VTuberなんだけど百合営業することになった。

kattern@GCN文庫5/20新刊

文字の大きさ
52 / 79
第7章 だっだっだ うぉおぉ 大乱闘! スマッシュDスターズ

第51話 曝かれたのは……?(前編)

しおりを挟む
「いやぁー、なかなかやるじゃない! ばにらちゃん、うみちゃん! 僕を相手に格闘ゲームで勝つなんて! おめでとう!」

「ありがとうございます! ぶっちゃけ、勝てると思ってませんでした! 今回の勝利は――ばにらと私の愛が起こした軌跡です!」

「気持ち悪いこと言うんじゃねえ! けど、本当に勝ててよかったバニです! 負けたら、どんな罰ゲームをさせられたかと思うと――!」

「罰ゲーム? そんなものはないよ?」

「「……はい?」」

「今日は可愛い後輩とずんさんで楽しくゲームするだけの配信だから。別に『負けた方が罰ゲームね?』とか約束してないでしょ?」

「いやけど、ほら、お約束的に」

「ばにらちゃん? お約束は……破るから面白いんじゃないか!(満面の笑み)」

「……こんの泥棒猫!!!!」

「にゃはははははは!!!!」

 こんだけの熱戦を繰り広げて罰ゲームなし。
 まさかの「ただゲームして終わり」というオチで『初代スマブラ対決コラボ』は幕を閉じた。

 リスナーから文句を言われると思ったが、「負けて罰ゲームを言い出さないのがりんごらしい」「勝ってたら言ってた」「詐欺のテクニックよ」と好評であった。

 解せぬ。

 釈然としないものがあったが、まぁ実害がないならそれでよし。
 まったく活躍できなかった美月さんを軽く元気づけて、「またこの四人でコラボしようね!」と約束すると配信を終えた。

 りんご先輩の配信終了画面が液晶テレビに流れる。
 サブPCでライブ配信が終了になったのを確認し、私たちは揃って溜息を吐いた。

 手に汗握る激闘に疲労困憊だ。
 こうなると甘い物で栄養補給がしたい。
 うみが買って来たチーズケーキをりんご先輩が切るというので、配信終了後の反省会も兼ねて軽いお茶会をすることになった。

 りんご先輩と一緒に私もキッチンに立つ。
 彼女がチーズケーキを器用に切り分ける横で、私は美月さん愛用のティーポットで四人分の紅茶を淹れた。

「へぇ、ばにらちゃん、紅茶淹れるの上手だね? どこで習ったの?」

「紅茶なんて習うもんじゃないでしょ? バカにしてます?」

「してないしてない! も~、なんでそんなにツンケンするの? 僕はただ、ばにらちゃんともっと仲良くなりたいだけなのに~!」

 仲良くなりたい相手を自分の土俵でボコろうとします?

 どうにも信用ならない先輩を私は睨む。すると、銀髪の王子様は「まいったな」と手を挙げて降参のポーズをとった。ただ、顔は相変わらず満面の笑顔で。

 本当にうさんくさい先輩だ。
 今日のコラボも何が目的だったんだ。
 配信終了しても彼女の腹の内はさっぱり分からない。

 ケーキを4皿と紅茶を4カップ。
 私とりんご先輩でダイニングキッチンのテーブルへと運ぶ。
 うみが気を利かして配信機材を片づけてくれたので、すぐに私たちは彼女の手土産に向かって手を合わせた。

「あ、美味しい。素朴な味でいいわね、このチーズケーキ」

「大阪の味ですからね。委員長は関西に行ったら『りくろーおじさんの焼きたてチーズケーキ』と『551の肉まん』は必ず買って帰りますね」

「いいねー! 『551の肉まん』! そっちはなんで買って来なかったの?」

「いや、なんでって……ずんだ先輩には似合わないでしょ『551の肉まん』!」

「そんなことないよね~? ねぇ、ずんさん?」

「私は肉まんよりあんまんの方が好きかなぁ……」

 美月さんてばまた見栄を張ってる。
 ロカボダイエットとか言って甘い物を控えてるくせに。
 そのくせ「コンビニでするめやカルパスって買いづらいのよね。花楓が買って来てくれるからほんと助かるわ」って、宅呑みのたびに私におつまみ頼むくせに。

