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第3章 【運営案件】レトロゲータッグマッチ選手権!
第17話 え⁉ 私が先輩と公式案件やるんですか⁉(後編)
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「さぁ、はじまりましたDStarsゲームチーム&3期生レトロゲー合戦」
「「「「「「「「わーっ!!!!」」」」」」」」
「司会は私、DStars事務員兼広報兼裏方のBちゃんでおおくりします!」
自称裏方。
けど、実質的VTuber。
コアなファンが多い事務員Bちゃんの音頭で公式企画はスタートした。
告知から三日で立ち上がったスピード企画。しかも生配信。
奇跡的にゲームチームと3期生のスケジュールが空いていたというが、社長の肝いり企画ということもあり、みんな忖度して都合をつけたのだ。
社会人は辛いよ。
事務所5階の配信スタジオに一堂に会しての撮影。
いつもは3D配信の収録で使う部屋。そこに三人掛けのテーブルと大型液晶ディスプレイ、3D配信用の高性能デスクトップパソコンにミニファミコンが置いてある。
ここでゲームをしろというわけだ。
配信者たちの耳にはゲーミングイヤホンセット(無線)。
私たちはおのおの好きな立ち位置で公式企画のオープニングを見守っていた。
「今回お集まりいただいたのは、ゲームチームから生駒すず、秋田ぽめら、青葉ずんだ。休業中の津軽りんごに代わって、羽曳野あひるの4名!」
まずは先輩たちの紹介から。
配信画面には左からBちゃんが呼んだ順に彼女たちの立ち絵が表示される。
「よしゃー! ゲームチームリーダーの実力見せちゃうよ!」
「懐かしいゲームばかりですね。せいいっぱい頑張ります」
「おうおうおう! レトロゲーでずんだに勝てる奴なんておらんでな!」
「りんごの代打のあひるです。レトロゲー初心者です。対戦よろしくお願いします」
すずちゃんから順に特待生たちが挨拶を終える。
続いて、3期生に話が移る。
「3期生からは、八丈島うみ、川崎ばにら、石清水しのぎ、五十鈴えるふの4名!」
「はわわどうしよー! ファミコンなんてー、お婆ちゃんの家にあるのしか見たことありまてーん! はぁ、嘘吐くな? おいコラ誰だ今言った奴! 出てこいや!」
「ずんだ先輩と併走コラボした次の週にこれとは! 今度は負けないバニ!」
「拙者、こう見えてレトロゲーも結構やるんです。ゼルダの伝説とか」
「古のエルフですがあまりレトロゲーはやらないですね。けど、頑張りますよ!」
こちらも呼ばれた順から挨拶をしていく。
総勢8名。
そうそうたるDStarsメンバーが配信スタジオに集結した。
「さて、ちょうど人数は偶数。そして、集まったメンバーはゲームチームと3期生ということで、ここはやはり両陣営に分かれてのチーム戦というのが熱いかなと」
Bちゃんが企画の意図を説明するや、さっそくリーダー格のふたりが騒ぎだす。
「やるか3期生! ゲームチームの力を見せつけてやるぜ!」
「すずちゃん! WEBラジオの絆を忘れたの! やさしい気持ちを取り戻して!」
「ふはは、そんな絆、秒で忘れてやったわ!」
すず先輩とうみがラジオで培った空気で場を温める。
正直、「ふたりが場を盛り上げてくれて助かるなぁ」と、そのやりとりを眺めていた私の肩を、ちょいちょいと誰かが突いた。
振り返るとニットセーター姿のぽめら先輩。
にっこりと笑って彼女はヘッドセットのマイク入力をOFFにした。
「ばにら。久しぶり。つっても、一週間ぶりくらいか」
「そうですバニね」
「配信、間に合ってよかったね」
「ほんと、あの日は生きた心地がしませんでしたよ」
「あはははは。金盾で気が張ってたのが、達成して緩んじゃったのかな」
「ずんだ先輩の家で配信させてもらえなかったら、どうなっていたことやら」
「え? ずんだの家に行ったの?」
「……そうですけど?」
「ずんだが家に上げるなんて、よっぽど気に入られてるのね」
「そうなんですかね……?」
ちらりと私はずんだ先輩の様子を盗み見る。
七分袖の黒いシャツにぴちっとしたスリムなデニムパンツ。
髪はバイクに乗った時のようにくるりと後頭部でお団子にまとめている。
配信スタジオの壁にもたれかかって、ずんだ先輩は今にも舌打ちしそうな苦々しい顔をしていた。
今日もDStars「氷の女王」は絶好調だ。
(気に入られているのかな、私?)
