VTuberなんだけど百合営業することになった。

kattern@GCN文庫5/20新刊

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第9章 エンドラ討伐隊

第66話 すごいよ! ニーナちゃん!(後編)

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 材料収集は思いのほか順調に進んだ。

 私と要塞に湧く『ブレイズ』を狩るニーナちゃん。
 彼女のAIM(弓や銃などで敵を射貫く能力)はかなり正確で、攻撃範囲外から一方的に敵を倒していく。負けじと私もトライデントで敵に大ダメージを与える。
 気が付けば『ブレイズパウダー』の材料は集まっていた。

 もう少し狩りを楽しみたいが――今日の目的はエンドラ討伐。

「そろそろ戻ろっかニーナちゃん! レッツゴーエスケープ!」

「OK! エスケープ!」

 追いかけてくる『ブレイズ』を牽制しながら、私たちは元来た通路を戻った。

 一方、すず先輩とあひる先輩は――。

「なにこの断末魔! すずちゃん! この敵めっちゃ怖いんだけれど!」

「大丈夫大丈夫! そのうち癖になるから!」

「癖になるのォ⁉」

「おうおうエンダーマン! 今日もいい声で鳴いてくれるじゃねえか! その鳴き声が、すずの嗜虐心を昂ぶらせてくれるぜ! ふへへへへ!」

「すずちゃん⁉」

「今日もエンダーマンの悲鳴で、ごはんがうまうまうまうま!」

「大丈夫⁉ ゲームのしすぎでおかしくなってない⁉」

 順調に『エンダーマン』(エンダーパールを落とすモンスター)を狩っていた。
 ブレイズと違い『エンダーパール』のドロップ率が低い『エンダーマン』。集めるのに手間取るかなと心配していたけど、うまくやっているみたいだ。

 流石はすず先輩。

 あひる先輩は、エンダーマンに負けないくらいうるさかったが。

「よし! ばにらちゃん、ニーナちゃん! こっちも10個、エンダーパールゲットしたよ! これからあひるちゃんと一緒に戻るね!」

「おつかれさまですバニ! すず先輩! あひる先輩!」

 ここまでは順調。
 時間もほぼ予定通り。
 むしろ早いくらいだ。

 やはり、ニーナちゃんとすず先輩のマイクラの腕が凄いのが大きい。
 私も公式サーバーの公開に合わせて練習したけれど――とても敵わない。
 あひる先輩が「ニーナちゃんは元々アイドル」だと言っていたが、とても信じられない。ゲーマー顔負けの確かなゲーミングセンスを感じた。

 これはとんでもない逸材が現れた。
 うかうかしていると、あっという間に抜かされる。

 未来のニーナちゃんの人気に思いを馳せながら、私はネザーゲート前でアイテムを整理する。エンダーチェスト(特殊な道具箱。中にアイテムを入れると他のエンダーチェストと中身が共有される)に、『ブレイズパウダー』の材料を収めながら、私はふと液晶画面の下に置いたスマホに目を向けた。

 スマホには美月さんとりんご先輩の配信が流れている。
 予告していたマイクラコラボだ。

 ミュートにしているので何を話しているかは分からない。
 だが、どうやらブランチマイニング(マイクラで鉱石を採掘する効率的な手法)をしているらしい。

 鉄ピッケルと鉄スコップで、もりもりと地下を掘っていく青葉ずんだ。
 地味な配信だが、その姿に、私は一瞬だけ我を忘れた。

 その一瞬が命取りだった――。

『(インドネシア語)ばにら先輩! 上! 上をみてください!』

「へっ……? きゃああああっ!」

 ニーナちゃんが叫んでいるのは分かった。
 ただ、咄嗟にインドネシア語が出たのだろう。
 意味が分からないうちに――私は爆発で吹き飛んだ。

 アバターが炎に包まれる。
 マグマへの落下死こそ免れたが、一瞬にして体力の半分が奪われた。
 私は無我夢中でネザー要塞に向かう通路へ逃げ込む。

 炎に包まれるネザーゲート。
 その時、ヘッドホンから亡霊のような鳴き声が聞こえた――。

「どうしたのばにらちゃん! 事件性のある悲鳴が聞こえたけれど!」

「……がっちゃんです! がっちゃんに遭遇しました!」

 がっちゃん。
 正式名称『ガスト』。

 ネザーで最も出会いたくない危険なモンスターだ。

 ネザーの空をふよふよと浮遊する巨大な白いクラゲ。
 体力は『エンダーマン』や『ブレイズ』と比べると低いが攻撃を当てにくいのだ。

 さらに、厄介なのはその攻撃。
 口から吐く火炎弾は周囲のブロックを巻き込み爆発し、直撃すれば大ダメージを受ける。また、爆心地の周囲のブロックを炎上させ、ダメージ床に変換する。

