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必要なこと、
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「あっ……。これも、カリスティアちゃんに似合うかな。これも……あれも、やっぱりカリスティアちゃんの肌には黒錦が似合うわ。ドレスも着て欲しいけど、やだって言われちゃうから、これくらいはいいわよね~」
お世辞にもか弱いとは言いがたい無類の強さを持つウィーンは、惜しみなく力を使って町の高級店まで行き、カリスティアに似合う服をこれも、あれもと、手に取って買い漁る。人間の親はこうやって子供に服を買い与えるとの昔に教えられた知識のもとの行動だ。
「ウィーンも着飾りたいわよね。もうちょっと待っててね」
愛しの恋人の腕を撫で付ける。彼女の感覚は私の感覚、受肉するにあたって黒から緑になってしまっていても、試着用の鏡に映る私の恋人は美しい。途中から恋人のデート感覚で、カリスティアの服を再度物色し始める。デートなのだから、時折愛しの恋人に話しかけながらも。
ー受肉済みかつ気狂いの悪魔なんて不吉だわー
ー速く、この店から出て行かないかしら、安心して買い物もできないー
私からすれば、狂っているのはお前らだ。別に自分一人だけならば、私の後ろでヒソヒソと喋っているエルフの口を引き裂くこともできるが、今の自分は大切な私達の子供が居るのだから滅多なことは出来ないので、直接言う度胸もない枯れたご婦人を睨むだけに済ませる。
さぞかし怖かったのだろう、ご婦人は慌てて店の隅へと消えてゆく。こんなのに気を使う手間が惜しい、もっとカリスティアに似合う服を探さなければ。そうやって、笑みにすら慣れていない店員の笑みを鼻で笑い20着の高級な黒錦の服の会計を命令する。
「以上二十点で、10万ペルトとなります」
「あら、これだけならばもっと買えば良かったわ。まぁ、いいわ。はい」
手元が震える店員を一瞥して金を支払う。震える店員を見る度に同族含め多種族の者の情けなさに、あきれ果てると同時に、自分に動じなかった、グラス君とカリスティアちゃんの存在を……あと、無知が講じてだけど喧嘩売ってきたデブ王含め、とても面白く感じてしまう。ラブマルージュという自分の情報を知っていて、同等の力を持つオカマは例外だが。
(同族殺しのこと知ってたから、Chemdahのアドラメレクの名前知ってるはずなのに……。受肉前なら、あのオカマの首ひねり潰してやったのに。これで勘ぐられて二人に私のことバレたら、泣いちゃう。二人に嫌われたらママ泣いちゃう)
最初は気まぐれと冗談で始めたママ呼びが、悪魔国の魔王の一人だった。ウィーン改めアドラメルクを夢中にさせて今こうやって自分の元で協力しているなどと、彼女が知るのは何時になるやら。
(このまま行けば、恋人の身体が持たないし……そうだわ! カリスティアちゃんに私の恋人を戦いの時にの為に仕舞えるか試してもらえばいいのよ)
死体の山から、帰ったカリスティアがすぐに死体と対面するフラグがこうして今たったのである。この両手一杯の高級品の入った袋を羽をバタつかせてるんるんと担ぐ悪魔によって。
ーーーー
緊急通信用の水晶を仕切りに気にしながら、リビングのテーブルを拭き掃除するグラス。普段はするべき冒険者業を一旦中止して、今か今かとカリスティアの救援要請を心待ちに、テーブルを拭いたふきんの水分が勿体ないあまりに水晶を気にしながら、キッチンの拭き掃除にも励むグラス。
(……やはり、無茶過ぎましたか……。いえ、この先のことを考えるとこれ以上の無茶が降りかかってくるでしょう……いやしかし、けど3日も帰ってこない)
水晶をポケットに入れて、庭の手入れをしていても時折に水晶を取り出して確認の繰り返し。心配が頭に埋め尽くされた状態での作業は、普段は起きないミスを誘発させる。
「しまった……掘りすぎました」
無駄に大穴になってしまった花壇を見て、ふう……っとため息一つに情けなく土を戻すグラス。家事、掃除、手入れ、鍛錬、様々なことをやって気を紛らわせようとするも、精々続いて10分で手を止めてしまう始末だった。そんな中で、最後の頼みの綱の花壇の手入れもごらんの通りの有様だ。
「あっ! お~い。グラスく~ん!!!」
「ウィーン様」
両手一杯に詰まているであろう、様々な服を持ってご機嫌なウィーンを見て、思わずじっとりとした目で頭を抑えてしまう。袋から僅かにはみ出た布からみて高級品なのは一目瞭然だ。これは、カリスティアが知ったら怒るだろうな。苦笑するも、悪魔と人間の価値観は谷と言っても過言ではないほどの差があるのだ。仕方ない、そして何も言えないのだ。
「私の提案した【反精霊の洞窟】は?」
「はい、三日経って一度も帰ってきていません」
「カリスティアちゃんなら大丈夫よ。だから提案したの! グラス君も一人で突破できたんだから大丈夫よ! グラス君と違って緊急通信用の水晶もあるわ。」
実力だけならば、どうにか突破できるだろう。だが、悪魔だからこそ……いや、同族殺しを容易に行うような思考の者だからこそ、失念しているのである。同族かも知れない死体を見たらどれだけの恐怖が襲ってくるのかを。けれど、必要なことであるのは確かだから、グラスは今回の危険なダンジョンにカリスティアを送ったのだ。
自分が精霊国を出た時には、情勢の悪化による飢饉により大打撃を受けた地域の最下層は、多くの亡骸が転がっていた。
自分も見たことがないわけではないが、町や村全体が死のベールに包まれた亡骸は、なんとも言えない異様な恐怖をかき立てられる。その恐怖を一度経験した上で自分は行ったのだから、今のカリスティアとは条件が違う。あまりにも無謀すぎる。思わず握りしめてしまった左手がチリチリと滲むように痛い。助けたいけれど、助けてはいけない。葛藤で頭の天秤が揺れる。
「ええ、カリスティアならば……無事に帰ってきてくれます。きっと。ええ……」
お世辞にもか弱いとは言いがたい無類の強さを持つウィーンは、惜しみなく力を使って町の高級店まで行き、カリスティアに似合う服をこれも、あれもと、手に取って買い漁る。人間の親はこうやって子供に服を買い与えるとの昔に教えられた知識のもとの行動だ。
「ウィーンも着飾りたいわよね。もうちょっと待っててね」
愛しの恋人の腕を撫で付ける。彼女の感覚は私の感覚、受肉するにあたって黒から緑になってしまっていても、試着用の鏡に映る私の恋人は美しい。途中から恋人のデート感覚で、カリスティアの服を再度物色し始める。デートなのだから、時折愛しの恋人に話しかけながらも。
ー受肉済みかつ気狂いの悪魔なんて不吉だわー
ー速く、この店から出て行かないかしら、安心して買い物もできないー
私からすれば、狂っているのはお前らだ。別に自分一人だけならば、私の後ろでヒソヒソと喋っているエルフの口を引き裂くこともできるが、今の自分は大切な私達の子供が居るのだから滅多なことは出来ないので、直接言う度胸もない枯れたご婦人を睨むだけに済ませる。
さぞかし怖かったのだろう、ご婦人は慌てて店の隅へと消えてゆく。こんなのに気を使う手間が惜しい、もっとカリスティアに似合う服を探さなければ。そうやって、笑みにすら慣れていない店員の笑みを鼻で笑い20着の高級な黒錦の服の会計を命令する。
「以上二十点で、10万ペルトとなります」
「あら、これだけならばもっと買えば良かったわ。まぁ、いいわ。はい」
手元が震える店員を一瞥して金を支払う。震える店員を見る度に同族含め多種族の者の情けなさに、あきれ果てると同時に、自分に動じなかった、グラス君とカリスティアちゃんの存在を……あと、無知が講じてだけど喧嘩売ってきたデブ王含め、とても面白く感じてしまう。ラブマルージュという自分の情報を知っていて、同等の力を持つオカマは例外だが。
(同族殺しのこと知ってたから、Chemdahのアドラメレクの名前知ってるはずなのに……。受肉前なら、あのオカマの首ひねり潰してやったのに。これで勘ぐられて二人に私のことバレたら、泣いちゃう。二人に嫌われたらママ泣いちゃう)
最初は気まぐれと冗談で始めたママ呼びが、悪魔国の魔王の一人だった。ウィーン改めアドラメルクを夢中にさせて今こうやって自分の元で協力しているなどと、彼女が知るのは何時になるやら。
(このまま行けば、恋人の身体が持たないし……そうだわ! カリスティアちゃんに私の恋人を戦いの時にの為に仕舞えるか試してもらえばいいのよ)
死体の山から、帰ったカリスティアがすぐに死体と対面するフラグがこうして今たったのである。この両手一杯の高級品の入った袋を羽をバタつかせてるんるんと担ぐ悪魔によって。
ーーーー
緊急通信用の水晶を仕切りに気にしながら、リビングのテーブルを拭き掃除するグラス。普段はするべき冒険者業を一旦中止して、今か今かとカリスティアの救援要請を心待ちに、テーブルを拭いたふきんの水分が勿体ないあまりに水晶を気にしながら、キッチンの拭き掃除にも励むグラス。
(……やはり、無茶過ぎましたか……。いえ、この先のことを考えるとこれ以上の無茶が降りかかってくるでしょう……いやしかし、けど3日も帰ってこない)
水晶をポケットに入れて、庭の手入れをしていても時折に水晶を取り出して確認の繰り返し。心配が頭に埋め尽くされた状態での作業は、普段は起きないミスを誘発させる。
「しまった……掘りすぎました」
無駄に大穴になってしまった花壇を見て、ふう……っとため息一つに情けなく土を戻すグラス。家事、掃除、手入れ、鍛錬、様々なことをやって気を紛らわせようとするも、精々続いて10分で手を止めてしまう始末だった。そんな中で、最後の頼みの綱の花壇の手入れもごらんの通りの有様だ。
「あっ! お~い。グラスく~ん!!!」
「ウィーン様」
両手一杯に詰まているであろう、様々な服を持ってご機嫌なウィーンを見て、思わずじっとりとした目で頭を抑えてしまう。袋から僅かにはみ出た布からみて高級品なのは一目瞭然だ。これは、カリスティアが知ったら怒るだろうな。苦笑するも、悪魔と人間の価値観は谷と言っても過言ではないほどの差があるのだ。仕方ない、そして何も言えないのだ。
「私の提案した【反精霊の洞窟】は?」
「はい、三日経って一度も帰ってきていません」
「カリスティアちゃんなら大丈夫よ。だから提案したの! グラス君も一人で突破できたんだから大丈夫よ! グラス君と違って緊急通信用の水晶もあるわ。」
実力だけならば、どうにか突破できるだろう。だが、悪魔だからこそ……いや、同族殺しを容易に行うような思考の者だからこそ、失念しているのである。同族かも知れない死体を見たらどれだけの恐怖が襲ってくるのかを。けれど、必要なことであるのは確かだから、グラスは今回の危険なダンジョンにカリスティアを送ったのだ。
自分が精霊国を出た時には、情勢の悪化による飢饉により大打撃を受けた地域の最下層は、多くの亡骸が転がっていた。
自分も見たことがないわけではないが、町や村全体が死のベールに包まれた亡骸は、なんとも言えない異様な恐怖をかき立てられる。その恐怖を一度経験した上で自分は行ったのだから、今のカリスティアとは条件が違う。あまりにも無謀すぎる。思わず握りしめてしまった左手がチリチリと滲むように痛い。助けたいけれど、助けてはいけない。葛藤で頭の天秤が揺れる。
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