あの日の併走コラボで、ずんだ先輩のことを少し理解できたと感じている。
しかし、自分が彼女に好かれている実感は正直ない。
私は、少なくとも苦手ではなくなったけれど。
「いまいち、なに考えてるか分からないですよね、ずんだ先輩って」
「そうだね。ずんだは人に自分を晒すのが嫌いだから」
「……そう言えば、ぽめら先輩もずんだ先輩と仲良いですよね?」
「まぁね。歳が離れてるし」
「歳ですか?」
「ずんだも『目上』として接することができるのよ。逆に、ばにらたちみたいに歳が近いと、競争意識が働くからどうしても仲良くなりにくいよね」
「そんなものですかね?」
「そんなものよ。だから、本当にずんだが心を許してる相手は少ないのよね」
私たちの視線に気づいてずんだ先輩が振り返る。「なに見てるのよ!」とでも言いたげに、彼女はこちらを「キッ!」とにらみ返してきた。
これ、絶対に許されてない奴バニですやん。
私とぽめら先輩はあわてて彼女に背中を向けた。
そんな中、Bちゃんがいよいよ白熱するすず先輩とうみの間に割って入る。
「はい。すずさんとうみさん、さっそくのプロレスありがとうございます。けれど、せっかくですが今日はちょっと趣向を変えてやってみようかなと思います」
「なんだって! それじゃ、この流れは全部無駄ってこと⁉」
「そうなりますね」
話の流れが変わった。
思わずその場にいる全員が司会のBちゃんに視線を注ぐ。
「ゲームチームVS3期生だと流石に新鮮味がない。『せっかく企画でやるなら、新しい可能性を試したい』と、この企画の発案者からリクエストされています」
「誰だそんな迷惑なこと言った奴! 社長か! 社長が言ったんけ!」
「オラーッ! 相変わらず無茶振りすんじゃねー! 出てこい社長ォ!」
「というわけで、みなさんにはゲームチームと3期生でコンビを組んでチームになっていただきます。4チーム対抗のレトロゲーム大会ということですね。ちなみに、ゲームの腕前のバランスを取るために、運営でコンビは決めさせていただきました」
部屋の隅に置かれていたホワイトボードをBちゃんがこっちに持ってくる。
くるりとそれを回せば、そこに組み分けが書かれていた。
赤チーム、秋田ぽめら&八丈島うみ。
青チーム、生駒すず&五十鈴えるふ。
緑チーム、羽曳野あひる&石清水しのぎ。
そして――。
「……黄チーム、青葉ずんだ&川崎ばにら!」
「あら、どうやら社長はまだ、ずんだとばにらで『百合営業』をしたいみたいね」
まさかの私とずんだ先輩の名前がそこには並んでいた。
公式案件を使って強制的に「百合営業」をさせるなんて。
流石にそこまでするとは想像していなかった。
ずんだ先輩より社長の方が一枚上手だったか。
絶望して震える私の横で「やられた」という冷たい呟きが聞こえた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
強制された「百合営業」の先に本当の「百合」は……いや、「愛」はあるのかい! 気になる方はどうか評価お願いいたします。m(__)m
「「「「「「「「わーっ!!!!」」」」」」」」
「司会は私、DStars事務員兼広報兼裏方のBちゃんでおおくりします!」
自称裏方。
けど、実質的VTuber。
コアなファンが多い事務員Bちゃんの音頭で公式企画はスタートした。
告知から三日で立ち上がったスピード企画。しかも生配信。
奇跡的にゲームチームと3期生のスケジュールが空いていたというが、社長の肝いり企画ということもあり、みんな忖度して都合をつけたのだ。
社会人は辛いよ。
事務所5階の配信スタジオに一堂に会しての撮影。
いつもは3D配信の収録で使う部屋。そこに三人掛けのテーブルと大型液晶ディスプレイ、3D配信用の高性能デスクトップパソコンにミニファミコンが置いてある。
ここでゲームをしろというわけだ。
配信者たちの耳にはゲーミングイヤホンセット(無線)。
私たちはおのおの好きな立ち位置で公式企画のオープニングを見守っていた。
「今回お集まりいただいたのは、ゲームチームから生駒すず、秋田ぽめら、青葉ずんだ。休業中の津軽りんごに代わって、羽曳野あひるの4名!」
まずは先輩たちの紹介から。
配信画面には左からBちゃんが呼んだ順に彼女たちの立ち絵が表示される。
「よしゃー! ゲームチームリーダーの実力見せちゃうよ!」
「懐かしいゲームばかりですね。せいいっぱい頑張ります」
「おうおうおう! レトロゲーでずんだに勝てる奴なんておらんでな!」
「りんごの代打のあひるです。レトロゲー初心者です。対戦よろしくお願いします」
すずちゃんから順に特待生たちが挨拶を終える。
続いて、3期生に話が移る。
「3期生からは、八丈島うみ、川崎ばにら、石清水しのぎ、五十鈴えるふの4名!」
「はわわどうしよー! ファミコンなんてー、お婆ちゃんの家にあるのしか見たことありまてーん! はぁ、嘘吐くな? おいコラ誰だ今言った奴! 出てこいや!」
「ずんだ先輩と併走コラボした次の週にこれとは! 今度は負けないバニ!」
「拙者、こう見えてレトロゲーも結構やるんです。ゼルダの伝説とか」
「古のエルフですがあまりレトロゲーはやらないですね。けど、頑張りますよ!」
こちらも呼ばれた順から挨拶をしていく。
総勢8名。
そうそうたるDStarsメンバーが配信スタジオに集結した。
「さて、ちょうど人数は偶数。そして、集まったメンバーはゲームチームと3期生ということで、ここはやはり両陣営に分かれてのチーム戦というのが熱いかなと」
Bちゃんが企画の意図を説明するや、さっそくリーダー格のふたりが騒ぎだす。
「やるか3期生! ゲームチームの力を見せつけてやるぜ!」
「すずちゃん! WEBラジオの絆を忘れたの! やさしい気持ちを取り戻して!」
「ふはは、そんな絆、秒で忘れてやったわ!」
すず先輩とうみがラジオで培った空気で場を温める。
正直、「ふたりが場を盛り上げてくれて助かるなぁ」と、そのやりとりを眺めていた私の肩を、ちょいちょいと誰かが突いた。
振り返るとニットセーター姿のぽめら先輩。
にっこりと笑って彼女はヘッドセットのマイク入力をOFFにした。
「ばにら。久しぶり。つっても、一週間ぶりくらいか」
「そうですバニね」
「配信、間に合ってよかったね」
「ほんと、あの日は生きた心地がしませんでしたよ」
「あはははは。金盾で気が張ってたのが、達成して緩んじゃったのかな」
「ずんだ先輩の家で配信させてもらえなかったら、どうなっていたことやら」
「え? ずんだの家に行ったの?」
「……そうですけど?」
「ずんだが家に上げるなんて、よっぽど気に入られてるのね」
「そうなんですかね……?」
ちらりと私はずんだ先輩の様子を盗み見る。
七分袖の黒いシャツにぴちっとしたスリムなデニムパンツ。
髪はバイクに乗った時のようにくるりと後頭部でお団子にまとめている。
配信スタジオの壁にもたれかかって、ずんだ先輩は今にも舌打ちしそうな苦々しい顔をしていた。
今日もDStars「氷の女王」は絶好調だ。
(気に入られているのかな、私?)
あの日の併走コラボで、ずんだ先輩のことを少し理解できたと感じている。
しかし、自分が彼女に好かれている実感は正直ない。
私は、少なくとも苦手ではなくなったけれど。
「いまいち、なに考えてるか分からないですよね、ずんだ先輩って」
「そうだね。ずんだは人に自分を晒すのが嫌いだから」
「……そう言えば、ぽめら先輩もずんだ先輩と仲良いですよね?」
「まぁね。歳が離れてるし」
「歳ですか?」
「ずんだも『目上』として接することができるのよ。逆に、ばにらたちみたいに歳が近いと、競争意識が働くからどうしても仲良くなりにくいよね」
「そんなものですかね?」
「そんなものよ。だから、本当にずんだが心を許してる相手は少ないのよね」
私たちの視線に気づいてずんだ先輩が振り返る。「なに見てるのよ!」とでも言いたげに、彼女はこちらを「キッ!」とにらみ返してきた。
これ、絶対に許されてない奴バニですやん。
私とぽめら先輩はあわてて彼女に背中を向けた。
そんな中、Bちゃんがいよいよ白熱するすず先輩とうみの間に割って入る。
「はい。すずさんとうみさん、さっそくのプロレスありがとうございます。けれど、せっかくですが今日はちょっと趣向を変えてやってみようかなと思います」
「なんだって! それじゃ、この流れは全部無駄ってこと⁉」
「そうなりますね」
話の流れが変わった。
思わずその場にいる全員が司会のBちゃんに視線を注ぐ。
「ゲームチームVS3期生だと流石に新鮮味がない。『せっかく企画でやるなら、新しい可能性を試したい』と、この企画の発案者からリクエストされています」
「誰だそんな迷惑なこと言った奴! 社長か! 社長が言ったんけ!」
「オラーッ! 相変わらず無茶振りすんじゃねー! 出てこい社長ォ!」
「というわけで、みなさんにはゲームチームと3期生でコンビを組んでチームになっていただきます。4チーム対抗のレトロゲーム大会ということですね。ちなみに、ゲームの腕前のバランスを取るために、運営でコンビは決めさせていただきました」
部屋の隅に置かれていたホワイトボードをBちゃんがこっちに持ってくる。
くるりとそれを回せば、そこに組み分けが書かれていた。
赤チーム、秋田ぽめら&八丈島うみ。
青チーム、生駒すず&五十鈴えるふ。
緑チーム、羽曳野あひる&石清水しのぎ。
そして――。
「……黄チーム、青葉ずんだ&川崎ばにら!」
「あら、どうやら社長はまだ、ずんだとばにらで『百合営業』をしたいみたいね」
まさかの私とずんだ先輩の名前がそこには並んでいた。
公式案件を使って強制的に「百合営業」をさせるなんて。
流石にそこまでするとは想像していなかった。
ずんだ先輩より社長の方が一枚上手だったか。
絶望して震える私の横で「やられた」という冷たい呟きが聞こえた。
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