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第9章 エンドラ討伐隊
第67話 燃えよエンダードラゴン(前編)
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命からがらネザーから脱出した私とニーナちゃん。
城に戻れば作業台を置いてすず先輩がスタンバっており、「災難だったねぇ。まさか、がっちゃんにネザーゲートを壊されるなんて」と慰めてくれた。
エンダーチェストから『ブレイズパウダー』を取り出しすず先輩に渡す。
すぐに彼女は『エンダーアイ』を作り上げ、それをニーナちゃんに渡した。
かなりの大冒険をした気になっていたが――本番はこれから。
むしろこれからが大事だ。
「それじゃ『エンド要塞』を探していこっか!」
「すずちゃん。あひる、サバイバルモードは初心者だから分かんないんだけれど。『エンド要塞』って、どうやって探すの?」
「『エンダーアイ』を空に向かって投げると、『エンド要塞』のある方向にむかって飛ぶんだよ。それを追っていくと――『エンド要塞』がみつかるってわけ!」
「なーほーね」
曖昧な返事をするあひる先輩。
たぶんこれ分かってない。(断言)
ただ、彼女のおかげで解説が入るのはいいことだ。
視聴者の中にはマイクラを知らない者もいる。
そういう人に、あひる先輩の疑問とすず先輩の解説は参考になるだろう。
やはりナイス人選。
翻訳兼初心者役のあひる先輩に、解説兼上級者役のすず先輩。
事務所のこの配信にかける本気度に、ちょっと私は怖くなった。
「というわけで! ニーナちゃん、ぽいってしてぽいって!」
『(インドネシア語)それでは『エンダーアイ』を投げますね……それ!』
ふわりと浮き上がる『エンダーアイ』。
それは『エンド要塞』のある方角を示すとすぐに落下する。
示された方角に進み、また『エンダーアイ』を投げる。
繰り返すこと15分――ついに『エンダーアイ』が真下に落下した。
『(インドネシア語)ここです! ここで『エンダーアイ』が消えました!』
「おぉ! 『エンダーアイ』が地面に潜って消えたということは……ここの地下に『エンド要塞』があるということ!」
「……嘘だろぐゎぁ! なんてことぐゎぁ!」
「まさか、こんな所にエンド要塞があるなんて……!」
私たちは『エンド要塞』のある場所を突き止めた。
しかし、なんということ――。
「「「ゆきち(ゆき先輩)のしけた村じゃねーか!!!!」」」
奇遇にも『エンド要塞』があったのは――ゆき先輩の村だった。
しけた村人しかいなのに、なにかと配信で縁がある村だなァ。
「さて、あとは『エンダーアイ』が沈んだ場所を、ひたすら直下堀りします」
「よかったな、ゆきちの城(仮)の真下じゃなくて」
「もしもゆきち城(仮)の下に『エンド要塞』があったらミラクルだったバニよ」
「ほら、二人とも気を緩めない! 『エンド要塞』は強力なモンスターがひしめいているダンジョンなんだから! 油断してたらやられちゃうよ!」
すず先輩が釘を刺すが――マイクラガチ勢が二人もいればなんてことはない。
向かってくるゾンビ・スケルトン・クリーパー(爆発するモンスター)を、すず先輩とニーナちゃんの神AIMが襲う。部屋という部屋にはたいまつが置かれ(明るいとモンスターが湧かなくなる)、チェストからはお宝が回収される。
あっという間に『エンド要塞』は攻略され、私たちは『エンドポータル』がある部屋にたどり着いた。
部屋の正面には『エンドポータル』へと続く階段。
ここに『エンダーアイ』を数個セットし、『エンド』へと続くワープゲートを起動させれば、いよいよラスボス『エンダードラゴン』との対決だ。
と、その前に、ちょっと小休憩。
「はぁ、意外とさっくり攻略できたね。おつかれさまだよ、みんな」
「すず先輩、さすがバニです。めちゃくちゃ手慣れてましたね」
『(インドネシア語)すず先輩! 流石です!』
「ぐゎぁ。あひるは、見てることしかできなかったぐゎぁ」
「いやいや、そんなそんな! 暇を持て余した、狐の戯れだよ!」
謙遜しつつもまんざらでもないすず先輩。
リアルJKだものな。
褒められたらそりゃ嬉しいよなぁ。
液晶ディスプレイの前でくねくねしているすず先輩を思い浮かべ、ちょっとほっこりとした気持ちになる。
