32 / 175
呪氷の杖
しおりを挟むー✕4号失敗、候補の魂【鍵倉雅美】の呼び出し叶わずー
ー続けます。作成失敗 14号破棄 15号準備 ー
ーうぁ! ✕✕号がッ! 拘束魔術を速く!!! ー
「うぅ、体中痛いし、変な夢見るし、まさみって私の親友の……元気にしてるかなぁ……」
結局ボスを倒すもののスタミナ切れや、出血多量によりただっぴろい裏ボスみたいな老婆のいた所で気絶して眠ってしまったカリスティア、睡眠をとったことにより多少なりともHPとMPが回復していることをステータスで確認してから、立ち上がり両腕を大ぶりに回して肩をほぐす。さてさて、速く帰ろうかとあたりを見回すと一つだけ石造りの入り口があったのでそこに向かって走る。
遺跡の中はやはり初級とは言えない中級クラスのモンスターが闊歩している危険な遺跡。慎重に歩いているとミノタウロスという中級ではあるが、上級に近い強さを持つモンスターと対峙してしまった。さらには横の石の壁には何かが壁を壊しながら進んでいるようなけたましい音が聞こえる。カリスティアは急いでこの場から逃げようとミノタウロスを自分のできる速さで一撃を食らわせるが、ミノタウロスは自前のでかい斧の刃で止めてしまう。
やがて、壁を壊しながらまっすぐこちらに向かってくる何かの気配が、あとこの壁一枚に迫ってくる物のそこからウンとも寸とも言わない。これ幸いとミノタウロスに連撃を食らわせるものの、ミノタウロスの反撃で4歳の体重しかない自身の身体はたやすく吹っ飛んで壁に身体を激突させてしまった。
はぁ、貴方が無茶をする度に駆り出される私の身になってください。
壁からグラスの声が聞こえたと思うと、ミノタウロスの横の壁が弾けるように吹っ飛び、ミノタウロスに石の弾丸が直撃してミノタウロスは絶命した。カリスティアは、グラスの姿を見て「なんでここに!?」っと問いただしそうになるが……。グラスと会って間もない頃にグラスに渡した杖になる腕輪を杖にした状態で、鉄面皮のグラスがこれ以上ないまでに笑って向かってくるグラスを見てカリスティアは冷や汗が止まらなかった。
それもそうだろう、とても素敵に笑うグラスの左頬は怒りで時折、ヒクヒクを引きつり、魔力は怒りでドロドロと煮えたぎらせた状態で迫ってくるのだ。大抵の者は逃げ出すだろう。カリスティアも逃げだしたく思ったが逃げた逃げたで後がとても怖いので、大人しく石畳に正座をしてグラスがこちらに到達するのを待つ。
「カリスティア……取りあえずは生きていてよかったです」
目の前に来たときに怒られる! っと身構えて居たが実際はに降ってきたのは泣きそうな震えた声と震えたグラスの抱擁だった。香水なのだろうかミントのようにスッキリとしたグラスらしい香りと自身よりも遥かに低い体温の身体、けれども、自分の身体に落ちてくる涙は何よりも熱かった。氷雪適応体質スキル保持者独自の異常な低体温が今はとても心地よい。グラスの高級な布地を使われた衣服が自分の血で濡れることも厭わずに、ただただ、心配してくれたようだ。
「はい、ごめんなさい」
流石に泣かせてしまったので、素直に謝る。実際に今回は故意ではないとはいえ無断でダンジョンに赴いたのだ。怒られようと泣かれようと受け止めることが最大の罰なのだ。だからカリスティアは素直に謝り泣くグラスの背中をさすり続ける。魔物に空気を読む力があるのかはわからないけれども、グラスの涙が止まるまで二人の間を引き裂く不届き者は現れなかった。
「それで、魔法で壁吹っ飛ばしたの?」
流石に心配で友達思いでここまでまっすぐ壁を破壊して進むなど、普通のグラスにはとても考えられない所業なのだが、それを聞くとお説教が始まるので、どうやって壁を壊したかを聞いた。
「いいえ? 貴方に作っていただいた杖で叩いて壊しました」
(過去の私コイツに何渡したんだよ)
二人とも自覚はないが、天才の域のなので普通は六人パーティーで精一杯戦って勝てるレベルの魔物を二人で協力して倒してゆく、そんな中で、まっすぐ自分に向かって壁が壊されていたので不意に聞いてみると、グラスから何を今更?っと言いたげな顔で言われた。カリスティアはすぐさま、使いこなし始めているグラスの杖に鑑定を掛けると。
【無色呪氷の杖】
効果 所有者の許可外に触れた物質と生命を弾く
氷属性と闇属性の魔法発動補助【強】
所有者の実力による武器成長【Lv8】
時をも凍結する武器装備専用氷魔法の使用可能
鑑定を見ると、グラスがムキムキにいつの間にかなっているわけではなく、生命と物質を弾くこの効果を作者であるカリスティアの意図に外れてグラスは攻撃として使用しているためのようだ……。
(本当は所有者以外が触れたら爆破されるとかにしようと考えてたけど、やめて良かった……)
21
あなたにおすすめの小説
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる