こころは。
今日は登校日、テストの返却日だ。あんまり結果は良くなさそうだけど、どうでも良い。今日と明日でテストを返してもらい、少し経てば夏休みだ。だけどまったくこの重苦しい気分は晴れない。俺は布団から上半身を起こしたまま、ぼんやりとしていた。
「う・・・ん」
目覚ましが鳴る前だが、こころも目を覚ましたようだ。目をちょっと開いて、布団の中でぐっと体を軽く伸ばしてから、もぞもぞと起き出す。
「おはよ・・・」
布団から体を出した、少し寝乱れたこころ。うぅ、ちょっと髪の毛がぼさぼさなところも、薄いパジャマがずれて胸元が覗いているあたりも、たまらん・・・って、こんな時に俺は何を考えているんだ・・・さ、最低過ぎる・・・
こころもきょろきょろと辺りを見渡してから、はあとため息をつく。そしてゆっくりと布団から出た。
「ご飯作るね」
寂しそうに微笑むと、こころは着替えを持って部屋から出て行った。
セラスの作るものに似た味の、いやセラスが似たのか? そんな美味いはずだけど、こころには悪いがモヤモヤした気分のせいで美味く感じなかった朝飯をかき込み、俺とこころは部屋を出る。
そして二人で青いシートが二階から垂れ下がる俺の部屋の向こう側、育子さんの家へと向かう。今はそこにセラスを連れて、カルティ達が居るはずだ。俺はチャイムを鳴らす。
すると、
「どうぞ~、開いてるわよ~」
と緊張感の無いカルティの返事が帰ってくる。俺は無言で玄関のドアを開けた。
「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」
ドアを開けると、なぜか三つ指を付いたメイドに出迎えられた。
な?! しかも挨拶の仕方がなんか違うし! 俺とこころが困惑していると、メイドさんはさらに深く頭を下げた。
「昨日は、大変ご迷惑をお掛けいたしました」
って、今気付いた。育子さんだ、このメイドさん。むぅ、何故か首輪を付けているのが気になるが、美人でナイスバディさんはメイド服も似合うなぁ。
「なんでメイドなんですか?」
「お仕置き中なのよ~」
俺の素朴な問いに、向こうでカルティが答える。罰でメイド・・・まあそういう捉え方もあるのかもしれないが・・・個人的には楽しく着てほしいなぁ。
「あら~? この宇宙では性奴隷ってそういう格好してるんじゃないの~?」
俺の微妙な表情を見たカルティから逆に質問が来る。
「・・・その誤った知識はどこから得た?」
「ん~? この本?」
ぐほっ?! カルティの奴、セラスに見つかった例の秘蔵同人誌をぴらぴらと振ってやがる?!
「この宇宙の文化風俗を知りたかったから、奴隷にコウイチ君の部屋を掃除させつつ適当に漁らせてもらったわよ~?」
「お、俺にもプライバシーってもんがあるんだよ?!」
最近侵害され気味でしたけどね!
「あらあら、ごめんなさいね~。お詫びにこの奴隷を若い性のはけ口として利用しても良いわよ~?」
うごっ?! 何てことを言いやがる・・・だが、俺も最低とはいえ男だ! 妄想は別として愛の無いそういうことはせんわ!
「いらんわ!」
「あらあら~、無様ね~この雌豚。あたなに密かに憧れを持っていであろう、隣のやりたい盛りの少年にすら相手にされないなんて」
「訳分からんこと言うな!」
なぜかしょぼんとしているメイドさんを横目に、俺は部屋に上がり込む。それよりセラスはそうなったんだよ?!
「はいはい、分かってるわよ、セラスでしょ?」
カルティはにこにこ笑いながら言う。分かってるなら最初からその話題にしろよ! 良く分らん奴だな?!
俺達はカルティとグロースさんに案内されて、別の部屋に入る。グロースさんの家は2LDKで、そのうちの一つ、寝室らしい部屋のベッドにセラスとラナが寝ていた。ベッドの横のイスに、サレナも座っている。
「二人ともまったく異常は無い」
セラスの所へ駆け寄った俺達にサレナは告げる。
「じゃあ、なんで起きないんだ?」
「ラナは船体の修復中だから。セラスは精神的な問題」
カルティの答えに、俺はうなだれる。うぅ、やっぱり俺のせいか・・・
「ごめんね、セラスちゃん。セラスちゃんも好一君のこと好きだって分かってたのに・・・もっと気を使うべきだったよ・・・ごめんね、だから起きてよ」
こころはめそめそと泣きながらセラスの髪を撫でる。
「あらあら? 二人のせいじゃないわよ? これも成長には必要なことなのよ~」
なんだそりゃ。
「そう、少女は失恋と嫌な自分を乗り越えて大人の階段を登るのよ~ 」
訳分からん。
「まあ、倒れるとは思ってなかったけどね。自虐的なのは父親から学習したのかしら?」
それは俺のことか? 悪かったな! 良く分からんけど!
「まあ、大丈夫。心配ないわ。セラスはそんなに弱い子じゃないもの。それよりそれより! どうだった~?」
「何が?」
「そのナニが。初体験!」
「ぐほっ! この非常時に何言ってやがる!」
こころ、お前も何か言ってやれ! とこころを見ると、顔を真っ赤にして口を金魚みたいにパクパクやってる。
「あら、その様子じゃまだなの~? 信じられない。愛し合う男女が狭いアパートの部屋に一晩二人っきりで何も起きないなんて・・・」
「セラスがこんなになってる時にそんなことしてられねえよ!」
「なるほど、セラスも入れて三人じゃないとだめなのね?」
セラスが居なきゃってのは合ってるが、三人ってのはカルティの中では卑猥な意味に違いない。これ以上付き合うのも疲れるな。俺はため息をついた。
「そうなの~でも初体験が3Pってのは母さん感心しないわよ」
やっぱりでした。
俺は布団から体を起こして、横を見る。だけど、セラスは居ない。
少し離れた場所にあるもう一つの布団にはこころが寝ている。ここはアパートの、こころの部屋だ。俺の部屋は2階からラナにぶち抜かれちまったので、俺はこころの部屋に転がり込んでいる。
俺はこころの顔を見た。ぐっすりと眠っている。ホントに可愛いよな。こんな娘とキスまでしちまったんだよな、マジで。
そんな女子と二人っきりで狭い部屋に居る。普段だったらたまらんだろう。もっと先のことをしたいと思うだろう。でも、俺も、多分こころも、そんな気にはなれなかった。
セラスが居ないから。本当に胸にぽっかりと穴が開いたみたいだ。おまけに原因は俺だ。思い当たるフシがあり過ぎる。こころもセラスも可愛いななんてどっち付かずでふらふらして、セラスを傷付けてしまったからだ。罪悪感が胸を押さえつけ、ちくちくと針で刺されてるみたいだ。
俺は壁のカレンダーを見た。細々と学校行事等の予定が書いてある。マメだな、こころは。
今日は登校日、テストの返却日だ。あんまり結果は良くなさそうだけど、どうでも良い。今日と明日でテストを返してもらい、少し経てば夏休みだ。だけどまったくこの重苦しい気分は晴れない。俺は布団から上半身を起こしたまま、ぼんやりとしていた。
「う・・・ん」
目覚ましが鳴る前だが、こころも目を覚ましたようだ。目をちょっと開いて、布団の中でぐっと体を軽く伸ばしてから、もぞもぞと起き出す。
「おはよ・・・」
布団から体を出した、少し寝乱れたこころ。うぅ、ちょっと髪の毛がぼさぼさなところも、薄いパジャマがずれて胸元が覗いているあたりも、たまらん・・・って、こんな時に俺は何を考えているんだ・・・さ、最低過ぎる・・・
こころもきょろきょろと辺りを見渡してから、はあとため息をつく。そしてゆっくりと布団から出た。
「ご飯作るね」
寂しそうに微笑むと、こころは着替えを持って部屋から出て行った。
セラスの作るものに似た味の、いやセラスが似たのか? そんな美味いはずだけど、こころには悪いがモヤモヤした気分のせいで美味く感じなかった朝飯をかき込み、俺とこころは部屋を出る。
そして二人で青いシートが二階から垂れ下がる俺の部屋の向こう側、育子さんの家へと向かう。今はそこにセラスを連れて、カルティ達が居るはずだ。俺はチャイムを鳴らす。
すると、
「どうぞ~、開いてるわよ~」
と緊張感の無いカルティの返事が帰ってくる。俺は無言で玄関のドアを開けた。
「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」
ドアを開けると、なぜか三つ指を付いたメイドに出迎えられた。
な?! しかも挨拶の仕方がなんか違うし! 俺とこころが困惑していると、メイドさんはさらに深く頭を下げた。
「昨日は、大変ご迷惑をお掛けいたしました」
って、今気付いた。育子さんだ、このメイドさん。むぅ、何故か首輪を付けているのが気になるが、美人でナイスバディさんはメイド服も似合うなぁ。
「なんでメイドなんですか?」
「お仕置き中なのよ~」
俺の素朴な問いに、向こうでカルティが答える。罰でメイド・・・まあそういう捉え方もあるのかもしれないが・・・個人的には楽しく着てほしいなぁ。
「あら~? この宇宙では性奴隷ってそういう格好してるんじゃないの~?」
俺の微妙な表情を見たカルティから逆に質問が来る。
「・・・その誤った知識はどこから得た?」
「ん~? この本?」
ぐほっ?! カルティの奴、セラスに見つかった例の秘蔵同人誌をぴらぴらと振ってやがる?!