「ニーナちゃんもすごかったバニ。すず先輩に負けじと劣らずの大活躍だったバニ」
「ばにら。英語で褒めてあげてもろて」
「そうばにな……! ヘイ、ニーナ! ナイスファイト! やるやん!」
「英語って言ってるやないか!」
『イェーイ! ナイスファイト、シャチョー! ヤルヤーン!』
「イェーイ!」
「いや、通じるんかい!」
本日の主役のニーナちゃんを褒めるのも忘れない。
彼女の健闘をパッションイングリッシュでしっかりと讃えると、私たちは狭い『エンドポータル』の部屋の中でぴょんぴょんとアバターを跳ねさた。
時刻は、午後8時。
配信開始からきっちり2時間が経過しようとしていた。
「さぁ、いよいよ『エンダードラゴン』と対決だ――の前に、ちょっとおトイレ!」
『(英語)すず先輩がトイレだそうです。ニーナさんも大丈夫ですか?』
『(英語)そうですね。喉が乾いたので、ドリンクをとって来ます』
「ふぁー、ばにーらもちょっと栄養補給するバニ。ちょっとマイク切るバニ」
リスナーたちに説明してマイク入力を切る。
テーブルに置いておいた水筒から白湯をすする。
常温のゼリー食品のキャップを外し、一口で胃の中へと押し込んだ。
栄養補給完了。(30秒)
ラスボス『エンダードラゴン』の討伐は早ければ10分くらいで完了する。
体力こそ多いけれど、立ち回りさえミスらなければそれほど強いモンスターではない。装備も充実しているし、ゴリ押しで倒すこともできるだろう。
手と脚を伸ばして私はリラックスする。
はじめてのエンドラ討伐。さらに、海外勢との初コラボということもあり――もうちょっと時間がかかるかなと思ったけれど、これなら午後9時には終わりそうだ。
「充分、美月さんと晩酌できたなこれ……」
液晶モニタ下のスマホを覗き込む。
中では美月さんとりんご先輩が、せっせとブランチマイニングに勤しんでいた。
マイクはミュートにしている。
配信に音が入ることはない。
私はスマホの音量を上げ、美月さんの配信を覗いた――。
「あらよー! またダイヤじゃなくて金がでてきた! りんご、このブランチマイッチングって、本当にダイヤでるの?」
「おかしーな? 僕が見た攻略サイトでは、こうすればダイヤがいっぱい取れるって書いてあったんだけれど……?」
首を傾げる美月さんとりんご先輩。
金ばかり取れるということは、掘る深さを間違えている可能性がある。
ブランチマイニングは効率的な鉱石の採掘手法だけれど、鉱石が埋蔵されている深度で行わないと、目的の鉱石はゲットすることはできない。
実際、美月さんの配信画面にはY=26(深さ)と表示されていた。
そこではちょっとダイヤモンドは出ない。
「誰かリスナーさん、フォローしてあげてよ」
リスナーに知識のある人がいないのか、あえてスルーしているのか、それを指摘する人はだれもいない。ただ、多くのリスナーがそんな二人のやりとりを楽しんでいるのは、コメント欄からひしひしと伝わって来た。
やっぱり、みんなが求めているのは「りんずん」なのだ。
私と彼女――「ずんばに」は、りんご先輩復帰までのつなぎ。
百合営業なんて、やっぱりするんじゃなかった。
胸の中を冷たい風が吹いたその時、「おーい、ばにらちゃーん!」とすず先輩が私を呼んだ。あわててスマホをミュートにして、マイク入力をオンにする。
美月さんたちのことを考えるのはいったんやめよう。
私は再び『川崎ばにら』の仮面を被った。
新人VTuber『ニーナ・ツクヨミ』の憧れの人。
奇跡的に出会った運命のVTuberを、私は必死に演じることにした。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
自分以外の先輩と楽しくコラボする姿にジェラるばにら。
そして、そんなばにらの気も知れずに、和気藹々とコラボするずんだ。
同じく地下を潜っている二人。なのに、その心はこんなにも遠い。
このまますれ違ってしまうのか――。
という所で、伏線は張り終わりました。
気づく人は気づくかと思いますが、こっからはもうギャグと真相編と、ハッピーエンドしかございません。安心してお読みください&今後の展開を、もしよければ推理してみてください。ヒントはマイクラの仕様でございます。
