春休みの過ち

くねひと

文字の大きさ
9 / 12

#9 今面白いことしてるんだけど…

しおりを挟む
 ジュンはケータイを手に取ると、誰かに電話をかけた。何度目かのコール音の後に誰だか分からないが電話に出たようだ。電話の相手の声まで僕には聞こえない。

「ああ、ショウヘイ? しばらくぶり。ジュンだよ」
 ショウヘイとは僕とジュンの共通の中学校時代の友人で、近所に住んでいる。

「今、コウイチの家にいるんだけどさ……」
 僕は真っ青になった。ジュンの電話は続く。
「お前も遊びに来ないか? 今面白いことしてるんだけど…」

「だ、駄目!」
 大声を出してはショウヘイに聞きとがめられてしまう。僕は押し殺した声で抗議した。そしてジュンの電話を止めさせるため、立ち上がりジュンに詰め寄ろうとしたのだが、そのときまたしても急所縛りの紐がピンと張り、下半身を襲う激痛に僕は呻いた。僕はただヤキモキしながらジュンを見つめているしかなかった。

 ジュンはニヤニヤしながらケータイの通話口を手で押さえ、
「じゃあする?」
 これも僕同様ショウヘイに聞かれないように、小声で尋ねる。

「する、するよ!」
 僕は大きく何度もうなずいた。
 ケータイの向こうでは、ショウヘイが何か話しているらしい。しばらくジュンはショウヘイの話を聞いた後、唐突に言った。
「あ、悪い、うっかりしてた。用事を思い出した。僕はこれから帰らなくちゃいけないんだ。また電話するから」
 そこで電話は切れたようだった。

(助かった……)
 こんな浅ましい姿をショウヘイにまで晒したくはなかった。でも、その代償として僕はジュンに口舌奉仕をしなければならなくなった。

(そんなこと……本当にできるのだろうか………?)
 ほっとした気持ちと、不安な気持ちがないまぜになって、悶々としている僕の耳に、唐突ジュンのケータイが当てられた。

(何か声が聞こえる…)

 ジュンは電話を切っていなかったのだ!
 僕は緊張し、顔は真っ青になった。
(ジュンは僕からもショウヘイに何か話せというのだろうか?…)

「……の方は1を、……そうでない方は2を………」

(ん…? 何か変だ)
 第一ケータイから聞こえてくる声は女性の声だった。
「…初めからお聞きされたい方は3を押してください………」

 僕は思わずジュンを見上げた。ジュンはゲラゲラと笑っている。
 これはどこかの会社の自動応答の音声サービスガイドだ。ジュンはショウヘイに電話したのではなかった。さっきの電話はジュンの一人芝居だったのだ。

「だ、騙したの?」
 僕の声には少し怒気が含まれていたのだろう。
 言い訳するようにジュンが応えた。

「だましてなんかないよ。さっきのは予行練習だよ」
「予行練習?……」
「これから本当にショウヘイに電話かけてもいいんだよ。でもさっきのお芝居でお前はショウヘイに来られるよりはフェラチオすることを選んだだろう?」

 確かに、……確かにジュンの言うとおりだった。
「だったら、さっきの電話がウソだろうとホントだろうとどっちでもいいじゃないか」

 僕は深くうなだれた。ジュンはそれを見て、もう僕の怒りは静まり、承諾したと思ったのだろう。ベッドの脚に結ばれた急所縛りの紐をほどくと、それを手に取り、キュッと引っ張った。

「さあ、約束を守ってもらおうか」
 顔を上げるとジーパンの開かれたチャックから覗いたジュンの肉茎がすぐ目の前にあった。
 僕はゴクリと生唾を飲み込んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司と俺のSM関係

雫@不定期更新
BL
タイトルの通りです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

処理中です...