「この宇宙の文化風俗を知りたかったから、奴隷にコウイチ君の部屋を掃除させつつ適当に漁らせてもらったわよ~?」
「お、俺にもプライバシーってもんがあるんだよ?!」
最近侵害され気味でしたけどね!
「あらあら、ごめんなさいね~。お詫びにこの奴隷を若い性のはけ口として利用しても良いわよ~?」
うごっ?! 何てことを言いやがる・・・だが、俺も最低とはいえ男だ! 妄想は別として愛の無いそういうことはせんわ!
「いらんわ!」
「あらあら~、無様ね~この雌豚。あたなに密かに憧れを持っていであろう、隣のやりたい盛りの少年にすら相手にされないなんて」
「訳分からんこと言うな!」
なぜかしょぼんとしているメイドさんを横目に、俺は部屋に上がり込む。それよりセラスはそうなったんだよ?!
「はいはい、分かってるわよ、セラスでしょ?」
カルティはにこにこ笑いながら言う。分かってるなら最初からその話題にしろよ! 良く分らん奴だな?!
俺達はカルティとグロースさんに案内されて、別の部屋に入る。グロースさんの家は2LDKで、そのうちの一つ、寝室らしい部屋のベッドにセラスとラナが寝ていた。ベッドの横のイスに、サレナも座っている。
「二人ともまったく異常は無い」
セラスの所へ駆け寄った俺達にサレナは告げる。
「じゃあ、なんで起きないんだ?」
「ラナは船体の修復中だから。セラスは精神的な問題」
カルティの答えに、俺はうなだれる。うぅ、やっぱり俺のせいか・・・
「ごめんね、セラスちゃん。セラスちゃんも好一君のこと好きだって分かってたのに・・・もっと気を使うべきだったよ・・・ごめんね、だから起きてよ」
こころはめそめそと泣きながらセラスの髪を撫でる。
「あらあら? 二人のせいじゃないわよ? これも成長には必要なことなのよ~」
なんだそりゃ。
「そう、少女は失恋と嫌な自分を乗り越えて大人の階段を登るのよ~ 」
訳分からん。
「まあ、倒れるとは思ってなかったけどね。自虐的なのは父親から学習したのかしら?」
それは俺のことか? 悪かったな! 良く分からんけど!
「まあ、大丈夫。心配ないわ。セラスはそんなに弱い子じゃないもの。それよりそれより! どうだった~?」
「何が?」
「そのナニが。初体験!」
「ぐほっ! この非常時に何言ってやがる!」
こころ、お前も何か言ってやれ! とこころを見ると、顔を真っ赤にして口を金魚みたいにパクパクやってる。
「あら、その様子じゃまだなの~? 信じられない。愛し合う男女が狭いアパートの部屋に一晩二人っきりで何も起きないなんて・・・」
「セラスがこんなになってる時にそんなことしてられねえよ!」
「なるほど、セラスも入れて三人じゃないとだめなのね?」
セラスが居なきゃってのは合ってるが、三人ってのはカルティの中では卑猥な意味に違いない。これ以上付き合うのも疲れるな。俺はため息をついた。
「そうなの~でも初体験が3Pってのは母さん感心しないわよ」
やっぱりでした。
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