このままばにらとずんだはすれ違い続けるのか――いや「すれ違わない!」と思った方は、ぜひぜひ評価のほどよろしくお願いいたします。m(__)m
城に戻れば作業台を置いてすず先輩がスタンバっており、「災難だったねぇ。まさか、がっちゃんにネザーゲートを壊されるなんて」と慰めてくれた。
エンダーチェストから『ブレイズパウダー』を取り出しすず先輩に渡す。
すぐに彼女は『エンダーアイ』を作り上げ、それをニーナちゃんに渡した。
かなりの大冒険をした気になっていたが――本番はこれから。
むしろこれからが大事だ。
「それじゃ『エンド要塞』を探していこっか!」
「すずちゃん。あひる、サバイバルモードは初心者だから分かんないんだけれど。『エンド要塞』って、どうやって探すの?」
「『エンダーアイ』を空に向かって投げると、『エンド要塞』のある方向にむかって飛ぶんだよ。それを追っていくと――『エンド要塞』がみつかるってわけ!」
「なーほーね」
曖昧な返事をするあひる先輩。
たぶんこれ分かってない。(断言)
ただ、彼女のおかげで解説が入るのはいいことだ。
視聴者の中にはマイクラを知らない者もいる。
そういう人に、あひる先輩の疑問とすず先輩の解説は参考になるだろう。
やはりナイス人選。
翻訳兼初心者役のあひる先輩に、解説兼上級者役のすず先輩。
事務所のこの配信にかける本気度に、ちょっと私は怖くなった。
「というわけで! ニーナちゃん、ぽいってしてぽいって!」
『(インドネシア語)それでは『エンダーアイ』を投げますね……それ!』
ふわりと浮き上がる『エンダーアイ』。
それは『エンド要塞』のある方角を示すとすぐに落下する。
示された方角に進み、また『エンダーアイ』を投げる。
繰り返すこと15分――ついに『エンダーアイ』が真下に落下した。
『(インドネシア語)ここです! ここで『エンダーアイ』が消えました!』
「おぉ! 『エンダーアイ』が地面に潜って消えたということは……ここの地下に『エンド要塞』があるということ!」
「……嘘だろぐゎぁ! なんてことぐゎぁ!」
「まさか、こんな所にエンド要塞があるなんて……!」
私たちは『エンド要塞』のある場所を突き止めた。
しかし、なんということ――。
「「「ゆきち(ゆき先輩)のしけた村じゃねーか!!!!」」」
奇遇にも『エンド要塞』があったのは――ゆき先輩の村だった。
しけた村人しかいなのに、なにかと配信で縁がある村だなァ。
「さて、あとは『エンダーアイ』が沈んだ場所を、ひたすら直下堀りします」
「よかったな、ゆきちの城(仮)の真下じゃなくて」
「もしもゆきち城(仮)の下に『エンド要塞』があったらミラクルだったバニよ」
「ほら、二人とも気を緩めない! 『エンド要塞』は強力なモンスターがひしめいているダンジョンなんだから! 油断してたらやられちゃうよ!」
すず先輩が釘を刺すが――マイクラガチ勢が二人もいればなんてことはない。
向かってくるゾンビ・スケルトン・クリーパー(爆発するモンスター)を、すず先輩とニーナちゃんの神AIMが襲う。部屋という部屋にはたいまつが置かれ(明るいとモンスターが湧かなくなる)、チェストからはお宝が回収される。
あっという間に『エンド要塞』は攻略され、私たちは『エンドポータル』がある部屋にたどり着いた。
部屋の正面には『エンドポータル』へと続く階段。
ここに『エンダーアイ』を数個セットし、『エンド』へと続くワープゲートを起動させれば、いよいよラスボス『エンダードラゴン』との対決だ。
と、その前に、ちょっと小休憩。
「はぁ、意外とさっくり攻略できたね。おつかれさまだよ、みんな」
「すず先輩、さすがバニです。めちゃくちゃ手慣れてましたね」
『(インドネシア語)すず先輩! 流石です!』
「ぐゎぁ。あひるは、見てることしかできなかったぐゎぁ」
「いやいや、そんなそんな! 暇を持て余した、狐の戯れだよ!」
謙遜しつつもまんざらでもないすず先輩。
リアルJKだものな。
褒められたらそりゃ嬉しいよなぁ。
液晶ディスプレイの前でくねくねしているすず先輩を思い浮かべ、ちょっとほっこりとした気持ちになる。
「ニーナちゃんもすごかったバニ。すず先輩に負けじと劣らずの大活躍だったバニ」
「ばにら。英語で褒めてあげてもろて」
「そうばにな……! ヘイ、ニーナ! ナイスファイト! やるやん!」
