ハルカ・カナタの宇宙戦争

morikawa

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第1章

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 ハルカを前に、私達は一列で自転車を漕ぐ。

 朝はいろいろおしゃべりしながらだったけど、今は無言。ハルカはあれっきり何も言わないし、私も何を聞いたら良いのか分からなかったから。

 ただ、ぼんやりとハルカの後ろ姿を見ながら、昨夜のことを思い出した。

 望遠鏡で良く分からないものを見たこと。ハルカが不思議な様子を見せたこと。それに変な予感がしたこと。そして今朝見てた夢。

 いい加減な性格の私は今まで深く考えてこなかったけど、これって全部繋がっていたのかな、やっぱり。

 そして、ひょっとすると…そこまで考えてた私は、頭をぶんぶんと振って、変な考えを吹き飛ばす。そしてハルカを見る。そんなわけないよね、ハルカ。

 私が珍しく色々と考えているうちに、私達は家へと到着した。ハルカはガレージに自転車を止めて、鍵を掛けてから庭の方へと向かう。私もその後を追った。

 うちの庭は結構広い。土地が安かったんだって。まあ、お母さんがやってる家庭菜園と、お隣との目隠しにささやかな生垣があるくらいで何もないんだけど。

 その真ん中でハルカは足を止めた。そして付いてきた私の方へ向き直る。

「まずは、やはり私の本体を見てもらう必要がありますね」

 ハルカはいつもよりも表情を消して、静かにそう言った。

「本体…」

 私はそう呟く。ハルカの、本体。妹の本体ってのも変な話なんだけど、私は驚いたことに違和感を覚えない。そうだ、私はそれを知っている…?

「光学迷彩を下方だけ解きます。少し視界がぶれますよ?」

 ハルカがそう言うと、ぐらりと周囲の景色が歪んだ。でも別に地震とかが起きた訳じゃないし、私がふらついた訳でもない。目に見えるものが全てぐにゃりと形を変えたんだ。

 だけどそれはほんの一瞬だけ。すぐに視界は元に戻った。大きな何かが私の真上に姿を現したのを除いて、だけど。

「あ、あ…?」

 私は上を向いて、ぽかんと口を開けたままつぶやく。

 真っ黒な、何か。細長い船のような、翼の無い戦闘機のような。

 私の家より確実に大きい。学校の25mプールより長い。そんなものが音も立てずに、浮かんでいる。

 そして私はこれを知っていた。夢の中で見た、そして乗った、あの乗り物が、目の前にある。

 私は口を開いたまま、硬直した首をむりやり曲げ降ろして、ハルカを見る。ハルカはちょっと悲しそうな顔をしながら、

「これが私の本体。リノマ帝国のモルデウス子爵が建造した、共振能力者(ウェーブチューナー)専用戦闘艦『遥かな先へ』号です。思い出しましたか?」

 と、小さいけど良く通る声で言った。
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