 ほんとこの世は嘘ばかり。
 私のじとっとした視線に『氷の女王』が、ほんのり顔を赤らめた。

「あら、これ底にレーズンが入ってるのね。ばにら、レーズン食べられたっけ?」

「……本当だ!」

「仕方ないわねぇ。ほら、食べてあげるから寄こしなさい」

「すみません。それじゃお言葉に甘えて……」

 言われてチーズケーキの底にレーズンが入っていることに気づく。
 あの独特の渋みが苦手な私は、おつまみやお菓子に出てくると、美月さんに食べてもらっている。食べる前に気が付いてよかった。
 私はケーキの底をスプーンでこそぎ、レーズンを美月さんのお皿に移す――。

 すると、なぜかうみが青い顔をした。
 逆にりんご先輩は、によによと笑顔を浮かべている。

 なに?
 私たち、なにかしました?

「え、ばにらさんちょっと?」

「どうしたのうみ? そんなドン引きするような顔して?」

「いやいやいや! なにをずんだ先輩に、ナチュラルにレーズン食べさせてんの! お前それ、仲の良いカップルの『無自覚イチャコラ』やぞ?」

「なに言ってるバニか。これくらい別に普通じゃないバニか。ねぇ、ずんだ先輩?」

 すぐ、美月さんに同意を求めたが返事がない。
 りんご先輩に睨まれた彼女は、額から汗を流して白目を剥いている。
 その表情でようやく私も自覚した。

 やっちまった――!

 たしかにうみの言う通り。
 これ、カップルの『無自覚イチャコラ』だ。

「ふーん、ずんさんてば、ばにらちゃんの嫌いなものまで知ってるんだ? 随分と仲がいいんだね? しかも、代わりにたべてあげるなんて……や~さ~し~い~!」

「違うの! いただいたお土産を残すのは勿体ないから!」

「打ち上げでもいろいろお世話してたよね? からあげにレモンかけないとか、たこ焼きにはマヨネーズかけるとか? 随分ばにらちゃんに詳しいよね? いつの間に、ばにらちゃん博士になっちゃたのかなぁ?」

「ほ、本当にこれはその……!」

 助けを求める視線が美月さんから飛んでくる。
 求められても困るけど、涙目テンパり状態の先輩を放っておけない。

 というか、これ普通にまずい奴では?
 百合営業以上のお付き合いがバレちゃう奴では?
 あと、美月さんとの関係について相談しているうみが、ドン引きしているってことは、「ちょっと仲良い先輩・後輩」では説明つかない内容なのでは?

 嫌いな食べ物を食べてあげくるくらい普通じゃないの?
 百合的にガチな行為だったの?
 教えて――百合に詳しい人!

 どんどんと緊迫するダイニングキッチンの空気。
 青ざめていくずんだ先輩の顔色。

 今は狼狽えている場合じゃない。
 必死に言い訳を考えた私は――。

「ま、前にばにらが配信で言ってたのを覚えていてくれたんバニな! 流石はずんだ先輩! 百合営業相手のことをちゃんと把握してる!」

「そ、そうそう! そうだったよね! 前に自己紹介番組だったか、三期生のクイズ番組で言ってたものね! それを思い出して――ついやちゃったのよ!」

 百合営業相手のプロフィールくらい当然知っていると誤魔化そうとした。

「いや! そうじゃないんだワ! 『嫌いなものを食べてあげる』っていう行動が、ガチ百合なんだワ! てぇてぇなんだわ!」

「百合営業相手でも――嫌いなものを食べてあげるなんてしないと思うなぁ~?」

 違った。
 本当に誤魔化さなくちゃいけないのはそっちじゃなかった。
 ナチュラルに「嫌いなものを相手にゆずった&もらった」方だった。

 これほんと、どうやって誤魔化すんだ?
 詰んだんじゃねぇ?

 背筋を冷たいものが走る中、りんご先輩が私に向かって微笑んだ――気がした。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 うみの前で曝かれたずんだとの関係。
 ビジネス百合ということにして、ちょっと重ための感情をほのめかしてきましたが、ここまで百合が進行していたとは――と絶句する、センシティブ委員長。
 そしてほくそえむ泥棒猫。

 しかしまだこれ前編なのよね。まだまだ、DStarsの黒幕がしかけた罠がばにらたちを襲う――「ばにら、強く生きて!」と思った方は、ぜひぜひ評価のほどよろしくお願いいたします。m(__)m
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...