「英語って言ってるやないか!」
『イェーイ! ナイスファイト、シャチョー! ヤルヤーン!』
「イェーイ!」
「いや、通じるんかい!」
本日の主役のニーナちゃんを褒めるのも忘れない。
彼女の健闘をパッションイングリッシュでしっかりと讃えると、私たちは狭い『エンドポータル』の部屋の中でぴょんぴょんとアバターを跳ねさた。
時刻は、午後8時。
配信開始からきっちり2時間が経過しようとしていた。
「さぁ、いよいよ『エンダードラゴン』と対決だ――の前に、ちょっとおトイレ!」
『(英語)すず先輩がトイレだそうです。ニーナさんも大丈夫ですか?』
『(英語)そうですね。喉が乾いたので、ドリンクをとって来ます』
「ふぁー、ばにーらもちょっと栄養補給するバニ。ちょっとマイク切るバニ」
リスナーたちに説明してマイク入力を切る。
テーブルに置いておいた水筒から白湯をすする。
常温のゼリー食品のキャップを外し、一口で胃の中へと押し込んだ。
栄養補給完了。(30秒)
ラスボス『エンダードラゴン』の討伐は早ければ10分くらいで完了する。
体力こそ多いけれど、立ち回りさえミスらなければそれほど強いモンスターではない。装備も充実しているし、ゴリ押しで倒すこともできるだろう。
手と脚を伸ばして私はリラックスする。
はじめてのエンドラ討伐。さらに、海外勢との初コラボということもあり――もうちょっと時間がかかるかなと思ったけれど、これなら午後9時には終わりそうだ。
「充分、美月さんと晩酌できたなこれ……」
液晶モニタ下のスマホを覗き込む。
中では美月さんとりんご先輩が、せっせとブランチマイニングに勤しんでいた。
マイクはミュートにしている。
配信に音が入ることはない。
私はスマホの音量を上げ、美月さんの配信を覗いた――。
「あらよー! またダイヤじゃなくて金がでてきた! りんご、このブランチマイッチングって、本当にダイヤでるの?」
「おかしーな? 僕が見た攻略サイトでは、こうすればダイヤがいっぱい取れるって書いてあったんだけれど……?」
首を傾げる美月さんとりんご先輩。
金ばかり取れるということは、掘る深さを間違えている可能性がある。
ブランチマイニングは効率的な鉱石の採掘手法だけれど、鉱石が埋蔵されている深度で行わないと、目的の鉱石はゲットすることはできない。
実際、美月さんの配信画面にはY=26(深さ)と表示されていた。
そこではちょっとダイヤモンドは出ない。
「誰かリスナーさん、フォローしてあげてよ」
リスナーに知識のある人がいないのか、あえてスルーしているのか、それを指摘する人はだれもいない。ただ、多くのリスナーがそんな二人のやりとりを楽しんでいるのは、コメント欄からひしひしと伝わって来た。
やっぱり、みんなが求めているのは「りんずん」なのだ。
私と彼女――「ずんばに」は、りんご先輩復帰までのつなぎ。
百合営業なんて、やっぱりするんじゃなかった。
胸の中を冷たい風が吹いたその時、「おーい、ばにらちゃーん!」とすず先輩が私を呼んだ。あわててスマホをミュートにして、マイク入力をオンにする。
美月さんたちのことを考えるのはいったんやめよう。
私は再び『川崎ばにら』の仮面を被った。
新人VTuber『ニーナ・ツクヨミ』の憧れの人。
奇跡的に出会った運命のVTuberを、私は必死に演じることにした。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
自分以外の先輩と楽しくコラボする姿にジェラるばにら。
そして、そんなばにらの気も知れずに、和気藹々とコラボするずんだ。
同じく地下を潜っている二人。なのに、その心はこんなにも遠い。
このまますれ違ってしまうのか――。
という所で、伏線は張り終わりました。
気づく人は気づくかと思いますが、こっからはもうギャグと真相編と、ハッピーエンドしかございません。安心してお読みください&今後の展開を、もしよければ推理してみてください。ヒントはマイクラの仕様でございます。
このままばにらとずんだはすれ違い続けるのか――いや「すれ違わない!」と思った方は、ぜひぜひ評価のほどよろしくお願いいたします。m(__)m
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