 近接武器しか持たずにエンカウントしたらほぼ詰み。
 火炎弾を打ち返せるが――慣れないとタイミングを合わせるのが難しい。
 さらに、他のモンスターと交戦している状態なら最悪だ。

 幸い、今回は周囲に他のモンスターはいなかったが――。

「……あっ! しまった、さっきの爆発でネザーゲートが!」

 ガストの放った攻撃で、私たちのネザーゲートが破壊されていた。
 ゲート自体は残っているが中のワープホールが消失している。

 これでは、元の世界に戻ることができない。

「ニーナちゃん、『火打ち石』持ってる? ドゥーユーハブ、ファイアロック?」

「ファイアロック? ソーリ、アイドントハブ……」

「やっちまったバニ。ばにーらも、ネザーゲートが破壊されるのは想定外ばによ」

 再びワープゲートを開くには、『火打ち石と打ち金』で黒曜石のゲートに火をつける必要がある。しかし、冒険に必要のないアイテムを持っているはずがない。

 万事休すか。
 まさかネザーに閉じ込められるとは。

 すず先輩に向こう側からネザーゲートを再起動してもらおうか。
 いや、その前にガストをどうにかしなくては。
 マイクラはワープの待機中にも敵が攻撃してくる。

 私は急いで対策を練った――。

「まずは、こっちでガストを倒す。それから、なんとかしてネザーゲートを再起動する。あるいは、すず先輩に向こうからネザーゲートを再起動してもらう……」

 まさかニーナちゃんの初配信でこんなピンチに陥るなんて。
 不甲斐なさに、私は液晶モニタの前でうなだれた。
 FaceRigが、そんな私の表情を読み取り『川崎ばにら』の顔を曇らせる。

 その時だった――。

「ばにらシャチョー! ジャストモーメントプリーズ!」

「……ニーナちゃん?」

 英語で「ちょっと待って!」と言うと、ニーナちゃんが通路から飛び出す。
 威嚇するがっちゃん。しかし、爆発音より早く、矢が風を切る音が聞こえてくる。続いて響いたのは、丸石の壁越しにも聞こえるがっちゃんの断末魔。
 どうやらニーナちゃんが、がっちゃんを倒したようだ。

 しばらくすると、彼女は通路に戻ってくる。
 それから――何を思ったのかおもむろに作業台を設置した。

『(英語)ネザーゲートは「火打ち石と打ち金」がなくても起動することができます。ようは炎を発生させればいいんです』

「え、なんて? なんて言ってるバニ、あひる先輩!」

「他のアイテムでネザーゲートを起動できるって!」

「嘘でしょ⁉ そんな方法あるバニか⁉」

『(英語)ガストがドロップした「火薬」と私たちが集めた「ブレイズパウダー」、そして念の為に持って来ていた「木炭」を混ぜれば……「ファイヤチャージ(発火剤)」の完成です! これをネザーゲートにぶつけてゲートを再起動します!』

 クラフトしたのは『ファイヤチャージ』。
 ニーナちゃんはネザーゲートに近づくと、黒曜石の端にそれを投げつける。

 すると――紫色をしたワープホールが本当に復活した。

 すごい。
 こんなネザーゲートの起動方法があったなんて。
 まったく知らなかった。

 すず先輩も知らなかったらしく、「えーっ! そんな方法でも着くんですかぁ⁉」と声をあげる。『エンドラRTA走者』の彼女も知らないなんて――。

「ニーナちゃん! 恐ろしい子やで!」

「ばにらシャチョー! ハリアップ! ゴー、エスケープ!」

 ニーナちゃんに呼ばれるまま、私は急いでネザーゲートへと飛び込む。
 彼女の機転により、私たちは窮地をなんとか脱出した。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 今回は純粋なマイクラ回ですね。やってる人には伝わるけど、やってない人にはいまいち分からないかもしれないです――筆者の筆力が足りない。(一応プロなのに)
 チート知識で無双を素でやっちゃうニーナちゃん。本当に末恐ろしい新人の登場に、はたしてDStarsはどうなってしまうのか。ばにら、自分を慕う後輩を前に威厳を保ち続けられるんですかね……。
 
 なにはともあれ、ニーナちゃんの「シャチョー」呼びがツボった方は、ぜひぜひ評価のほどよろしくお願いいたします。m(__)m
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