転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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初めてのワガママは手に入らない彼女のために【リュピア】

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「エピク様」

「やることはやった。後は国王側に付くからこれ以上は何もしてやれないぞ」

 エピク様が、カリスちゃんとグラス様の保護に失敗したという情報は瞬く間に城に広がった。僕は心が痛くてお礼も謝罪も言えなかった。すれ違いざまに肩を置いてそれだけでも言ってくださるエピク様の優しさにも何も言えなかった。僕は……身元を引き受けてくれた恩人よりも、叶うはずの無い恋を選んだ。

 すれ違う瞬間に、僕はメイクが崩れることも厭わずに俯いて、ポロポロと涙を流す。エピク様……申し訳ありません。僕……リュピアは、カロフィーネ・リチェルリット姫側につきます。エピク様のくれた力と知識を使って大切な……好きだった人の為に貴女に牙を向けます。そう思って泣いた顔で前を向いて、エピク様とは反対側の方向へ歩き出す。

「負けてやることはできないから……覚悟しとけよ」

「はい!!!」

 泣いている自分に見かねたのか転移術で僕の後ろまで来て、それだけ言って転移して消えてしまった。消えてしまった後に、威勢良く返事をして涙を拭う。メイド服が肌色の粉で汚れるが気にしないで、僕はカロフィーネ・リチェルリット姫の待つ部屋に赴く。


 僕は……エピク様に初めてワガママを言った。助けてくれ、カリスちゃんを精霊国に逃がしてくれと我が儘を言った。カロフィーネ様がカリスちゃんを救うために色々尽力しているなかで、僕はカリスちゃんを精霊国に逃がす手筈を整えることと言われていた。けれど、国王様がエピク様に直接に保護……という名の捕縛を命じられたとエピク様から聞いたときに、

「お願いです……僕の、僕の大切な、いや、グラス様、カロネ様、ラブマルージュ様、いろんな人がカリスちゃんを必要なんです。お願い殺さないで、カリスちゃんをカリスちゃんを!!!」

 なんて言ってしまったんだ。カリス様が死ぬ可能性のことは極秘であり、知っていることを隠さなければならない立場であるのに、懇願してしまったのだ。勿論だけれど、見かねたエピク様に苦笑交じりに怒られてカロフィーネ様にも怒られたけど……。エピク様は……やってくれたのだ。逃がしてくれたのだ。僕にあの方の真意は測りきれないけれど、逃がしてくれたのは紛れもない事実。嬉しかった。だから、このチャンスは手放せない。

「カロフィーネ様、リュピアです」

「どうぞお入りになって」

 【友を守る】その決意が、在りし日を夢見た少女をここまで強くするのかと会う度僕は思ってしまう。平民として居た時にすら、姫の芳しくないお心加減は聞いていたのに、今は父親すら食らう勢いで勢力と知力を伸ばしているのだ。入る時に姫としての品格を持って堂々と中央のソファーに座り、紅茶を煽る姿は様になっていて……感嘆で息を飲みそうになるも、グッと我慢をして姫の部屋に入り、目線で「お座りになって?」と言われたので、迎えのソファーに座る。

「今回の目的を……達成してくださりありがとうございます」

「勿体ないお言葉です。その……」

「何故、彼女を精霊国に逃がした理由ですわね? お話し致しますわ」

「ありがとう……ございます!」

 姫様は話してくれた。ディザ様のことをこの国の成り立ちのことをそうして……文献に残っている初代国王の思考と性格が、カリスティア様は似ていることを……。そうして初代国王の思想は自然の化身の精霊に好かれていたという文献により、下手な国に逃がすよりもリスクを冒して精霊国に逃がしたほうがあちらの保護を受けられる可能性がある。


「神様は沢山いるけど神様は存在しないの」

「その方が楽しい、私がそこら辺の石ころは神ですっていたらその石ころは神様くらいでいい。それで忘れて神様は消えるの、その程度」


 聖騎士団団長セシル・ルフレ様の講義を受けているときに、そう言われたとお後から教えて貰って思いついたのだと、姫様は胸をなで下ろして語った。自分が聞く神様はどこかそこにずっと居る存在で、そんな消えるだなんて思ってなかった。ましてや、記憶に依存する存在と考えもしていなかった。周りはずっと信心せずともそんなものだと言っていたから。どうやったら、そんな思想になるのだろうと、考えても分からないけど考えてしまう。思考の海に落ちそうになる僕を引き戻すように、パンと姫は手を打つ。僕は慌てて居住まいを直して聞く態勢に入る。

「カリスティア様を逃がした所で、ディザの行動をみるにいずれ草の根を分けてカリス様をなんらかの理由を持って殺しに行くでしょう。猶予は6年ですわ」

「6年?」

「えぇ、彼女は思わぬおまけも下さったのですわ……カリスティア様の精神をまるごと6年の時間停止してくださりました。それによる利点とうは説明を省かせて頂きますわ」

 省くといったら省くとばかりに、強引に次の話題の為に紅茶をあおる姫様を見て、僕は馬鹿だから教えて欲しいなぁ……っと目線を送るも、ご自分で考えなさいと言わんばかりに、ふいっと顔を逸らされる。悲しいくらいに人間って言葉にしてくれないと何も分からない生き物なので、そう言われてもわからないものはわからないと、逸らされた顔をジーッと見る、相変わらず顔は逸らされたまま、結局僕が折れた。

「カリス様を助けたい私に協力する幹部は、ラブマルージュ、アルマ・フェアト=アフェクシオン、リアン、エピオス・べゼナ一の四人ね、アルマとリアンは恩義から、ラブマルージュとエピオスは、元々幹部の中でも特筆した穏健派で特にラブマルージュはカリス様とグラス様に思い入れが強いわね」

「4人も味方が居るんですか!?」

「それだけじゃなくて、前に先天性障害を持った貴族の方々やいろんな方がカリス様の味方をしているわ、カリス様でも治せないけど、負担を軽くするためにカリス様が考案した車椅子など……細かな物がこうして集まって彼女の力となっている。貴方を助けたことだって、あらゆる孤児院の子供に夢を希望を持たせた結果、孤児院や子を持つ兵士も味方となって動いてくれている……この先も辛いでしょうけど……これからも協力してください」

「はい、喜んで」

 喜んで、今を与えてくれたカリスちゃんの為に姫に跪く、勘違いしてはいけないのはこの姫にも姫としてこの国を背負って欲しいという思いも込めて傅いているのだ。国王様は優しいが……その優しさは利用され始めている。数々の歴代のリチェルリットの国王のように現国王も悪魔に踊らされてしまっているのだ。

 僕も、幹部の皆様も、姫も、国と大事な友人の為に……今の国とその基盤を否定するのだ。

「じゃあ、最初に精霊国のどこにカリス様達が落ちたのか把握するために変装して発見して生きて帰ってください」

「えっ!? そんな無茶な」

「ん?」

「……分かりましたやります」

 





 





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