うちの居候は最強戦艦!

morikawa

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第5章

5-3

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 俺とこころはセラスの頭をしばらく撫でて話しかけたりしたが、セラスは人形のように横たわったままだった。

 仕方が無いので学校に行くことにする。

 本当は付いていたいのだが、セラスにも、こころに対しても気まずくてこの狭い部屋には居られそうもなかったからだ。俺が居ても何か出来る訳じゃないし・・・

「あ、こころちゃん」

 家を出かけた俺達にカルティが声を掛ける。

「今のうちに既成事実作っちゃった方が良いわよ~? セラスが吹っ切れたら絶対に二人の間に割って入ろうとするから」

 カルティの言葉に、こころは少し悲しそうに微笑んだ。励ますつもりならあんまり効果なかったな。でも、こころの表情が、なぜか少し引っ掛かった。

 登校の間、俺達は無言だった。

 学校に着いても、教室に入っても、授業が始まって休み時間になってもそんな感じ。

 回りは俺達の様子とか、セラスのこととか聞いて来るが、俺は生返事をしているだけだった。こころは根がまじめなせいか、きちんと答えてたけど。まあ、本当のことは言ってないけどな。

 返って来たテストの結果は散々だった。追試を免れただけでも良しとせざるを得ないか。まあ、どうでもいいことだ、今の状況と比べれば。

 学校が終わると、俺とこころはすぐにアパートへ戻り、セラスの部屋へ行く。

 だが、セラスは朝と同じように横になったまま。俺は八つ当たりのようにカルティに尋ねた。

「どうしてセラスをこんな人間のように作ったんだ?」

「理由は二つね~。まずはヴァルミン対策の為。どんなに優秀な機械でも、ヴァルミンに侵入されればその支配を免れることはできない。だけど生物は体内にヴァルミンが入っても乗っ取られることは無いの~。だから、セラス達姉妹は船体と生体機械である中枢体に分けたのよ。中枢部がしっかりしていれば進入されてもコントロールを維持できるし、最悪の場合でも感染した個所をパージすれば良いから~」

「セラス達は人間なのか?!」

「私の遺伝子や他に色々組み合わせて使った有機機械よ~。法律上は人間じゃないわね。まあどう取るかはその人に任せるわ~」

「良いのか、それ?!」

「倫理的にってこと? 許可は取ったし、他に方法が無いわ」

「・・・どのくらい人間なんだ?」

「難しい質問ね~? まあ哲学的要素を抜きにすれば、半分くらいは人間と同じものね~」

 俺はなんともいえない気持ちになって、セラスの頭を撫でた。それしかできなかった。

「あと、セラスについてのみ、もう一つ理由があるわ」

「なんだよ、時空振動砲のことか」

「当たり~それと時空共振エンジンのこともだけどね~。セラスから渡された知識にあったでしょ~?」

「ああ。だけどどう違う?」

「理由は同じだけど、あれは二人の人間が完全に同期しないと動かないのよね~」

「なんだそりゃ?」

「時空に干渉するだけで難しいのに、それのさらに先をやろうってんだから、結構繊細なのよ~」

「訳が分からん」

「ん~、なんて言えばいいかな~? 私達のこの宇宙ね~、まあ難しいことはさておき、ここは物理法則に完全に支配された、固定された世界よね~」

「まあ、そうだよな」

「それを人の精神という、物理法則に縛られない力で、宇宙を、全ての物理運動を揺るがせ崩壊させる~。それが時空振動砲の理論~!」

「そもそも精神って何だよ」

「言葉としての意味は辞書を引いてみて~。私は人の意志の力という意味で使ってるわ~」

「こんな超兵器造っといて意思の力なのかよ?」

「あら、立派な科学よ~? 物理的な力は無いけどね~、人の意思というのは時空に干渉する触媒となり得るのよ~」

「はあ」

「時空共振エンジンも理屈は同じ~。精神で揺れた時空、それを波と考えて~? 二人の人間が居れば二つの波ができるわよね~? その二つの波を共振させる、すなわち完全に同期、合わせるのよ~!」

「ほお」

「時空振動砲単体での起動だと一瞬の干渉で終わってしまうわ~。だけど二つの波が共振すれば安定して、継続して時空に干渉することができる。すなわち継続してエネルギーを生み出せるのよ~。それが時空共振エンジンの理屈~!」

「へえ」

「というわけで、時空振動砲と時空共振エンジンを同時に起動すれば、いくらでもエネルギーを貯めて打てるのよ~!」

「やっぱり訳が分らん!」

「まあ、良いわ~。別に理屈なんて分からなくても使えるし~。要は信頼と愛よ~じゃ、私はラナの修理と改良をしなくちゃいけないから」

 また訳の分からんことを言って、カルティは壁に作られた空間の穴に入って行こうとする。

「ちょ? セラスはどうなってるんだよ?」

「朝と同じよ~? 後はセラスの気持ちが整理できるまで待つしかないわ~」

「いいのかよ、それで!?」

「仕方ないのよ~。セラスが人と同じ精神を持つ為に乗り越えなくちゃいけない壁なのよ~」

「人と同じ?」

「そう~。例えばサレナ達も人とまったく同じ思考や感情を持っている。でも、プログラムされた完成体として生まれたサレナ達の精神は人とは少し違うのよ~」

「そうなのか? 違いが分らんが」

「サレナは迷わないわ~。人は迷うわ~。迷いを乗り越えた精神の方が強いのよ。ラナは出来る限り人に近づけようとしたけど、やっぱり人より少し弱いわ~」

 そういえば、ラナには出力の限界があったな。

「だからセラスは人と同じく赤ちゃんから成長していくしかないのよ~、迷いながらね~」

 カルティはそう言うと無責任にも空間の向こうへ消えて行った。いや、責任転嫁は良くないよな。全部俺のせいだ・・・

 こころを見ると、眠っているセラスの上半身を抱き起こして、髪を梳かしている。好きだな、それやるの。というかセラスも好きだったし、罪滅ぼしのつもりなのだろうか。お前のせいじゃないぞと言ってやりたいが、どう切り出せばいいのか・・・

 育子さんは本当にメイドにされてしまったらしく、メイド服を着たまま庭で洗濯物を干している。だが、穴の向こうからカルティに呼ばれて慌てて穴の中へ行ってしまった。

 そういやサレナが居ないな。向こう側に居るのか? 俺はこころと何も話せないまま、ただこころが嬉しそうにだけど悲しそうにセラスの髪を梳かしているのを見つめていた。
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