ハルカ・カナタの宇宙戦争

morikawa

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第1章

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 ここまで話せば分かってもらえるかと思うけど、私とハルカは、私達の通うこの西高の天文部に入っている。

 といってもまあ、先輩はみんな卒業しちゃったし、顧問の先生も転勤しちゃって、私とハルカしか部員の居ない同好会のようなものなのだけど。

 女子高だとあんまり星に興味持つ人少ないのかな? 星のイベントに行っても、他校の天文部って男子の方が圧倒的に多かったし。

 で、今日はあんまり星が綺麗だから、部活動を臨時開催してるんだ……両親に断らず……だけど。

 でも電話しても出ないんだもん。どうせ二人でいちゃいちゃしながら夕ご飯作ってて、娘からの電話に気付かないんだ。困った親だよ、まったく。いや、ご飯自体はとてもとても楽しみだけど。

「カナタ、終わりましたよ」

 しゃがんでいたハルカが、赤道儀のコントローラーを持ったままゆっくりと立ち上がった。

 もう極軸合わせと、星の位置を入力するアライメント作業も終わっちゃったのか。早いな~、さすがハルカ。私はまださっぱりやり方分からないのに。

「何を見たいですか?」

「うん! 土星、土星!」

 ハルカの問いに、私はウキウキしながら答える。

「良く飽きませんね……何度も見たじゃないですか?」

「何度見ても良いものは良いのだ! ねっ、お願い!」

 私はがしっとハルカに抱きつく。

「はいはい、分かりましたよ……」

 ハルカに操作された赤道儀はウィ~ンとモーターの駆動音をさせながら、自分の上に乗った鏡筒をゆっくりと土星の方角へ向けて行く。

 たまに思うけど、なんだか大砲みたいだよね、これ。いやまあ、大砲を肉眼で見たことはないし、今後も見る機会はないんだろうけども。

 私がそんなことをしているうちに望遠鏡の動きが止まり、ハルカが少しファインダーと接眼レンズを覗きこむ。

「はい、合いましたよ」

「わーい、ありがとー!」

 私はハルカに替わって接眼レンズを覗き込み、調節ノブでピントを合わせる。

 土星さん、今日も結構なお姿で。本当に真っ黒な空間に浮かぶ宝石のようだ。それに本当に今日はシーイングが良い。部の小さな望遠鏡でも、はっきりと輪の隙間も見えるし。

 私はカチリと回転式の接眼部(ターレットレボルバー)を回して、接眼レンズを換えて倍率を上げる。これって便利だよね。部費をはたいた甲斐があったよ!

「ハルカは見ないの?」

 十分に堪能した私がハルカに声を掛けると、

「いえ、私は十二分に見ましたから」

 ハルカはなぜか苦笑いしながら答えた。そして、それから妙に改まった顔をして私に尋ねる。

「それより、行ってみたいと思いませんか? 宇宙に」

 理由は分からないけど、ハルカはたまにこの質問を私にする。他の友達とかにはしないのに。そして私の答えも決まっている。

「う~ん、やっぱりちょっと怖いかなぁ?」

「そうですか……まあ、カナタにはそれが良いのかもしれませんが……」

 ハルカは少しがっかりした顔をする。これもいつものことだ。どういうことなんだろう?

「ハルカは宇宙に行きたいの?」

 いつもと少し変えて、今度は私が尋ねてみた。

「カナタと一緒になら、ですが」

 ハルカは真面目な顔をして、そう答えた。

 それって二人で宇宙飛行士になりたいってことかな?

 ……無理、私の頭じゃ……今の成績じゃあ、憧れの東京の大学も無理っぽい。

 それなりにがんばっても、地元の短大にでも行って、家から通える就職先を探すのが関の山だよ……でもいきなりハルカの夢を壊すのもなぁ……

「そ、そう? じゃあ考えてみるよ」

 とりあえず私はそう言ってお茶を濁した。

「はい、考えておいて下さい」

 ハルカはすごく嬉しそうに微笑む。その笑顔に、私はちょっと胸が痛んだ。

 その時、何かを感じた。何か違和感のようなものを。

 どこ? ってあれ、この近くじゃあないよ。もっともっとずっとずっと遠くだ。

 私はなぜか反射的に夜空を見上げた。そこ? ってなんで私はこんなことを考えているんだろう? 私は昔からカンの良い方だけど、さすがにこれは我ながら変な感じ。勘違いかなあ?

「……良く気が付きましたね。私でもすぐには分からなかったのに……」

 いつの間にか隣に来て、同じく夜空を見上げていたハルカが呟いた。
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